久遠の神話

「俺は剣士同士での戦いでもそうさ」
「剣を持った相手でなければか」
「戦わないさ」
　また言うのだった。
「それが俺のポリシーなんだよ」
「君の考えはわかった」
　そこまで聞いてだ。広瀬は一旦頷いた。
　それからだ。今度は彼自身のことを話すのだった。
「だが俺はだ」
「あんたはか」
「目的の為にはだ」
「相手が剣を持っていなくてもなんだな」
「剣士なら戦う」
　そうするというのである。
「俺はそうだ」
「剣士なら剣は何処でも出せるしな」
「だからだ」
　それもあってだというのだ。
「俺は戦う」
「彼女と一緒になる為にか」
「あの娘が生きる為に」
　その為にだと。その言葉が強くもなる。
「俺はそうする」
「それも考え方だよな」
「否定されようとも構わない」
「あんたはそうするんだな」
「既に決めていることだ」
　広瀬の中でだ。既にだというのだ。
「俺は剣士として。彼女を救う」
「で、俺ともあの子ともか」
「戦う」
　まさにそうするというのだ。
「それが俺の考えだ」
「あんたの考えはわかったぜ」
　中田は広瀬の言葉を聞いたうえで述べた。
「それじゃあ俺もな」
「君も戦うのかな」
「あんたが剣を持っているのならな」
　まさにだ。そうするというのだ。
「俺のポリシーでな」
「そういうことか」
「そうするさ。それじゃあな」
「今ここでは戦わないのか？」
「ああ、それもありだよな」
　彼の言葉を受けてだった。中田は笑みを浮かべてだ。
　そうしてだ。剣を出そうとする。だがここで。
　聡美がだ。こう彼等に言った。
「あの、ここではです」
「人目につくっていうんだな」
「ですから今は」
　こう言ったのである。二人を気遣う顔で見ながら。
「お止め下さい」
「そうだな。俺は八条大学の学生だ」
　広瀬もだ。聡美のその言葉に応えて述べた。
「乗馬部の部員だ」
「そうですね。それならです」
「馬は戦いを嫌う生き物だ」
　広瀬はこんなことも話した。
「では止めておこう」
「ああ、そうするんだな」
「俺も何時でも戦う訳じゃない」
「特に好戦的っていうんじゃないのか？」
「必要だから戦う」
　広瀬は実に割り切った感覚で答えてみせた。
「それだけだ」
「そうか。それだけなんだな」
「俺の話はわかったか」
「一応な」
　そうだとだ。広瀬は今度は素っ気無く答えてだ。
　それからだ。中田だけでなく聡美に対しても告げたのである。
「また次の機会にだ」
「ああ、戦おうな」
「そうされるんですね」
「少なくとも君には関係ないんじゃないかな」
　広瀬は聡美にはこう返した。
「戦う訳じゃないんだろう？」
「はい、私は剣士ではありません」　
　聡美自身もそのことははっきりと答える。彼女自身は剣士ではないと。