戦国異伝
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第五十話 徳川家康その七
「我等は我等の色でやっていく」
「色ですか」
「そういえば我等もですな」
「色を決めるという話がありましたな」
「それもまた」
その話も出たが今はだった。家康はその傾くことについて話をしていく。
「とにかくじゃ。我等このままいきじゃ」
「しかし織田殿にはでむか」
「傾いたままであって欲しい」
「そうなのですか」
「そうじゃ。堅物に堅物ではどうもいかん」
こうした話をするのである。
「やはり。堅物にじゃ」
「破天荒な御仁をですな」
「隣に置かれる」
「それでこそですか」
「そうじゃ。しっくりいく」
まさにだ。そうだというのだ。
「堅物の我等と傾奇者の我等でな」
「だからこそ織田殿がそうであるか」
「それを御覧になられる為に」
「あえて尾張にですか」
「殿御自ら」
「そういうことじゃ。では日をあらためてじゃ」
家康が軸になって話を進める。こうしてだった。
家康は彼の家臣達を引き連れ尾張に向かうことになった。それを聞いてだ。
信長は清洲城においてだ。川尻を前にして高らかに笑う。
左右には家臣達もいる。その彼等にも言うのだった。
「ははは、竹千代らしいわ」
「松平、いえ徳川殿でしたな」
中川がすぐに言い換えて述べた。
「あの方らしいですか」
「そうじゃ。あ奴は昔から慎重な奴じゃ」
その家康の気質から話すことだった。
「その目で見たことをじゃ」
「信じられる方ですか」
「では殿と同じでは?」
「そうですな。殿もそうですし」
「それでは」
「ははは、わしはあそこまで慎重ではない」
あえてこう言ってであった。
「あ奴はわかっていてもそうしてあえて見ようとするのじゃ」
「つまり。何度も確められる」
「そうした方でございますか」
「そうじゃ。石橋があれば」
その橋をどうするかというのだ。
「叩いて確めてからじゃ」
「そのうえで渡らせますか」
「その石の橋を」
「そうする奴じゃ。だからわしの話も聞いてじゃ」
そのうえだというのだ。さらにだ。
「そのうえでわしをその目で確かめてじゃ」
「盟約を結ぶかどうか決められる」
「そうされますか」
「そうする。ではわしはじゃ」
信長はどうするのか。それは。
「応じよう」
「会われますか、徳川殿と」
「この清洲で」
「うむ、会う」
家臣達にだ。不敵な笑みを浮かべて答えた。
そしてそのうえでだ。彼は言うのだった。
「それからじゃ」
「盟約を結ばれますか」
「徳川殿と」
「わしは既にそのつもりじゃ」
彼はもう決めていたのだ。家康と手を結ぶことをだ。
だがここはあえてだ。家康に乗るというのだ。
「浅井、そして徳川と手を結びじゃ」
「憂いをなくしたうえで、ですな」
「美濃の斉藤を攻める」
「そうされますか」
「美濃は必ず手に入れる」
このことは最早絶対のことだった。信長はこのことも既に決めていた。
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