久遠の神話
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第十七話 六人目の戦士その十
「それではだ。いいか」
「はい、お茶ですね」
「今からですね」
「飲もう。一緒にな」
こうしてだ。広瀬は上城達を誘ってだった。
そのうえでだ。大学の茶道部の部室であるその茶室、まさに詫び寂びのある畳の部屋の中に入りだ。正座をして茶を飲むのだった。
それを飲みながらだ。広瀬はだ。
三人の作法を見てだ。こう言うのだった。
「茶道のことは知っているか」
「ええ、ちょっとだけですけれど」
「高校の情操教育で教えてもらいました」
「あれか」
情操教育と聞いてだ。広瀬はすぐに察した。
そのうえでだ。こう上城と樹里に話したのである。
「あれは俺も勉強させてもらった」
「あっ、高校の先輩だったんですか」
「高等部にもおられたんですか」
「そうだ。そこから大学に入った」
所謂だ。エスカレーターだったというのだ。
「それで今この大学にいる」
「そしてお茶のことも勉強できた」
「そうだったんですね」
「抹茶も飲んだ」
実際に今飲んでいるだ。その茶をだというのだ。
「はじめてな」
「広瀬さんはその時にはじめてこのお茶を飲まれたんですか」
「高校で」
「それまでは茶道にも抹茶にも興味がなかった」
笑みを浮かべつつだ。彼はその茶を飲みながら話すのである。
「だがそれでもだ」
「実際に飲むとですね」
「これが、だったんですね」
「美味い。正座は最初は辛かった」
正座については苦笑いで話す。
「しかしそれでもだ」
「茶道自体はですか」
「気に入られたんですね」
「いいものだな」
今度は微笑みになっている広瀬だった。
「実にな」
「ですよね。何か日本の文化の中にいる気持ちになれて」
「落ち着きますし」
「そうだな。しかし」
広瀬は二人に応えながらだ。そのうえでだ。
もう一人のだ。聡美を見て言うのだった。
「君は平気なのかな」
「正座ですか?」
「外国人には辛いと思ったが」
「いえ、特に」
聡美は何でもないといった口調で広瀬の問いに答えた。しかもだ。
茶道の作法についてもだ。完璧だった。それを見てもだ。広瀬は言うのだった。
「しかも作法も知っているのか」
「確かずっとギリシアにおられたんですよね」
「それで茶道御存知だったんですか」
「はい、実は」
何故茶道について知っているのか。聡美は三人に話すのだった。
「親から学びました」
「あっ、銀月さんハーフでしたね」
「日本人とギリシア人の」
「え、ええ」
何故かだ。ハーフという上城達の言葉にはだ。妙な反応を見せる聡美だった。
しかしすぐに冷静さを取り戻してだ。彼女はこう言うのだった。
「それで教えてもらいました」
「茶道をですね」
「そうだったんですね」
「はい、そうでした」
こう話すのだった。
「それで知っています。ギリシアで勉強しました」
「ギリシアにも日本人はいるからな」
広瀬もだ。聡美の今の話を聞いてありのまま述べた。
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