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久遠の神話

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第一話 水の少年その八


「あんまり酷いからな」
「その御前のせいだ」
 怒った声でだ。彼は言うのであった。
「御前のせいで俺はクビになったんだよ」
「俺のせいでかい?」
「そうだよ。御前のせいだ」
 完全にだ。他人のせいにする言葉だった。
「御前が俺のことを教育委員会にちくったんだな」
「全部調べてそこと警察にも通報してやったぜ」
「だからだ。俺は生徒の親から刑事告訴も受けてるんだ」
「ああ、じゃあ近く刑務所だな」
「PTAにも叩かれてクビにもなって」
「で、臭い飯か。栄転だな」
「全部御前のせいだ。御前のせいでこうなったんだ」
 まだ言う元教師だった。中田に対して喚きたてる。
「俺の人生どうするんだ。どうしてくれるんだ」
「その台詞あんたの生徒達に言うんだな」
 中田はあえて冷たくだ。元教師に言うのだった。
「あんたに虐待されていた生徒達にね」
「あいつ等が何だっていうんだ」
「あんたの生徒だろう?」
「生徒は俺の為にあるんだ。俺が部活を強くしてだ」
 それでだとだ。完全にエゴで言う。
「それで俺が評価を高めて偉くなる為に必要なんだよ」
「あの、それは」
 上城もだ。傍で聞いていてだ。
 呆れてだ。その元教師に言うのだった。
「あんまりじゃないんですか?」
「何が言いたいんだ」
「生徒を育てるのが教師ですよね」  
 その常識から元教師に問うた。怪訝な顔で。
「偉くなるために利用するって」
「生徒なんてな。教師の為にあるんだよ」
 まだ言うのだった。
「あいつ等を強くさせたら俺の評価があがるんだよ」
「だからそれは」
「五月蝿い!俺の生徒だ!」
 まだ言うのであった。
「俺が何しようと勝手だろ!」
「貴方という人は!」
「はい、ストップな」
 激昂する上城にだ。中田が言ってきた。
「これ以上話しても無駄だよ」
「無駄って」
「世の中こう言う奴もいるんだよ」
 笑いながらもだ。元教師を見据えての言葉だった。
「どうしようもない屑がな」
「けれど。これじゃあ」
「どっちみちこいつは破滅さ」
 懲戒免職、そして刑事告訴だ。そうなるのは明らかだった。
 こう言ってだ。中田は。
 元教師にだ。こうも言った。
「あんた、もう消えろ」
「何っ!?」
「大人しく裁判を受けて臭い飯食ってろ」
 これが元教師への言葉だった。
「それが一番助かる道だ」
「俺が刑務所に入るっていうのかよ」
「そうだよ、刑事告訴されて検察が受理してな」
 しかもだった。さらにだ。
「証拠も次から次に出てるんだ。それで刑務所に入らない筈ないだろ」
「俺は教師だぞ」
「元な」
「何で教育で捕まるんだよ」
「まともな教育者が刑事告訴なんかされるか」
 中田は醒めた調子で元教師に告げる。
「そうじゃないのかよ」
「御前まだ言うのか」
「何度も言うさ。さっさと刑務所に入れ」 
 中田の言葉は変わらない。 
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