久遠の神話
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第二十二話 広瀬の礼儀その三
そうしながらだ。彼に言ったのだった。
「特にケーキが」
「ああ、ケーキ好きなんだな」
「果物も好きですが」
「特にケーキか」
「はい、好きです」
聡美は微笑んで中田に話す。
「日本のケーキも美味しいですね」
「そっちも口に会うか」
「ただ」
「甘さ弱いとかか?」
「日本のケーキも。味が薄めなのですね」
「店のそれは結構甘さ強めだけれどな」
「そうなのですか」
中田にそう言われてもだ。聡美はだ。
果たしてそうなのかと顔で言ってだ。そのうえでだ。
いぶかしむ感じでだ。こう言ったのだった。
「お店のケーキも。日本のものは」
「ギリシアのと比べて甘さ控えめなんだな」
「そうです。特にです」
「特に?」
「オーストリアのケーキと比べますと」
ここではじめてだ。聡美の話にギリシア以外の国が出て来た。
そのオーストリアのケーキと絡めてだ。聡美はさらに話した。
「かなり控えめです」
「オーストリアっていうとザッハトルテだよな」
「はい、あのケーキです」
「あれは確かにな」
「はい、そうですよね」
「殺人的な甘さだよな」
その味を思い出してだ。中田はうっとりとしているがそれと共に苦いものも含ませたそうした笑みになってだ。そのうえで聡美にそのケーキのことを話したのだった。
「あれには参るよな」
「あれがオーストリアのケーキです」
「確かにな。日本のと比べるとな」
「欧州のケーキはかなりの甘さです」
「日本人って結局あれなんだよ」
「薄味嗜好で食べる量もですね」
「控えめなんだよ」
そうだというのだ。日本はだ。
「この関西なんかな、特にな」
「味はですか」
「醤油が違うからな」
「えっ、お醤油が違うとは」
「関西は薄口醤油なんだよ」
中田は味噌汁をまたすすっていた。
その上品な感じの味を楽しみながらだ。彼は聡美に話していく。
「それに対して関東のはな」
「濃いのですか」
「特にうどんとかそばに出るんだよ」
その濃淡がだというのだ。
「関東のうどんとかそばってつゆが真っ黒でな。参ったよ」
「おうどんやおそばの」
「ああ、つゆが本当に真っ黒なんだよ」
「使っているお醤油の関係で、ですか」
「それにな」
「それにですか」
「そもそもつゆの作り方が違うんだよ」
そこからだ。根本的に違うのだった。関西と関東では。
「だからなあ。特にざるそばな」
「あっ、あれですね」
「あれなんかだしが全然違うんだよ」
「では関東のものは中田さんには」
「口に合わないんだよ」
苦笑いで言う中田だった。
「辛いんだよ、本当に」
「成程。そうですか」
「で、こうしたフライとかもな」
「やっぱり違うんですか」
「食い物は何でも関西だよ」
翻ってはだ。そうなるというのだ。
「安いし量も多いしな」
「そうですか」
「それでだけれどな」
ここまで話してだ。さらにだった。
中田はだ。聡美にこんなことも話した。
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