久遠の神話
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第二十二話 広瀬の礼儀その九
これはあるかとだ。中田に尋ねたのだった。
「パンケーキはありますか?」
「パンケーキかい」
「はい、それは」
あるかどうかとだ。聡美は中田に尋ねる。
「それはどうなのでしょうか」
「あるぜ」
にこりと笑ってだ。中田はあると答えた。
「それもな」
「そうですか。それなら」
「あんたパンケーキ好きなんだな」
「日本に来て食べて」
そうしてだというのだ。
「好きになりました」
「そうか。じゃあ俺もパンケーキにするな」
「では二人一緒に」
「食おうな、デザートも」
こう話してだった。二人はだ。
そのままそのパンケーキを注文して食べてだった。食堂を後にした。
聡美は食堂を出たところで中田と別れた。中田はそのまま次の講義のある講堂に向かう。
聡美は一人になった。しかしだ。
その彼女のところにだ。今度はだった。
広瀬が来た。彼も聡美に対して声をかけたのだった。
「君は確か」
「貴方は」
「ああ、広瀬友則」
己の名前をだ。聡美に話したのだった。
「剣士の一人だ」
「木の剣士でしたね」
「よく知っているな。彼から聞いたのかな」
「はい、中田さんに」
広瀬にも真実を隠してだ。聡美は答えた。
「そうして頂きました」
「とはいっても彼はそこまで口が軽いのかな」
中田のことを思い出してだ。広瀬はこうも言った。
「それは」
「あっ、剣士であることは知ってましたし」
「俺の力の属性のことだけを」
「はい、御聞きしました」
咄嗟にだがこういうことにして答えたのである。
「そうさせてもらいました」
「そうだったのか」
「はい、それでなのですけれど」
「戦いのことかな」
「お話して頂けるでしょうか」
怪訝な目になってだ。そのうえでだ。
聡美はだ。広瀬に対して尋ねた。
「そうして頂けますか」
「俺の話せることなら」
「では」
こうしてだった。聡美は今度は広瀬と話すのだった。そのやり取りはだ。
二人でキャンバスの中を歩きながらだった。その校舎や木々の中を進みながらだ。聡美は広瀬の話を聞いていた。広瀬は聡美が思っていたよりも饒舌だった。
「ではご両親は」
「一緒に暮らしているさ」
「同居されているんですか」
「仲はいい」
それはだというのだ。問題はないというのだ。
「全くな。家族については何もない」
「その願いともですか」
「何も関係はない」
そうだとだ。広瀬はこのことについては簡潔にだ。聡美に話した。
「そして就職もだ」
「ああ、それですね」
「もう半分内定している」
「八条学園におられるから」
「八条鉄道に入ることになっている」
そこにだ。就職先は半ば決まっているというのだ。
「そうなっている」
「では将来のことではないんですか」
戦いを選んだ理由、それはだというのだ。
「お金でもなく」
「金には特に興味はない」
人にとって極めて重要なだ。そのことについてもだ。
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