久遠の神話
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第二十一話 聡美と高代その八
「その厳格さをですか」
「校則はそのままですが」
「しかし学園に入れたいというのですか」
「そう考えています」
「ですがそれは」
「いえ、海軍はただ厳格なだけではありませんでしたから」
「そうなのですか」
そう言われてもだ。聡美はだ。
今一つわからずだ。こう言ったのである。
「あまりそれは」
「信じられませんか」
「厳格なだけではなくですか」
「様々ないいものを持っていましたので」
「そういったものをですね」
「はい、取り入れてです」
そしてだというのだった。
「素晴らしい学園を築きたいのです」
「そしてその為にですか」
「はい、剣士として生き残りです」
そうしてだというのだ。
「その学園を作ります」
「そうですか」
「ずっと。遠い夢でした」
こうも言うのだった。
「見果てないまでの」
「先生になってもですか」
「そうです。ずっと遠い夢でしたが」
「ですがそれが」
「はい、果たせるかも知れなくなったのです」
それならばだというのだった。
「そうなれば。おわかりですね」
「はい、その夢の為に」
「私は剣士として戦います」
そしてだというのだ。
「そして私の夢を適えますので」
「上城君を倒してもですか」
「これは本音ですが」
前置きしてからだ。高代は聡美に答えてきた。
「私とて戦わないに越したことはありません」
「それで済むのならですか」
「はい、実は戦いはあまり好きではないので」
こう話すのだった。聡美に対して。
「ですから」
「戦いはお嫌いだったのですか」
「しないに越したことはないでしょう」
実際にだ。あまり気乗りしない感じの口調になっていた。
その口調でだ。高代は聡美に戦いのことを話していくのだった。
「人が死ぬことも考えられますから」
「それ故にですね」
「はい、だからです」
こう話すのだった。
「私は人を殺すことは倫理的にです」
「受け入れられませんか」
「できればそうしたことはしたくないのです」
しかしだった。その言葉には迷いがなかった。
その相反すると思われる二つのもの、戦いを好まない感情と戦うという決意を同時に含んでだ。彼はそのうえで聡美に対してこう話していくのだった。
「ですが夢の為には」
「その為にはですか」
「私は戦います」
こう言うのだった。
「例え何があろうともです」
「そうされますか」
「そういうことです。それでなのですが」
「はい、今度は一体」
「貴女に夢、どうしても適えたいものがあれば」
その場合はだというのだ。
「貴女は他の誰かを傷つけても手に入れたいと思いますか。若しくは」
他のケースもだ。彼は言ってみせる。
「そう考えておられる方を御存知でしょうか」
「他の誰かを傷つけてもですね」
「そうです。それでも何かを手に入れたいと思われている方をです」
知っているのかとだ。聡美に問うのだった。
「それはどうなのでしょうか」
「はい、実は」
聡美は高代の今の問いに項垂れた顔になった。そのうえでだ。
何故か、その理由は高代にはわからない。今目の前にいる彼にはだ。
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