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戦国異伝

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第五十五話 美濃の神童その七


「ではじゃ。今はじゃ」
「はい、それでは」
「このままですな」
「飲まれますな」
「うむ。そうする」
 実際にこう言ってだった。彼はだ。
 相変わらず酒を飲み続ける。法螺貝の声には何も思わずだ。
 しかし稲葉山城はだ。兵達は酔い潰れだ。
 瞬く間に全て占拠された。そしてだった。
 竹中はだ。彼に従って来た者のうちの一人にだ。こう告げたのだった。
「では殿にじゃ」
「このことをお伝えせよというのですね」
「うむ、そうじゃ」
 まさにそうだとだ。竹中は告げた。
「そうせよ。よいな」
「わかりました。それでは」
「さて、これでどうなるかじゃ」
 竹中は真剣な面持ちでだ。こうも言った。
「殿も変わられるか。それとも」
「おそらく駄目でしょう」
 彦作はここで兄に話してきた。
「殿はそうした方ではありませぬ」
「そうであろうな」
 竹中もだ。それはわかっているというのだ。
 だがそれでもだ。かれはあえて弟にこう話した。
「しかしそれでもじゃ」
「実際に御覧になられてですか」
「そのうえで決めたいと思ってじゃ」
「それでなのですか」
「うむ。それに陥ちぬ城はない」
 竹中は弟にこんなことも話した。
「それを見たくもあった」
「実際にこうして陥ちましたな」
「陥ちぬ城はやはりないな」
 竹中自身もだ。このことをあらためて認識したのだ。
 そのうえでだ。彼はだ。
 己の弟にだ。強い目で話した。
「このことと次のことでおおよそ決まるであろう」
「決まるとは何がでしょうか」
「美濃のことがじゃ」
 それが決まるというのだ。
「おおよそじゃがな」
「そうなのですか」
「これで殿が御心を入れ換えられなければ」
 実際にはだ。その可能性はほぼないと言っていいものだ。
「斉藤家の権威は落ちる」
「それもかなりですね」
「国人やわしの如き家臣の者も多く見限っていく」
「して織田殿についていきですね」
「美濃は織田殿のものになる」
 まさだにだ。そうなるというのだ。
「それこそ熟した柿が落ちる様にじゃ」
「あの様にですか」
「うむ、美濃は織田殿のものになろう」
「織田殿が美濃を手に入れられれば」
 そうすればどうなるか。彦作は自分の頭で考えてみる。そうしてだ。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「それで終わられませんな」
「わかるか、御主も」
「はい、そこからさらにですね」
「勢力を伸ばされる」
「その進む先は」
 何処か。彦作はそこまではわからなかった。
 だが、だ。そこはだった。
 竹中がだ。静かに言うのであった。
「上洛じゃ」
「まさかと思いますが」
「いや、織田殿は必ずされる」
 このことを確信しているとだ。竹中は弟に話した。 
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