久遠の神話
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第二十一話 聡美と高代その四
「素晴らしい人になりたいと思っています」
「先生ならなれますよ」
「絶対に」
少なくとも嫌われる先生ではない。だから言うのだった。
「だから頑張って下さいね」
「是非共」
「はい、それでは」
こうした話をしつつだ。日常を過ごしていた。剣士ではあっても日常はある。
それは休日でも同じでだ。この日だ。
駅前のイタリアンレストランに行きだ。奇麗な女の子の店員にだ。
窓際の席においてだ。優しい笑顔で注文をしていた。
「ではペンネですが」
「それはアラビアータで、ですね」
「それでお願いします」
「わかりました。そしてスパゲティは」
「ネーロで」
イカ墨のことである。これを使ったソースのスパゲティをだというのだ。
「そしてフェットチーネは野菜を入れたものを」
「どうされますか?」
「茸でお願いします」
ソースはそれだというのだ。
「ここにある茸にトマト、それにガーリックのものを」
「それをですね」
「はい、それに」
そしてだ。さらに頼んだのは。
「ピザはシーフードを」
「畏まりました」
「そしてワインは」
それはだ。何にするかというと。
「日本のものはありますか」
「甲州ワインがあります」
山梨産のだ。それがあると答える店員だった。
「赤、白、そしてロゼがありますが」
「赤をお願いします」
色についてもだ。高代は注文した。
「それを二本。冷やしたものを」
「ではそれも」
「デザートは後で注文させてもらいます」
それは後にしてだ。そのうえでだった。
彼は注文をし暫くしてから来たそのパスタをだ。フォークやスプーンで食べていく。その彼の席のところにだ。ある女が来た。女は彼に対してこう声をかけてきた。
「あの」
「貴女は確か」
聡美だった。彼女の顔を見てだ。そのうえでだ。
高代は己の記憶を辿りだ。それから述べたのだった。
「大学へのギリシアからの留学生の」
「はい、銀月と申します」
日本の頭を下げる礼で一礼してからだ。聡美は高代に答えた。
「宜しくお願いします」
「はい、私はです」
「高代先生ですね」
自分から言う聡美だった。彼の名を。
これは彼女にとっては失態だった。だがそのことに気付かずにだ。
聡美はさらにだ。高代に対して言ったのだった。
「高等部の英語の先生ですね」
「私のことを知っていたのですか」
「はい、少し」
流石に剣士の話は知らないふりを今はして応える聡美だった。
そしてだ。そのうえで彼に話そうとするがここでだった。
高代は聡美にだ。こう言ってきたのだった。
「あの」
「はい?」
「立ったままでは何ですし」
それでだというのだ。
「相席でよければ」
「宜しいでしょうか」
「はい、座ってお話をしませんか?」
「では」
聡美もだ。高代がいいというのならと受けてだ。そのうえでだ。
高代の前、向かい側の席に座ってだ。そうしてだ。
高代が彼女の分を注文するその前にだ。店員のあの若い女の子に声をかけたのだった。
「あの、すいません」
「はい、何でしょうか」
「ラザニアをお願いします」
彼女がまず注文したのはそれだった。そしてだ。
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