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久遠の神話

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第十話 偶発戦その二


 そしてだ。ヒドラの兄弟であるオルトロスもだというのだ。
「そういうことですよね」
「そうだな。兄弟ならな」
「同じ様な力を持っていても不思議じゃないですから」
 だからだとだ。高橋は言った。
「こいつは」
「首は二つだがな」
「そのそれぞれが不死身なんですね」
「どうするかだな」
 戦いながらだ。工藤は言う。
「こいつを」
「ええ、首を切っても駄目なら」
「身体だ」
 工藤は言い切った。ここで。
「身体を狙うか」
「胴体をですね」
「そう。とりわけだ」
 工藤は見た。オルトロスのその身体を。 
 身体は動いてはいない。首だけが伸びている。
 その身体のだ。特に。
「心臓だ」
「心臓ですか」
「首が駄目なら心臓を狙う」
 これが工藤の判断だった。
「そうするぞ。いいな」
「そうですね。どんな化け物でも心臓を潰せば」
「それで死ぬ。死なない化け物なぞいない」
 例えだ。首が切れて動いてもだというのだ。
「だからだ。それで行こう」
「ええ、じゃあ」
 高橋はここで剣を右から左に大きく振った。怪物の首はそれをかわす。かわしたそこに隙が出来た。彼はその隙が出来るのを狙っていた。
 その時にだった。剣をだ。
 一気に前に出してだ。剣身から雷を放った。それでだ。
 怪物の身体、心臓を狙う。そしてそれは。
 工藤も同じでだ。彼は。
 無数の先が尖った岩をだ。怪物に放ったのである。二人のその攻撃が。
 首を動かし攻めることに夢中だった怪物の胸を打った。それで決まった。
 怪物は雷と岩に身体を打たれた。それによって。
 怪物はその身体をゆっくりと崩れさせ倒れたのだった。
 その身体が消えて後に残ったのは。黄金だった。その黄金を見て工藤は言う。
「終わったな」
「はい、やけに呆気なかったですね」
「そうだな。まるで」
「まるで?」
「今の怪物は囮でだ」
「囮ですか」
「本体は別にいるのではないのか」
 こうだ。彼は考えたのである。
「そう思えるな」
「本体は別に」
「考え過ぎかも知れないがな」
 とはいってもだった。彼はだ。
 周囲を明らかに警戒し。そして言った。
「いるな」
「ですね。俺も感じました」
 高橋も工藤のその言葉に頷く。
「近くにいますよ」
「そうだな。そして」
「ええ、そして」
「来る」
 工藤は言った。その瞬間にだ。
 二つの首が来てだ。二人を襲った。それをかわしてだった。
「やはりな」
「ええ。さっきのは分身ですかね」
 上に跳びそこから着地してからだ。二人は話す。
「俺達が倒したのは」
「黄金の数は」
 先程倒した怪物の残した黄金は。僅かだった。普段に比べて。その数をあらためて確認して身体。工藤は高橋に対して述べた。 
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