久遠の神話
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第二十話 ハヤシライスその六
話を聞いた樹里は共に歩きながら彼にこう言った。
「よかったわね」
「うん、僕もそう思うよ」
「気分転換ね」
「それも大事なんだね」
「そうね。いつもあれこれ考えるよりは」
「気分転換をしてあらためてね」
そのことは樹里も今わかったことだった。そしてだ。
彼女もだ。こう上城に言うのだった。
「それじゃあね私からも気分転換を提案するわね」
「村山さんからもって」
「そう、これからお茶に行かない?」
にこりと笑ってだ。この提案をするのだった。
「紅茶なんてどうかしら」
「紅茶、いいね」
「ただし。今日飲む紅茶はいつものお店の紅茶じゃなくて」
「お店の紅茶じゃないって?」
「家で飲まない?私か上城君のお家で」
にこにことしてだ。上城に提案するのだった。
「そうしない?今日は」
「ええと。それってつまり」
「だから。私のお家に来ない?」
上城に顔を向けてだ。思わせぶりな笑みで言った言葉だった。
「それかね。私が上城君のお家に行くか」
「二つに一つだね」
「その言い方はちょっと違うと思うけれど」
「違うかな、これって」
「ちょっとね。それでどっちにするの?」
「ううん、そう言われると」
上城は腕を組み真剣に考える顔になった。
そしてそれからだ。こう樹里に言った。
「ええと。じゃあね」
「うん、どっちなの?」
「僕の家は今誰もいないから」
「じゃあ上城君のお家ね」
「駄目だよ、家にいるのは僕達だけだよ」
真面目な顔でだ。樹里の笑顔にぴしゃりとした感じで告げた。
そのうえでだ。彼は彼女にこうも言うのだった。
「そのさ、それで何ていうか」
「キスとかその先とか?」
「そういうのはちょっと、ねえ」
「奥手ね。私は特にいいけれど」
「いや、いいっていうか」
「本気よ。だからね」
笑顔で言う樹里だった。あっけらかんとさえして。
だが上城はその言葉に乗らずだ。真面目な顔で言うのだった。
「いや、今はね」
「駄目なの?」
「もうちょっとね」
少し時間を置いて。そうしての言葉だった。
「そうしたことはね」
「ううん、じゃあそっちはもう少しね」
「わかったわ。じゃあまた今度ね」
「男の僕が言うことじゃないと思うけれど」
「あはは、こういうことってどうしても男の子の方が積極的だから」
樹里も特に悪く思ってはいなかった。それでだ。
あくまで明るくだ。こう言うのだった。
「何時でも待ってるわね」
「待ってくれてるんだ」
「そうしてあげるから。感謝してね」
「ここでは感謝なんだ」
「そう、できたらそうして欲しいわね」
樹里は明るい。上城の気分転換の為にあえてそうしている一面もある。
このことを話してだ。そしてなのだった。
上城はあらためてだ。こう言うのだった。
「それじゃあもう一つの選択肢でね」
「私のお家に来てくれるのね」
「誰かいるかな、今」
「今日はお父さん帰りが早いし」
それにだった。
「弟も塾ないしね」
「それじゃあね」
「私のお家で、なのね」
「お茶飲ませてもらっていいかな」
「ええ、いいわよ」
今度はにこりと笑って答えた樹里だった。そうした話をしてだった。
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