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遊戯王GX ~水と氷の交響曲~

作者:久本誠一
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ターン2 河に吹く風との出会い

 クロノス先生に辛勝してからはや一週間。内心けっこう不安だったけど、めでたく届いた合格通知。…………いやまあレッドだけど!!お情けで入れてもらっただけみたいだけど!!そして来ましたヘリの上。これから入学式なのだ。

「祝、合格~♪」

『いや、まあいいんだけどさ…………一体いつまで浮かれてるつもりなんだ?』

「なに、ユーノ。せっかく僕が合格したってのに、少しくらい祝ってやろうとかは思わないの?」

『そりゃ祝ってやるのは別にいいさ。た・だ・し!毎日毎日毎日毎日一時間ごとに喜んでる奴の相手なんぞなんで俺が毎回やってやらにゃいかんのだ!?…………それともう一つ。受かったのはお前じゃない。俺たち、だ。そこ忘れんなよ』

「ねえ、ユーノ………」

『んー?今度はなんだ?』

「今の、言ってて恥ずかしくなかった?」

『やっかましいわ!!』

 あ、やっぱ恥ずかしかったんだ。はっはっは。とまあ、そんな感じでのんびりだべってたら、後ろから声をかけられた。

「あ、お前!確か俺の後に試験受けた奴だろ!」

 振り返ると、むっちゃ元気そうな見覚えのある顔があった。

『あ、十代さんだ。ってん?翔はいないのか?』

「えっと………確か110番、だったっけ?」

「おう、覚えててくれたのか!俺は遊城十代っていうんだ。よろしくな!えっと………」

「名前も知らずに声かけたのね…………僕は遊野清明。よろしく、遊城」

「別にいいぜそんな他人行儀なの。十代、で構わないからな」

「そう?んじゃよろしく、十代」

「ああ、こっちこそ!」

 そこに、息を切らせながら小柄な丸メガネの生徒が走ってきた。………いくら広いとはいえヘリの中で走るのはやめてほしいなぁ、口にはしないけど。

「ちょ、ちょっとアニキ、速すぎるッスよ~」

「清明、紹介するぜ。こいつは翔。俺らの同輩だぜ!」

「へ?あ、君はあの時の!丸藤翔です、よろしくッス!」

「翔、ね。了解。僕は|遊野清明《ゆうのあきら》だよ。これからよろしく」

「あ、そうだ清明!早速だけど、今からデュエルしようぜ!」

 はい!?なにこのトンデモブットビ論理。いや僕もデュエルは大好きだけど、さすがに今はマズいんじゃないだろか。どうせもうすぐ到着だし。でも、確かにあのHEROとはちょっと戦ってみたいんだよなあ…………。そんな風に困っていると、後ろから助け舟が来た。

「十代君に、清明君だね。ちょっといいかい?」

『今日は随分と、後ろから声をかけられる日だこった………お、三沢っちか。それにしても、デュエル脳って楽しいけど怖い』

「ああ、えっと?」

「………十代、この人知り合い?」

「翔、お前の知り合いか?」

「なんで僕に聞くんスか!?」

「えっと…………俺の名前は三沢大地。君たちの、あのクロノス先生を打ち破ったデュエルスタイルに興味があるのだが、話を聞かせてもらってもいいかな?」

「別に僕は構わないよー」

「俺のヒーローの話を聞きたいってことだろ?俺も構わないぜ」

「ありがとう、じゃあまずは………」

 この時の僕たちは思わなかったよ、まさかこの後島に到着するまで延々デュエル談義で大盛り上がりすることになるとは。あー楽しかった。十代も翔も三沢もいい奴だし。
 さ、校長センセのお話だ。














 ゆ、油断してた………ガクッ。

『退屈で精神的ライフポイントはとっくにゼロだな……… バタッ』

「同感…………鮫島校長、だっけ。これからは注意してないとね………」

 しかし先生の話ってのは、どうしてこうも長いんだろうか。ねえ?そんなことを考えながら、ぐったりした体を引きずるようにしてレッド寮のある場所に進む。一体どんな部屋だろうか。

『あんま期待しない方がいいぞー』

「え、どんな感じの寮か知ってるの!?」

 意外じゃないけど。ユーノって、常識的なところは時々抜けてるくせに妙に物知りなんだよなぁ。生前は何をやってたんだろ。

『普通の学生さんさ』

 あ、聞こえてた。

「そこの君、さっきから何をブツブツ喋ってるの?って言ってるみたい」

「『!?』」

 え、誰?別にそういうのは得意じゃないけど、気配を全く感じなかった。慌てて声の方を見ると、ニコニコと愛想よく笑っている女の子が一人。きれいな青髪を肩のあたりまで伸ばして、なかなかどうして可愛い。

「え、えっと………どちら様、ですか?」

「私?多分あなたとおんなじだよ、だってさ。それとも名前を聞いてるの?なら、あなたから言うものでしょう、だって」

「え?ああ、えっと、僕は遊野清明。今日入ってきたばっかの一年坊だよ。そっちは?」

「遊野君、ね」

「…………清明、でいいよ」

 わかり辛いし。遊野だけじゃ『どっちのだよ!』って近い将来なる気がしてならないもん。

「私の名前は|河風夢想《かわかぜむそう》、だって。夢想だけでいいよ~、だってさ。実は私も、今日入学したばっかりなんだ、って言ってるみたい」

「そ、そう………」

 それにしてもなんだろう、このちょいちょい違和感がある喋り方。そう思っていたのが顔に出ていたらしく、彼女はのんびりした笑顔のまま口を開いた。

「ちょっと気になる?ごめんね、これが癖なの。…………って言ってるよ」

 なんとなく把握。まあ、世の中いろんな人がいるんだってことだけはわかったよ。でもそれはそれとして、雑にしか聞いてなかったけど確か………

『その通りだな。女子は無条件でブルー寮入りするはずだからこんな所にいるはずないんだよな』

「(だよね。いまさらツッコむのも馬鹿らしいからなんも言わないけど)」

『それが正解だな。どうも伝統らしいし』

「それでさ、君にちょっとお願いがあるんだけど、聞いてもらっていいかな?って言ってるけど…………どう?いい……かな?」

「構わないよ」

『即答っ!?』

 可愛い女の子の頼みを断るほどの根性は欠片もありませんから。だいたい、上目づかいで頼んでくるとかもう反則でしょ。

「ありがとう!って、お礼を言ってるみたいだよ!」

『なっさけねえの』

 るっさい。夢想さn…………あー、夢想も喜んでるし、それでいいじゃないか。

「それじゃあ、早速デュエルしよう!だって!」

「よしきた!…………って、それが頼みごと?」

「うん!それじゃあ、デュエルだよっ!」

『|デュエル脳全開《バカ》がまた一人…………でもま、そこがこの世界の魅力ってやつか…………な?』





「「デュエル!!」」
 清明LP4000 夢想LP4000

「先攻は私からみたい。ドロー!」

 カードを引いた瞬間、めちゃくちゃ嬉しそうな顔をした。よっぽどいいカードでも来たんだろうか。

「私はまず、ワイトを召喚するんだって。それからカードを二枚伏せて………う~ん、永続魔法、弱者の意地を発動するみたい。これで、ターンエンドらしいよ」

 フィールドに仁王立ちする、青い衣のガイコツが一体。ワイト………ねぇ?

 ワイト
星1/闇属性/アンデット族/攻 300/守 200
どこにでも出てくるガイコツのおばけ。攻撃は弱いが集まると大変。

 弱者の意地
永続魔法
自分の手札が0枚の場合、自分フィールド上に存在する
レベル2以下のモンスターが戦闘によって
相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

『このタイミングで弱者の意地?とりあえず出しただけなのか、それとも伏せに何かあるのか、あるいはそれを考えさせるためのブラフか…………まだなんとも言えないな』

「(あ、今のだけでそんなに深く考えるものなの!?)」

『なんでその位考えねえんだよ!?』

 びっくりしたら怒られた。なにこの扱い。

「まあ、僕が悪いんだろうけど…………ドロー!ウミノタウルスを召喚、ワイトに攻撃!」

 召喚されたなんだかよくわからない見た目の青白い戦士が、二枚貝のような斧を振りかざして突っ込んでいく。

 ウミノタウルス
星4/水属性/水族/攻1700/守1000
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上の魚族・海竜族・水族モンスターが
守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

「悪いけど、手札を二枚捨てて罠カードを二枚発動、どっちもライジング・エナジーなんだってさ」

「うわっ!やっちゃった!」

『言わんこっちゃない………なるほど、ここまで読んでの弱者の意地か。それにしても、なーんであんな怪しいとこで攻撃するかねぇウチの馬鹿は。これがあれか?原作モブキャラの限界ってやつか?』

 ライジング・エナジー
通常罠
手札を1枚捨てる。発動ターンのエンドフェイズ時まで、
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力は
1500ポイントアップする。

 ワイト 攻300→3300

 ウミノタウルス 攻1700(破壊)→ワイト 攻3300

 清明LP4000→2400

 突っ込んでいった海の戦士の斧をひらりとかわしたガイコツが、お返しとばかりになんか物凄い気の力がこもったパンチを胴体に叩きつけると、ウミノタウルスが大爆発した。

『ファル〇ンパーンチ!!………ってか?攻撃力3300ってスゲーな』

 さすがのユーノも若干呆れ気味の声を漏らす。というか、やっぱり『あの』パンチに見えたんだ…………。

「それで、弱者の意地の効果で2枚ドローするんだってさ。他に何かある?」

「カードを一枚伏せて、ターンエンド…………」

 清明 手札:4 モンスター:0 伏せ:1
 夢想 手札:2 モンスター:ワイト 伏せ:弱者の意地

「うん。それじゃあ私のターン、ドローするみたい。う~ん、よし、ワイト夫人を守備表示で召喚、ワイトも守備表示にしてターンエンドにするみたいだよ」

 ゴゴゴゴゴッとボロボロの椅子が地面からせり上がり、そこに女物のドレスを着たガイコツが座っている。すると前からいたワイトが、そのゴージャス(?)なワイトに向かって慌ててひざまずく。

 ワイト夫人
効果モンスター
星3/闇属性/アンデット族/攻 0/守2200
このカードのカード名は、墓地に存在する限り「ワイト」として扱う。
また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
「ワイト夫人」以外のフィールド上のレベル3以下の
アンデット族モンスターは戦闘では破壊されず、魔法・罠カードの効果も受けない。

 ワイト 攻300→守200

『あーあ、ウミノタウルスが今いればなー。ボッコボコのサンドバックにしてやれたのになー』

 果てしない棒読みで嫌味を言ってくる。うわぁ、これは腹立つな。なまじ本当のことだけにタチが悪いよ、うん。

「僕のターン、ドロー…………よっしゃ、ドリル・バーニカルを召喚」

 宣言と同時にフィールド上に出てきたどでかいフジツボもどきから、ニョキニョキッといくつものドリルが生えてくる。

 ドリル・バーニカル
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻 300/守 0
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。
このカードが直接攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与える度に、
このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。

「……?その子の攻撃力なら確かにワイトの守備力より上だけど、ワイト夫人が突破できないと意味がないよ?」

「慌てなさんなって。そして魔法カード、アクア・ジェットを発動!対象はもちろんバーニカル!」

 アクア・ジェット
通常魔法
自分フィールド上の
魚族・海竜族・水族モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。

 ドリル・バーニカル 攻300→1300

『出た!清明さんのマジックコンボだ!!』
 
 外野がなんか言ってるけど、無視。無視ったら無視。

『無視すんなって…………しゃーないだろ、これ言うのがお約束なんだから』

 さいでっか。どーでもいいわそんなお約束。

「ドリル・バーニカルはダイレクトアタックに成功するたびに攻撃力が1000ポイントずつアップしていき、さらに自身の効果で相手モンスターがいてもダイレクトアタックができる!いっけ、ドリル・ハリケーn………」

『それ以上は言っちゃダメに決まってんだろ馬鹿!』

「………ごめん、ちょっと調子乗りすぎた。それじゃ素直に、ドリルアタック!」

 バーニカルの無数のドリルのうち一本が夢想の方を向いて超回転しながら発射され、盛大な音と共に命中した。

 ドリル・バーニカル 攻1300→夢想(直接攻撃)

 夢想LP4000→2700

 ドリル・バーニカル 攻1300→2300

「いよしっ、ターンエンド」

 清明 手札:3 モンスター:ドリル・バーニカル 伏せ:1
 夢想 手札:2 モンスター:ワイト、ワイト夫人 伏せ:弱者の意地

「私のターン、ドローしてワイトをリリースするんだって。来て、龍骨鬼」

 ワイトがガシャガシャッと崩れたかと思うと、その骨が再び組み合わさって大きな骨でできた鬼に姿を変える。サイズ違うけど質量おかしくね?とか言ってはいけません。

 龍骨鬼
効果モンスター
星6/闇属性/アンデット族/攻2400/守2000
このカードと戦闘を行ったモンスターが戦士族・魔法使い族の場合、
ダメージステップ終了時にそのモンスターを破壊する。

「龍骨鬼でドリル・バーニカルを攻撃するみたいだよ?」

「………残念ながら、何にも発動できるようなカードがないんだよねー」

 足元に散らばる骨の中から適当に一本取り出して投げつけた龍骨鬼に対し、ドリルを発射して迎え撃とうとするバーニカル。二つの飛び道具がぶつかり合って互いの威力を打ち消し合ったすぐ隣を二本目の骨が回転しながら飛んでいき、ドリルを発射した後の無防備な穴に突き刺さる。

 龍骨鬼 攻2400→ドリル・バーニカル 攻2300(破壊)

 清明 LP2400→2300

『ちょーっと押され気味だな』

 るっさい。それぐらい見りゃわかるわい。

「僕のターン、ドロー!………おっ」

『ふむ、使い方は任せる。どっちを選んでもプレミスっていうほどひどくないし』

 そう?なら、そうだな………。

「モンスターをセット、ターンエンド」

 清明 手札:3 モンスター:??? 伏せ:1
 夢想 手札:2 モンスター:龍骨鬼、ワイト夫人 伏せ:弱者の意地

「私のターンなんだって。ドローして…………う~ん、このまま攻撃するみたいだよ!お願い、龍骨鬼!」

 再び投げつけられる骨。それを受け、セットされたモンスターの姿が明らかになる。

「スノーマンイーターの効果発動!リバースした時、フィールド上のモンスター一体を破壊する!」

 スノーマンイーター
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻 0/守1900
このカードがリバースした時、
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。

 さて、普通に考えたら破壊するのは龍骨鬼。でも、ワイト夫人にはなかなかどうしてキョーレツな破壊耐性を味方に受けさせる効果がある。どっちにしようか………よし、決定。

「ワイト夫人を破壊する!」

 雪だるまを背負ったよくわからない獣がシャカシャカと相手フィールドまで駆けていき、ワイト夫人にガブリと噛みつく。それと同時にどういう仕組みなのかホーミングして追いかけてきた骨が雪だるまに突き刺さって動きを止める。

 龍骨鬼 攻2400→スノーマンイーター 守1900(破壊)

 ワイト夫人→効果破壊

「私のワイト夫人が………カードを伏せて、ターンを終わるんだってさ」

「ドロー!罠カード、リビングデッドの呼び声を発動!甦れウミノタウルス!」

 リビングデッドの呼び声
永続罠
自分の墓地のモンスター1体を選択し、表側攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

「そして、ウミノタウルスは水族モンスター…………シャーク・サッカーを手札から特殊召喚するよっと」

 地面に開いた魔法陣から勢いよく飛び出してくる、青白い肌の海の戦士。よくよく見ると、その頭ののっぺりした部分にはコバンザメがひっついていた。

 シャーク・サッカー
効果モンスター
星3/水属性/魚族/攻 200/守1000
自分フィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが召喚・特殊召喚された時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードはシンクロ素材とする事はできない。

「僕はこの二体をリリースして、青氷の白夜龍をアドバンス召喚する!」

『これをアド損とみるよーな世界にいたんだよなー俺………なんだか悲しくなってきた』

 青氷の白夜龍
効果モンスター
星8/水属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
このカードを対象にする魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、
自分フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を墓地に送る事で、
このカードに攻撃対象を変更する事ができる。

氷の翼を広げた、真っ青なドラゴンがフィールドに現れる。おお、かっこいいかっこいい。

「なら私は、ここでリバースカードの発動をするんだって。手札を一枚捨てて、サンダー・ブレーークッ!」

 サンダー・ブレイク
通常罠
手札を1枚捨て、フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。
選択したカードを破壊する。

 ビシッ!とポーズまで決めて、罠を発動する。でも、残念!ジグザグな軌道を描きながら飛んできて白夜龍に絡みついた雷を、あっさりと氷のドラゴンは振り払った。

「え…………?」

「白夜龍には、自身を対象にする魔法・罠を無効にする効果があるんだよっ!そのまま龍骨鬼に攻撃…………いっけぇー!」

 青白く光るブレスが、あっという間に龍骨鬼を飲み込んで消し去る。そして夢想のところにも、その余波が届いてダメージを与える。

「くっ…………!やっぱり強いね、だってさ」

 青氷の白夜龍 攻3000→龍骨鬼 攻2400(破壊)

 夢想LP2700→2100

「ありがとさん。僕はこれで、ターンエンド」

 清明 手札:2 モンスター:青氷の白夜龍 伏せ:リビングデッドの呼び声
 夢想 手札:1 モンスター:0 伏せ:弱者の意地

「私のターンだね。ここで逆転できないと、私の負け…………でも、まだ私は自分のデッキを信じるんだって言ってるよ!ドロー!」

 勢いよくドローして、そっとそのカードを確認する。さあ、一体何を引いたんだろう?なんだかこっちまでドキドキしてきた。

「ありがとう、私のデッキ!って凄く喜んでるみたいなの。お願い、ワイトキング!!」

 ドラゴンと向かい合い、自分の主人を守るように立ちふさがる骸骨の王。

 ワイトキング
効果モンスター
星1/闇属性/アンデット族/攻 ?/守 0
このカードの元々の攻撃力は、自分の墓地に存在する「ワイトキング」
「ワイト」の数×1000ポイントの数値になる。
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地の「ワイトキング」または「ワイト」1体を
ゲームから除外する事で、このカードを特殊召喚する。

『確か今の攻撃力は…………えーっと、ワイトが一枚にワイト夫人が一枚の二枚だから2000か。さあ、あのたくさんの手札コストの中で、一体何枚がワイトかな?』

 相変わらず楽しそうに解説してくれるユーノ。ホントに僕が負けてもいいって思ってるんだろうなぁ。

「今のこの子の攻撃力はね、まずフィールドから墓地に行ったワイトとワイト夫人、ライジング・エナジーのコストにしたワイト二枚、さらにサンダー・ブレイクのコストにしたワイトメアが一枚の、合計5000なんだよ!だって言ってるよ」

 ワイトメア
効果モンスター
星1/闇属性/アンデット族/攻 300/守 200
このカードのカード名は、墓地に存在する限り「ワイト」として扱う。
また、このカードを手札から捨てて以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●ゲームから除外されている自分の「ワイト」または「ワイトメア」1体を
選択して自分の墓地に戻す。
●ゲームから除外されている自分の「ワイト夫人」または「ワイトキング」1体を
選択してフィールド上に特殊召喚する。

「『って、あれ全部ワイトだったのかよ!?』」

 あ、ハモった。なんて言ってる場合じゃなーい!!

「ワイトキング、その綺麗なドラゴンに攻撃して!!」

 不気味なステップを踏みながら、ゆったりとこちらにやってくるワイトキング。そして次の瞬間、目に見えないほどのスピードで踊りだしたワイトキングが何が起こったのかわからないうちにきれいなステップの蹴りで白夜龍を撃破していた。え、なにこのメッチャ速いガイコツさん。

 ワイトキング 攻5000→青氷の白夜龍 攻3000(破壊)

 清明LP2300→300

「逆転だね。手札が一つあるからドローはできないけど…………。私はここでターンエンド、だって」

 くっ、かなりマズイな…………。攻撃力5000のワイトキングか。突破できる、かな?できるよね、きっと。

『できるな。とゆーかさ、仮にもデュエリストが一瞬でも弱気になってどーするよ?正直に言うとな、俺は前世では弱い方だった。けど、少なくとも諦めたこたぁ一回もないぜ?』

 おお…………なんかかっこいいな。でもそうだよね、ここで勝負捨てるわけにもいかないか。

『まあ、俺のデッキの場合ピンチの時になると魔宮の賄賂ドロー率が跳ね上がるんだけどな』

 聞きたくなかった!そこ凄く聞きたくなかった!!

『いやいや、ちょっと考えてみろ。いいか、残りライフ800でフィールドもカラ、手札も事故ってる状況でのラストドロー!であの賄賂のおっさんのドヤ顔がこっちを見てくる状況ってどうだと思う?正直俺は泣きたくなります』

 限りなくどーでもいいよ!

「…………?どうしたの、って聞いてるんだけど」

「あ、ああゴメン…………ド、ドロー!」

 魔宮の賄賂じゃありませんよーに魔宮の賄賂じゃありませんよーに魔宮………

『わーいろ!わーいろ!わーいろ!わーいろ!わーいろ!わーいろ!』

 るっさいわ。えっと、何を引いたかな?…………!!!!



































 魔宮の賄賂「やあ」



































 そんな幻聴が聞こえた気がした。

「ターン、エンド…………」

「じゃあ私のターン、ワイトキングで攻撃!だよ!」

 そして空っぽのフィールドをワイトキングが爆走しながらこっちに近づいてきて、吹っ飛ばされて…………。

 ワイトキング 攻5000→清明(直接攻撃)

 清明LP300→0

 デュエルの終了と同時に、ソリットビジョンも消えていく。負けた、か。そしてちょっとわかったユートの気持ち。こりゃ泣きたくもなるわ…………。

「ありがとう、清明。私も危なかったよ、だって」

「いやいや、こっちこそありがと。帰ったらデッキ調整だなー」

 魔宮の賄賂は二枚積みから一枚積みにしよう。絶対に。

「あ、それなんだけどさ。もう一つだけ、お願いなんだけどいいかな?って頼んでるんだけど…………どう?」

 はて、まだ何かあるんだろうか。まあ、別にデッキは後でもいいし断る理由もないか。

「別にいいけど、何?」

「えっと…………」

 ちょっと目をそらしながら口ごもる夢想。

「その…………恥ずかしいんだけど…………私、今迷子なのっ、て言ってるみたい。だから、その…………ブルー寮まで案内してくれるかな?なんて…………」

 結論。ただの迷子さんでした。ちなみに同じころに十代が万なんとかってブルー生徒とデュエルしてたらしいけど、それはまた別の話。 
 

 
後書き
ここでいきなり一回負けちゃう。そしてヒロイン、河風夢想登場の巻。
ちなみに彼女のデッキ、いくつか他にも候補がありました。

ユーノ(以下ユ)「ほう。ちなみにどんなんだ?」
作者(以下作)「まずはセイクリッドに大皇帝ペンギン、デビルツムリあたりを入れたその名も【星の戦士団】」
ユ「かなり前にやってた某アニメを見てた人でないとわかんないようなネタをどうもありがとう」
作「ちなみにやめた理由は切り札の桃色玉なモンスターでちょうどいい奴が見つからない&デビルツムリはさすがに無理がある&セイクリッドの回し方が今一つわからない」
ユ「駄目駄目だな」
作「後は【マドルチェ】。これはひねりがなさ過ぎるので却下」
ユ「ふんふん。まあいろいろ言いたいこともあるがとりあえずパス。他には?」
作「一番の自信作が【ハグルマ】。カラクリとギアギアの展開力でモンスターを揃えて、サクサクっと古代の機械巨人を出したりする歯車のついた三テーマを混ぜ合わせたデッキ」
ユ「歯車…………ゼンマイは犠牲になったのか…………」
作「ネジマキシキガミも入れるつもりだったもん。後、丸藤兄弟にクロノス教諭、挙句の果てには万条目(VWXYZ)に鮫島校長…………これ以上メインキャラを機械族で固めたくないし」
ユ「いや、だったもんって。で、なんで選んだのが【ワイト】なんだ?」
作「【ワイト】じゃないな」
ユ「…………どこが?」
作「まあ今回だけ見れば【ワイト】なんだけどね。正確には龍骨鬼を始めとする骨のモンスターばかりを集めた【ガイコツ】だっ!」
ユ「なあ作者や。とりあえずヒロインって言葉の意味を辞書で引いてから出直してきやがれくださいこのアホ」
作「いやいや、イラストで差別しちゃダメだよ?カッコいーじゃん」
ユ「確かに否定はせんけどさ。…………ま、いっか。ところで、結局なんでその【ガイコツ】にしたんだ?」
作「…………動かし方が単純明快で楽だしこんがらがりにくいから」
ユ「えーかげんにせいこのダメ作者っ!」

…………ということです。何も言わないでください。今の腕じゃこれくらいが限度なんです。
では、また次回で会えることを願って。
ちなみに魔宮の賄賂に関するくだりは全部実話。それと、活躍させられんでごめんよシャーク・サッカー。ホントならワイトキングを渾身の一撃(魔法カードの方ね。念のため)でぶち倒す予定だったんだけど…………ネタに走ってしまったんだ(汗)。 
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