久遠の神話
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第二十一話 聡美と高代その六
聡美にだ。彼はまた言ったのである。
「ですが。何故私のところに急に来られたか」
「このことについてですか」
「考えた結果です」
それでわかったというのだ。
「そうでしたが」
「貴方はそこまで、ですか」
「勘、いえ推理ですね」
微笑みながらの言葉だった。
「それには自信があります」
「そうなのですか」
「これでも学生時代は推理研究会にいまして」
そしてだというのだ。
「探偵のアルバイトもしていました」
「では」
「本職ではありません」
それは否定した。プロの探偵ではなかったというのだ。
だがそれでもだった。その推理能力については。
「ですがそれでもです」
「推理についてはですか」
「自信があります」
そうだというのだ。
「それも確かに」
「左様ですか」
「上城君のお友達ですね」
「そうなります」
「そしてそれ故に剣士のことを知った」
この推理は間違えていた。高代もそれは読めなかった。しかしだ。
聡美が剣士のことを知っていることからだ。あらためて彼女に問うたのである。
「それで貴女のお考えは」
「私の。剣士同士の戦いに関するですね」
「それはどういったものでしょうか」
「正直に申し上げます」
切実な顔になりだ。聡美はだ。
高代のその顔を見ながらだ。こう答えたのである。
「この戦いは何の意味もありません」
「無意味、いえ無益だというのですね
「はい、無益です」
まさにだ。そうだというのだ。
「ですから。絶対にです」
「戦いを止めたいですか」
「そう考えています」
「成程。おそらくですが」
聡美を見据えつつ、彼女とは違い至極冷静な面持ちでだ。高代はまた推理をはじめた。
そのうえでだ。微笑みながら彼女に告げたのである。
「貴女は戦いの内容についても御存知ですね」
「はい。互いの剣士が争い」
「はい、そして望むものをです」
「手に入れるというものであることを」
「知っています」
「では。この戦いはどうなるのでしょうか」
「今回で最後にしたいです」
少し俯きつつだ。聡美は高代に述べた。
「何があろうとも」
「大きな夢ですね」
「そうでしょうか」
「はい、そう思います」
微笑みだ。そうだと答える高代だった。
「ですが夢はです」
「それはですか」
「是非共です」
「大きくですか」
「そうあるべきです」
こう聡美に話すのだった。
「そして必ずや」
「実現させるのですね」
「そうあるべきなのです」
「では貴方は」
「はい、その為にです」
戦うと答える高代だった。そこに迷いはない。
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