とある星の力を使いし者
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第20話
麻生は歩き続けていた。
この三日間は寮に帰る事なく学園都市を歩き続けていた。
麻生は頭の中で三日前に会った猫の言葉が頭から離れないのだ。
(その生き方でいいのか、か。)
ふと、近くにあった看板に目をやる。
そこには第二三学区、宇宙開発エリアと書いてあった。
(かなり遠くまで歩いていたんだな。
幻想殺しに惹かれているか・・・・・)
言われてみて気づいた。
麻生が無くしてしまったモノを上条は持っていた。
だから、惹かれているのだが麻生は二度となくした物を取り戻すことが出来ない。
(結局、俺はこの生き方しか・・・・)
そう麻生は諦めた時、対向道路に御坂美琴が歩いていた。
その表情は暗く何か思いつめた表情していた。
そしてふらふらとどこかに行ってしまう。
その姿を見て麻生は美琴を追跡する事にする、それをしたところで麻生の迷いは晴れる事はない文字通り全く意味がない。
それなのに麻生は気まぐれか、それともあの猫に言われたのが原因なのか、どちらが原因かは分からないのだが息を潜めて美琴の後をつけていく。
美琴はもう打つ手がなかった。
あの実験、絶対能力進化を止める為に何個もある研究所を破壊してきた。
本当なら実験の核である学園都市第一位の一方通行を倒す事が出来れば、それで実験は中止になる。
だが、美琴ではどうやっても一方通行に勝てない。
もしかしたら、この地球上で一方通行に真正面から戦って勝てる人間などいないかもしれない。
彼は一方通行という名前ではない。
誰も本人の名前は知らないので能力の通称で呼ばれている。
彼の能力は一方通行。
運動量・熱量・光・電気量などといったあらゆるベクトルを観測し、触れただけで変換する能力。
美琴がいくら強力な電撃を一方通行に撃ちこんだ所で、全て反射されてしまい自分に返ってくるのだ。
だから、研究所を破壊するという回りくどい方法を取らざるを得なかった。
自身の全能力をフルに使い研究所を片っ端から破壊していった。
それでようやく、実験は止められたと思っていた。
だが、ある時に実験は終わっていないと分かってしまった。
最後の研究所に潜入した美琴は電気機器などが一切稼働していなかった。
罠かと思い潜入するが、人もおらずデータベースのデータも全て消去されていた。
データベースをハッキングするとどうやらこの研究所は破棄されたのだと知り、ようやく自分のクローンである通称「妹達」が犠牲になる事はない。
いつもの自動販売機で上条当麻が立っていた。
美琴は少しだけ笑うと上条を自動販売機から押し退ける。
「ちょろっとー、自動販売機の前でボケッと突っ立てんじゃないわよ。
ジュース買わないならどくどく。
こちとら一刻でも早く水分補給しないとやってらんないんだから。」
上条の腕を持ち横に押し退けるが対する上条は美琴の顔を見て言った。
「何だ、コイツ?」
その言葉を聞いてカチンと来たのかバチバチ、と美琴の前髪で電気音がなる。
「わったしっにはー、御坂美琴って名前があんのよ!
いい加減に覚えろド馬鹿!!!」
そして美琴の額から青白い電撃の槍が伸びていくが、上条は右手でそれを打ち消す。
毎回同じように軽く電撃をあしらわれているのが、少しむかつくが今は自動販売機の方が優先だった。
「その自動販売機な金を呑むっぽいぞ。」
「知っているわよ、だから・・・」
そういってリズムよくステップを刻む。
上条は嫌な予感すると思った時、その予感が当たった。
美琴はちぇいさー、とふざけた叫びと共に自動販売機の側面を蹴りを叩き込んだのだ。
その時、スカートの下が体操服の短パンだったので何だか夢を壊された気分になったのは上条だけの秘密だ。
「ボロッちいからジュースを固定しているバネが緩んでいるのよね。
何のジュースが出るか分からないけど。」
そう言いながら出てきたジュースのプルタブを開ける。
どうやらまだ当たり方だったようだ。
すると上条の様子が変だったので美琴は何かあったのかを尋ねる。
上条はこの自動販売機がお金を呑む事を知らなかったらしく、世にも珍しい二千円札が呑まれてしまったらしい。
それを聞いた美琴は腹を抱えて笑ったが自動販売機の前に再び立つ。
「ではその二千円札が出てくる事を祈って・・・・千円札が二枚とか出てきたら承知しないわよこのポンコツ。」
右手の掌を硬貨の投入口に突きつける。
上条は再び嫌な予感がしたが一応何をするか聞いてみる。
「どうやって自動販売機から金を取り戻すんだ?」
「どうやってって、こうやって。」
瞬間、美琴の掌から電撃が飛び出て自動販売機に直撃する。
そして、自動販売機の隙間から黒い煙が噴き出していく。
当然、上条当麻は全力でその場を離れた。
美琴は自動販売機から出てきたジュースを持ちながら上条を追いかける。
十分くらい走ってようやく上条も足を止めると美琴は上条に何本か空き缶を渡す。
上条はこれを受け取ったら共犯になるのでは?、と考えたがジュースの名前を見て言葉をなくす。
黒豆サイダーやきなこ練乳など名前からして確実においしくない商品ばかりだ。
美琴は誤作動を狙ってやっているので種類までは選べないわよ、と自動販売機を壊した件については全く反省していないようだ。
「とりあえずお飲み。
美琴センセー直々のプレゼントだなんてウチの後輩だったら卒倒してるのよん。」
「卒倒だぁ?こんな食品衛生法ギリギリの缶ジュースもらって喜ぶ奴がいるかよ。
大体少女マンガじゃねーんだから、女子高でレンアイなんざありえねーだろ。」
上条はそう言ったが美琴の表情は満更でもなかった。
「いや、少女マンガ程度なら可愛らしいんだけどね。
色々あるんですよー。
いろいろ?むしろどろどろ?
私が常盤台ん中で何て呼ばれているか教えてあげようか?
引いちゃうわよーん。」
自虐的に美琴が話している時だった。
「お姉様?」
不意にその言葉が響き渡った。
美琴は背中に氷を突っ込まれたような顔をして上条はあまりの衝撃的呼び名に驚いている。
ちょっと離れた所に美琴と同じ制服をきた女性、白井黒子がやってきて上条と美琴が仲良く?ベンチで座っているのを確認してすると大きなため息を吐いて言った。
「まさか、本当にお姉様が殿方と逢瀬を!!!」
「ちょっと待てぇ!!」
美琴の間髪入れずに突っ込みを入れたが白井はそれを無視してすさまじい速度で上条の両手を握る。
「初めまして、殿方さん。
わたくしお姉様の「露払い」であり唯一無二のパートナー。
もう一度言いますわよ、唯一無二のパートナー白井黒子と申しますの。
すっごく不本意なのですがお姉様の知り合いの様ですので、社交辞令として仕方なくご挨拶さしあげてます。」
そう説明されてもどう反応していいのか分からず困っている上条。
それを見た白井は。
「この程度でドギマギしているようでは浮気性の危機がありましてよ?
ですが、てっきり麻生さんかと思いきやまさかこんな殿方まで・・・黒子は喜んでいいのやら分かりませんわ。」
「え?麻生?」
白井の言葉を聞いて顔が真っ赤になる美琴。
「このヘンテコが私の彼氏に見えんのかぁ!!!!」
電撃と共にさりげなく上条の心を傷つける。
白井は空間移動電撃をかわし、近くの街灯の上まで移動する。
「ですわよねぇ、おかしいとは思いましたの。
そうなると麻生さんの方が本命」
そう言葉を続けようとするがまた電撃が飛んで来たので隣の街灯に移動する。
白井は最近、美琴が元気がなかったのが気になっていたが、今の美琴を見ると元気を取り戻したようなので少し安心する。
「それではくれぐれも過ちを犯しませんようお姉様。」
そんな言葉を残して白井はどこかへと空間移動した。
美琴は後でどうやって白井を締めようか考えていた時だった。
「お姉さま?」
上条はまたお姉さまかよ!?、と驚いていたが美琴はその声を聞いて固まってしまう。
それは一番聞きたくない声だった。
振り返ると御坂のクローンである「妹達」が立っていた。
美琴は「妹達」の一人を見て固まっているのをよそに話が続く。
「え?お?同じ顔?」
「遺伝子レベルが同質ですからとミサカは答えます。」
「ああ、双子なのね。
一卵性双生児は初めて見るけど、ここまで似るモンなんだな。
その双子ちゃんが何の用事?姉ちゃんと帰んの?」
「馴れ馴れしい人だなこの軽薄野郎、と本音の飲み込んでミサカは質問に応じます。
ミサカを中心とする半径六〇〇メートル以内の領域にて、ミサカと同等のチカラを確認したため気になって様子を見に来たのですが・・・・現場に壊れた自販機、大量のジュースを持つあなた達、まさかお姉さまが窃盗の片棒を担ぐとは・・・・」
美琴妹はため息を吐きながら言う。
「おいっ!!主犯はオマエのねーちゃん!!
俺は傍観者だぞ!!」
「電子で自販機表面を計測した結果、もっとも新しい指紋あなたのものですが。」
「ウソっ!!そんな事まで分かんの!?」
「ウソです。」
「・・・・・」
「・・・・・」
上条はもうどうしたらいいのか分からず美琴に助けを求める。
すると美琴は御坂妹を睨みながら近づき爆撃みたいな怒鳴り声をあげる。
「アンタ一体どうしてこんな所でブラブラしてんのよ!?」
上条は耳を押え御坂妹は美琴が怒鳴り声をあげても表情を変えない。
そして美琴の質問に答える。
「・・・・研修中です。」
「研・・・・」
美琴は一瞬で思い出す。
あの時電車に押しつぶされたあの子を。
美琴は御坂妹の片腕を掴み強引に引っ張っていく。
「研修って風紀委員にでも入ったのか?」
上条の問いかけに美琴は適当に答えた。
「風紀委員?
あーそうね、それよそれ。」
「ミサカにもスケジュールが「いいから、きなさい。」・・・・」
美琴が御坂妹を連れて行き上条は一人になる。
複雑な家庭なのか?と適当に考えていた。
公園から少し離れた所に移動した美琴は御坂妹に問い掛けるように言った。
「実験は・・・あの計画は中止されたんじゃないの!?
何で・・・・」
美琴の言葉に御坂妹は答える。
「計画というのが「絶対能力進化」計画を指すのなら予定通りに進行中ですとミサカは答えます。」
御坂妹の答えを聞いて美琴は驚愕の表情に染まる。
「ウソ・・・今も?」
「はい、先程第一〇〇二〇次実験が行われたばかりです。」
さっきまで実験を止められたと思っていたのにやり遂げたと思っていたのにそれが一気に崩されていく。
今もこの時もあの時のように「妹達」が殺されている。
そう考えると吐き気が出てきた。
違う、と美琴は思った。
(私が殺したんだ。)
そして目の前にいる御坂妹も殺される、そう思うとさっきよりも吐き気が出てきた。
「お姉さま?どうかされましたか?」
御坂妹にお姉さま、と呼ばれその声がその姿が美琴を追い詰めていく。
「やめてよ。
その声で、その姿で、もう・・・私の前に現れないで・・・」
自分は何を言っているか分からなかった。
気付いた時には御坂妹はどこかへ立ち去っていた。
そして、自分が何を言ったのかようやく気付き近くにあった街灯を殴る。
「最っ低だ。」
美琴は近くの公衆電話から実験の事について調べていた。
すると研究は中止されておらずまだ続いていることが分かった。
そして、その引き継ぎ先の研究施設の数は一八三施設だった。
美琴は何がどうなっているか分からなかった。
そして気づいた。
自分が相手にしているのがどれほど巨大な物なのかを。
この学園都市の中は衛星とカメラで常に監視されている。
あの非人道的な実験が野外で行われているのに学園都市の上層部は気づいている筈だ。
なのに実験は続いている。
この意味は学園都市そのものが敵である事を示していた。
そして美琴は考えた、こんなくだらない実験を確実に止める方法を。
そして次の日の夕方、ある事を決心する。
「おっすー、そっちも補習か?ビリビリ中学生。」
「ああ、アンタか。
今は疲れているし残った体力も温存しときたいから、ビリビリは勘弁しといてやるわ。」
上条を追い払うようにしっしっと手で追い払う。
上条は美琴の周りを見渡して言った。
「今日は妹は一緒じゃないのか?
昨日、ジュース運んでもらったから礼とかしときたいんだけど。」
「アンタ、またあの子と会ったの!?」
「へ?いけなかった?」
美琴と上条の会話を遮るかのように空から声が聞こえた。
空には飛行船が飛んでおり「樹形図の設計者」の予言が発表される。
その予言を聞いて美琴は言った。
「私、あの飛行船って嫌いなのよね。」
「何でだよ?」
「機械が決めた政策に人間が従ってるからよ。」
上条と別れた美琴はバスに乗り第二三学区の宇宙開発エリアに向かっていた。
そしてある計画を実行する。
この宇宙開発エリアは樹形図の設計者の情報を送受信している施設がある。
研究施設が一八三もあれば一つ一つ破壊していっても同じ様に引き継ぎされるだろう。
だが、美琴が調べた情報によればそもそもこの実験は、樹形図の設計者を使って計画された物だった。
なら樹形図の設計者が、その実験が続行不可能という結果を出せばどうなるだろう?
美琴の狙いはそこだった。
この学園都市の学者は樹形図の設計者の演算に絶対の信頼を寄せている。
それを逆手に取り樹形図の設計者に嘘の予言を言わせ、実験を中止させるつもりなのだ。
美琴は警戒システムを電撃で誤作動を起こさせ、中に侵入するがそこである異変に気付いた。
人の気配が全くないのだ
この施設は学園都市の頭脳と交信できる最重要機密施設だ。
それなのに心臓部の交信室まで、ものけのからだった。
デスクには埃がかなり溜まっており放棄されたのは昨日今日の話ではないと分かる。
とりあえず美琴はデータベースにハッキングすると、そこである報告書を見て全ての希望が失われた。
「樹形図の設計者は正体不明の高熱源体の直撃を受け大破したものと判明。」
七月二八日に正体不明の高熱源体が直撃した樹形図の設計者は、完全に破壊されていたのだ。
その事実を知った美琴は、施設を出ていきふらふらと歩いていた。
樹形図の設計者が壊されたことで最後の一手が失われた。
そして、樹形図の設計者が無くなろうとも実験は計画通り続けられているという事だ。
ふと、美琴の横に地図の看板があった。
前に引き継ぎ先の施設の一つがこの辺りである事を思い出す。
「ハハ。」
迷う事はなかった。
美琴は施設を襲撃した。
自身の電撃をフルに使い施設を破壊していく。
(そうよ、まだ終わった訳じゃない。
全部潰してしまえばいい、今あるものこれから引き継ぐものぜんぶ!!)
全てを破壊する覚悟を決めた時だった。
「お前、こんな所で何しているんだ。」
え?と美琴は聞き慣れた声が後ろから聞こえ振り返る。
そこに麻生恭介が立っていた。
後書き
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。
ページ上へ戻る