久遠の神話
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第十二話 一人ではないその十
「広瀬さんですか」
「今俺が知っている剣士の中であいつだけは戦おうっていうからな」
「ですよね。ですからここにもいませんよね」
「まああれだ」
「あれとは?」
「色々な奴がいるってことだよ」
こうだ。中田はここであえて軽い調子になって言ったのである。
「世の中ってのはな」
「色々な人がですか」
「そうだよ。俺は剣を持たない奴とは戦わないよな」
「はい」
「そして君は剣士とは戦わない」
上城自身にも言う。その彼にもだ。
「そして自衛隊の人も警察も人もな」
「俺達は最初から決まっている」
「それはね」
工藤と高橋もそのことははっきりとしていた。既に。
「戦いを止める」
「正直言って何にもならないからね」
「まあ考えはそれぞれでもな」
中田はさらに言う。
「戦わないって考えの奴と戦うって奴がいるよな」
「それならですか」
「そうだよ。だからあの御仁はここにはいない」
「一人ですか」
「一人だな」
実際にそうだと述べる中田だった。
「孤独でも戦うか。まあそれもな」
「それもですか」
「道っていうか生き方なんだけれどな」
「生き方ですか」
「ああ、生き方だよ」
中田は否定はしなかった。それはだ。
「それだよ」
「生き方ですか」
「そいつの生き方を否定するってのは傲慢なんだよ」
「よく言われますね」
「俺は傲慢ってのは嫌いなんだよ」
それは右手を軽く振って一蹴した感じだった。
「偉ぶっても何にもならないさ」
「だからですね」
「ああ、そうなんだよ」
こう言うのである。
「全くな。なら俺もな」
「戦いますか」
「ああ、あいつとは戦う」
確かな目になってだ。彼は言うのだった。
「絶対にな」
「そうですか」
「まあこの話はそれ位にして食おうな」
実際にパスタを飲み込んでからの言葉だった。
「どんどんな」
「そうですね。時間置いたらのびますし」
「それなら」
「ああ、デザートもあるしな」
中田は笑ってこのことも話した。
「ちゃんとな」」
「デザートもあるんですか」
「それもですか」
「後で洋梨切るからな」
つまりそれがデザートだった。
「それも食うよな」
「いいですね。洋梨ですか」
洋梨と聞いてだ。上城は笑顔になって述べた。
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