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戦国異伝

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第四十九話 認めるその十二


 空中で激しい攻防が行われる。そしてそれは。
 着地してもだ。尚も続いていた。
 その激しいやり取りの中でだ。幸村はまた言った。
「こうして共にいるな」
「はい、常に」
「我等十人常に幸村様と共にいます」
「我等の主と共に」
「これこそがその証」
 共にいる、このこと自体がだというのだ。
「我等の絆はこの中で出来上がっているものよ」
「我等主従互いに切磋琢磨し合い」
「そのうえで絆も深めていく」
「そうした仲ですな」
「我等は生まれた時と場所は違う」
 幸村は十勇士達と戦いながらさらに話す。
「しかしそれでもだ」
「死す時は同じ」
「その場所もまた」
「そうだ。同じだ」
 まただ。そうだという幸村だった。
 そしてそのうえでだ。修業を続けだ。
 最後に双槍を大きく振るいだ。十勇士達を退けてから言った。
「我等の絆はそうしたものぞ」
「はっ、必ずや死す時と場所は」
「同じくしましょうぞ」
「そして次の世でもだ」
 どうかというのだ。この生の次の生はだ。
「我等は友ぞ」
 これが彼等の絆だった。彼等は主従であり義兄弟であるがそれと共に友であった。その絆を確かめ合いながらだ。今こうして修業を積んでいた。
 そしてそれが終わってからだ。彼等は。
 川で汗を流してからだ。井戸で冷やしておいた梨を喰らいながらだ。今度はこんな話をするのだった。
「いや、やはり修業の後の果物は別格ですな」
「全くでござる」
 穴山と由利がその梨を食べながら話す。
「こうして殿と共に梨を喰らうのもです」
「またいいものですな」
「梨だけではないぞ」
 その梨だけではないとだ。幸村もまたその梨を食しながら応える。
「西瓜や葡萄もじゃ」
「ああしたものもですな」
「我等と共に食するとですか」
「美味と」
「そう仰いますか」
「その通りよ。美味いものは一人で喰うより皆で喰う方がよい」
 こうだ。幸村は満面の笑顔で話す。
「そうじゃ。確かに暑い時に冷やした果物は美味じゃ」
「しかし一人で食してもその美味は限られている」
「左様ですな」
「その通りじゃ」
 まさにそうだとだ。幸村は霧隠と根津に応える。
「やはり皆で食してこそじゃ」
「いや、全くです」
「その通りでございますな」
 三好兄弟も梨を食っている。兄は豪快に、弟は礼儀正しくだ。それぞれ食している。
 そして今度はだ。望月と海野が話す。
「では殿、今日の修業はここまでにして」
「後は学問ですな」
「そうじゃ。御館様にお仕えするにが武だけではならん」
 この辺りが生真面目かつ熱い幸村らしかった。
「文もじゃ。わしは文でも至高を目指すぞ」
「我等は文までは無理ですが」
「殿はそれも目指されますか」
「あらゆることにおいて頂点を目指す」
 幸村は曇りのない目で筧と猿飛にも話した。
「御館様の為に」
「ならば我等は最高の忍を目指し」
「その力量で殿と共に生き」
「殿と共に死にましょう」
「うむ。必ずそうしようぞ」
 そうした話をしてだった。彼等は今は梨を楽しむ。そしてそれを食べ終わり身体を拭いてからだ。幸村は学問にも励む。まさに文武両道の漢だった。


第四十九話   完


                  2011・7・13 
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