久遠の神話
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第十六話 上城の迷いその四
「それだけな」
「多いですね」
「一億二千万の中の一万さ」
高橋はその割合も話に出した。
「それだけ死んでるんだよ」
「一億二千万の中の一万」
「多いと思うか?」
「数としては多いですね」
「割合だとそうでもないんだけれどな」
だが、だとだ。高橋は述べていくのだった。
その車達を見ながらだ。そして出される言葉だった。
「それでもな」
「一万という数は」
「深刻だぜ。かなりな」
警官としての正義感からだ。彼は話すのだった。
「頭の痛い話だよ」
「我が国は戦争は行ってはいない」
工藤はこう話す。
「だがそれでもだ」
「一年で一万人ですか」
「俗に交通戦争と呼ばれている」
工藤は自衛官らしくだろうか。戦争という単語を出した。
「そこまで深刻な問題になっている」
「そうですか。ですがそれは」
「ギリシアでもか」
「同じなんですね」
「やっぱり交通事故はあります」
こうだ。悲しい顔になり二人に話すのだった。
「死ぬ人もいますし」
「何処の国でもあるよね」
高橋もだ。悲しい顔になり聡美に話した。
「交通事故ってやつは」
「そうですね。ですが」
「うん。少しでも減らしていくべきですね」
「そうしたいね。本当に」
警官として話す高橋だった。そうした話をしてからだ。
彼はだ。こう聡美に話すのだった。
「それでなんだけれど」
「はい、何でしょうか」
「若し知っていたらでいいから」
こう前置きしてからだ。工藤と共に彼女を見つつ話すのだった。
「俺達以外の剣士のことをね」
「教えて欲しいというのですね」
「うん、知っていたらね」
その場合はだとだ。こう言うのだった。
「その時はね」
「はい、わかりました」
聡美も快諾してきた。
「その時はそうさせてもらいます」
「悪いね。それじゃあね」
こうした話をしてだった。二人は聡美と別れた。聡美は難しい顔をして二人を見送った。しかし二人はそのことに気付かないままだった。
その彼等とは別にだ。上城はだ。ここ数日深刻な顔になり考えていた。
そしてだ。樹里にもこう言うのだった。
「僕はやっぱり」
「やっぱりって?」
昼食の後で校内、八条学園高等部の中を歩きながらだ。話すのだった。
「うん、剣士として間違っているのかな」
「戦わないってこと?」
「剣士の人達とね。それはどうなのかな」
「間違ってないと思うけれど」
こう答える樹里だった。彼の横にいて。
「特にね。ただ」
「それでもだね」
「ええ。難しいわよね」
「スフィンクスも言ってたけれどね」
「それはどうしてもね」
「だって。剣士の人達の中には」
他の剣士達がだ。どうかというのだ。
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