久遠の神話
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第二十五話 使い捨ての駒その五
「そこで皆で学ぶのです」
「そうした学校ですか」
「戦争や対立や」
そうしたものへのだ。嫌悪も見せてきた。
「そして偏見もです」
「そうしたもののない学校ですか」
「そういったものを乗り越える学校です」
最初からないのではなくだ。そうする学校だというのだ。
「それが私の目指す学校です」
「そうしてその学校を作る為に」
「私は戦っています」
「そうだったんですか」
「矛盾していますがね」
自分からだ。高代はこのことを指摘してみせた。
「戦争や対立を乗り越える学校を作りたいと思いながら戦うことは」
「そうですね。僕もそう思います」
「ですが。それでもです」
「作りたいんですか」
「私の夢の為に」
その学校を作ること。そしてだった。
「垣根を越えた笑顔を見る為に」
「笑顔・・・・・・」
「私は信じています」
理想をさらにだった。高代は少年の目で語っていくのだった。
「世界が今よりも戦争や対立を越えてです」
「そのうえで、ですか」
「明るい笑顔に包まれることを」
「それで先生はそうした学校をですか」
「作って。その笑顔を少しでも増やしたいと考えています」
「そうだったんですか。先生はその為にあえて」
「戦うことを選びました」
憧憬の目にだ。ここではだ。
矛盾を感じて暗くなった、その闇も含ませた。しかしだった。
その中でだ。また言うのだった。
「僕一人が罪を背負いそうして笑顔が広まるのならそれでいいのです」
「先生の理想によって」
「そうです。僕はその為に戦います」
剣士として。そうするというのだ。
「ですから上城君ともです」
「戦われるんですね」
「戦いから去られるならです」
それならばだというのだ。その場合はだ。
「それでいいですが」
「僕が戦うことを選べば」
「その時は躊躇しません」
断じてだと。こう答える口調だった。
「このことは申し上げておきます」
「そうですか」
「では。いいですね」
遠くにあるその夢を見ながら。高代は上城に告げた。
「僕のことをお話するのは」
「有り難うございました」
「上城君も戦いを止められたいのならです」
「その為に戦うことをですか」
「躊躇してはいけないのかも知れないです」
そうであるかも知れないとだ。高代は上城に述べた。
「その答えは僕が出すものではなく」
「僕自身がですね」
「そうです。他ならぬ上城君自身がです」
出すものだとだ。また告げる高代だった。
「ですから。よく考えて下さい」
「わかりました」
「若し決意されればその時は」
「戦うなら」
「僕の前に来て下さい。戦いましょう」
「・・・・・・はい」
小さな声でこくりとだ。上城は高代の言葉に頷いた。そうしてだ。
廊下の分かれ道に来たここでだ。高代は右を選んだのだった。
「では職員室に戻ります」
「僕は部活に」
こうしてだ。二人は分かれてだ。それぞれのやるべきことに向かったのだった。
上城はまだ悩んでいた。それは続いていた。しかしだ。
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