戦国異伝
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第五十二話 青と黄その九
「わかったな」
「はい、さすればです」
「松永という男が若し闇の者なら」
「その時は」
操ろうとする前に斬る、そのことを確かに決めたのだった。信長は今の時点からだ。上洛してからのこともよく考えているのである。
その彼のところにだ。遂にだった。
家康一行が来た。それを彼に知らせたのは。
木下だった。彼が信長の前で平伏してから話す。
「来られましたぞ」
「左様か。黄色の服でじゃな」
「どなたの黄色の服に冠に鞍でございます」
馬の鞍までが。黄色だというのだ。
「まことに鮮やかでございます」
「そうじゃな。青に黄じゃ」
信長は己の色と合わせて話す。
「面白い組み合わせになるのう」
「では殿、今からですか」
「そうじゃ。今からじゃ」
満面の笑みで木下にも答える。
「主だった家臣達はおるな」
「はい、この清洲に」
「皆を集めい。既に宴の用意もできておるな」
「御安心下さい」
そのことについては平手が応える。
「それがしが既に」
「うむ。では竹千代と家臣達を応接の間に呼びじゃ」
そしてだ。そこでだというのだ。
「まずは会おうぞ」
「では我等もですな」
「そうじゃ。来るのじゃ」
また木下の問いに答えるのだった。そのうえでだ。
平手にもだ。こう告げた。
「爺、では手筈通りじゃ」
「はい、それでは」
「久し振りじゃ。竹千代と会い話すのは」
信長は実に楽しそうに話す。
「さて、どうなっておるかのう」
「徳川殿と会われるのは」
平手もここで言う。
「また久方ぶりですな」
「そういえば爺も会っておったな」
「少しですが」
実際にそうだとだ。平手は控え目に答えた。
そうしてだ。こうも話したのであった。
「あの頃はまだ幼子でしたが」
「花氏は聞いておるな」
「武芸全般に秀でておられるとか」
「馬に剣に水練もな」
信長は既にそのことを知っていた。
そしてだ。今も己の前にいる木下にだ。こう尋ねたのだった。
「猿、御主は大学と共に竹千代と戦っておるな」
「はい、桶狭間の折に」
その通りだとだ。木下もすぐに答える。
「雪斎殿もおられましたがどちらも」
「手強かったのじゃな」
「いや、あれだけの方は」
すぐにだ。いつものひょうきんな調子になって話す木下だった。
「そうはおられませぬな」
「戦上手じゃな」
「それは間違いありませぬ」
「してじゃ」
戦だけではないとだ。信長はさらに続けた。
「三河と遠江の半分を手中に収めたのう」
「そのことですな」
ここで言ってきたのは真木だった。
「徳川殿はよく治めておられます」
「その治世は堅実です」
岡本もそのことを言う。
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