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久遠の神話

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第二十三話 七人目の影その八


 その眉間に剣を刺した。急所を一気に貫いた。それで決まりだった。
 広瀬が剣を抜き着地した時にだ。巨人はその姿を消していた。そこに残ったのは。
 金塊だった。その数本のものを見下ろしてだ。彼は言った。
「この通りだ」
「勝たれましたね」
「剣に雷を込めて闘った」
「放たれずにですか」
「力にはこうした使い方もある」
 声にだ。こう言ったのである。
「こうしてな」
「左様ですか」
「そうだ。しかしだ」
「しかしとは」
「力を瞬発的にだが」
 それでもだというのだ。
「使い過ぎた。それでだ」
「もう今はですね」
「闘えない。限界だ」
 そうだというのだ。
「最早だ」
「そうですか。ではですね」
「今は帰る」
 また言う広瀬だった。
「これでな」
「では。その様に」
「しかし。こうして闘い俺達は最後の一人になり願いを適える」
「それは貴方にとっていいことだと思いますが」
「そうだな。しかしだ」
 広瀬は金塊を拾いだ。そのうえでだ。
 その金塊を収めながらだ。そして言ったのだった。
「この戦いで得をするのは誰かな」
「得をですか」
「そう。それは俺達なのか。それとも」
「それとも」
「他の誰かなのか。特にだ」
 声の方を見た。姿は見えないがそれでもだ。 
 声がすると思われる方を見てだ。そして声に問うたのだった。
「君が気になるな」
「・・・・・・・・・」
「漁夫の利という言葉がある。戦いで発せられる力は相当なものだ」
 このことからだ。広瀬は考えていた。
 そしてその力がどうなるのか。彼は今それを考えていた。
「そこだな。君は若しかして俺達の力を利用してるのじゃないかな」
「それは」
 声はだ。広瀬の今の指摘にだ。またしてもだった。
 言葉を濁らせる。その声にだ。 
 広瀬はシニカルな笑みになりだ。こう言ったのだった。
「また言えないのかな」
「すいません」
「ならいいさ。姿を見せないならどうにもならない」
「では今日はですか」
「用事がある。これでな」
 闘いは完全に終えるというのだ。今日はだ。
 このことを告げて声を振り切る様にして去った。そしてだった。
 一人になり暫くしてだ。携帯を出してだ。
 その向こうにいる相手にだ。こう言ったのだった。
「では今からだ」
「何処に行くの?」
「何か食べないか」
 これまでとはうって変わって温厚な笑みでだ。彼は相手に述べていた。
「そうするか」
「そうね。それだったらね」
「何がいいかな」
「私ラーメンがいいわ」
 声は女のものだった。高く澄んだ声だった。
「それにしない?」
「ラーメンか。それなら」
「ええ。猛牛飯店がいいわよね」
「ならそこにしよう」
 広瀬もそこにすると返す。
「あそこのラーメンは美味い」
「それに量も多いしね」
「その量がまたいい」
 広瀬はその温厚な笑みで述べていく。 
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