| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十五話 選択その六


「けれどそれが難しいのよ」
「そうですよね。それは」
「けれど貴方はそれでもその道を選ぶのかしら」
「そのつもりです」 
 迷いがないと言えば嘘になる。微かにだがあった。しかしそれでもだ。 
 上城はその迷いを振り払ってだ。スフィンクスに述べた。
「僕は人とは戦いたくありません」
「ではどうして怪物とは戦うのかしら」
「そのことですか」
「ええ。それはそうしてかしら」 
 スフィンクスが今度彼に問うのはこのことだった。
「人と怪物は違うというのかしら」
「はい、違うと思います」
 その通りだとだ。彼はここですぐに答えた。
「何となくですが」
「ではどう違うのかしら」
「力は神話にある通りだと思います」 
 そのこともわかるとしてだった。さらに述べる上城だった。
「しかしそれ以上にです」
「違うというのね」
「はい、心はないですね」
 上城が言うのはこのことだった。
「僕達が戦う怪物達は」
「大抵の怪物はね」
 その通りだと答えたスフィンクスだった。
「その通りよ」
「やっぱりそうなんですね」
「ええ。出て来る怪物達は言うならばレプリカ」
「オリジナルの神話の怪物のですか」
「そうよ。そのことは何時わかったのかしら」
「最初の戦いで」
 もうその時にだ。おおよそのことを察したというのだ。
「何となくですけれど直感でわかりました」
「鋭いわね。中々」
「目でしょうか」
 ここでまた言う上城だった。
「目に光がないといいますか」
「そこね。目ね」
「目には心が宿るといいますね」
 上城は昔から、それこそ孟子の頃から言われていることを述べた。
「そう言われていますね」
「そうね。目よ」
 スフィンクスもその通りだと述べる。
「目を見ればわかるわ。心がある怪物と心がない怪物は」
「ですから。レプリカですから」
 それでだというのだ。
「特に戦っても思うことはありません」
「命を奪うことではないからなのね」
「戦いで命を奪うことは好きではありません」
 上城はこのことは毅然として話した。
「僕の剣は活人剣ですから」
「活人剣ね」
「はい、それです」 
 それこそがだ。彼の剣だというのだ。
「ですから命を奪うことは好きではありません」
「武士道というのかしら」
「武士道ですか」
「何か聖職者みたいな考えね」
「別に聖職者ではないです」
 上城はそのことは否定した。
「ですが」
「それでもなのね」
「はい、僕は自分で定めたことは破りたくはないです」
 信念だった。それはまさに。
「決して」
「だからこそ戦わないのね」
「そのうえで戦いを終わらせたいです」
「できればいいわね」
 期待の言葉だった。スフィンクスの口からの。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧