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久遠の神話

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第二十五話 使い捨ての駒その一


                      久遠の神話
                 第二十五話  使い捨ての駒
 上城と樹里は二人のクラスでだ。窓側のところに窓を背にそれぞれ立ってだ。
 そしてそのうえでだ。上城はこう樹里に話した。
「昨日中田さんが話してくれた人だけれど」
「あの人ね」
「とんでもない人だよね」
「そうね。やっていいことも悪いこともわからなくて」
「全く反省しない人って」
「しかも自分の責任とか何も考えられない人って」
「いや、酷過ぎるよ」
 上城は顔を曇らせて話した。
「そんな人がいるんだね」
「そうよね。けれど」
「うん、そういう人が剣士だったら」
「大変なことになるよね」
「ねえ。だからね」
 そうした輩が剣士だった場合を考えてだ。そうしてだった。
 樹里は上城にだ。ここでもこう言ったのだった。
「やっぱり戦いからは」
「降りた方がいいかな」
「サイコパスっていうの?おかしい人って」
「実際にいてそうして」
「剣士だったら何するかわからないわよ」
 上城に対してだ。その場合はだというのだ。
「だから。上城君も」
「ううん。けれど」
「迷ってるのね」
「まだまだ続きそうだよ」
 今の彼自身の悩み、それはだというのだ。
「だから辛いけれど」
「悩んでたらどうしてもなのね」
「うん。けれど中田さんが言ってたよね」
「悩むのはいいけれど戦いにそれを出したら駄目ってことよね」
「それがそのまま命取りになるから」
 それでだとだ。上城は樹里に述べた。
「危ないからね」
「ええ。だから」
「そういうことはしないよ」
 上城はまた言った。迷っている声にしても。
「いや、そうならない様にね」
「気をつけるのね」
「そうするよ。絶対に」
「戦いから降りるのも続けるのも」
「決めるし。迷いや悩みは他に影響させないし」
 窓から光を受けながらだ。上城は述べていく。
「そうしていくよ」
「頑張ってね」
「うん。決断をすることもね」
「後は」
「後は?」
「もう剣士のお話とかは今はこれ位にしてね」 
 上城に微笑んだ顔を見せてだ。樹里は話題を変えてきた。
「今日のことだけれど」
「ええと。次の授業かな」
「次数学だけれど何か最近難しくない?」
 授業の内容がだ。どうかというのだ。
「そう感じるけれど。どうなのかしら」
「ああ、今の公式とかって何かね」
「わかりにくいわよね」
「僕もあれ最初はわからなくてね」
「苦労したの、上城君も」
「そうなんだ。けれどいい参考書があって」
 参考書の話を聞くとだ。すぐにだ。樹里は身を乗り出さんばかりになって上城に問い返した。
「どんな参考書なの、それって」
「うん、今持ってるけれど」
「見せてくれる?よかったら」
「いいよ。じゃあ今からね」
「その参考書ってわかりやすいの」
「あの公式だけじゃなくて他の公式もね」
「かなりわかりやすいの」
 樹里はそれを聞いてさらに言った。
「そうなのね」
「数学って。公式を覚えれば何とかなるけれど」
「少なくとも赤点は取らなくて済む位にはね」
「文章問題もあるけれど」
「そっちもわかりやすいの、その参考書」
「うん、そっちもそう書いてるから」
「じゃあ本当にね」
 見せて欲しいとだ。樹里は切実な声で上城に頼む。 
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