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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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勇者の盾

<メルキド>

ここはメルキドのとある集合住宅の一室…
アルル・アメリア・ビアンカの3人が、不機嫌極まりない表情で仁王立つ前で、バツが悪そうに佇む1人の女性の部屋だ!

「あ、あの…機嫌を直して貰えませんか?これじゃ話も出来ないのですか…」
優等生のティミーが状況を打破すべく、不機嫌な女性達に対し機嫌を直すよう促す。
「………ティミー……分かってるの?私はババアって言われたのよ!子供を産んだ女はババアって!」
「そうよティミー君…私もビアンカさんも、競争率の高い夫の為に、日夜努力して美貌を維持しているのに、ババアって言われたんですよ。許せると思いますか!?」
流石のティミーも地雷を踏んだ事に気が付き、父へ助けを求めるように視線を向ける。
しかしリュカも、ご立腹女性の1人に妻が居る事で、下手な口出しが出来ずにいるのだ。

「俺だったら出産をした女性を前にして『ババア』なんて言えないね!きっとフィリさんもそうだと思いますよ。お二人とも若くて美しいから、子持ちだとは思えなかったんですよ!若くて美しすぎるから、間違えて口から暴言が出てきちゃったんですよ!」
リュカですら口を噤むこの状況に、ウルフが力一杯フォローの台詞を炸裂させる。

「良い子ねぇ~ウルフ君は!」
ウルフの言葉に機嫌を直したビアンカが、彼の頭を抱き締めながら囁く。
「本当…貴方は若いのに、女心を解っているわ!」
アメリアも機嫌を直したようで、ビアンカから奪うようにしてウルフを抱き締める。

「「ちっ!」」
真の権力者達の機嫌が直ったので、露骨に態度には表さないが、男性陣がウルフに対して舌打ちをした。


「さて…お姉さん!オルテガさんとはお知り合いのようですが、何処へ行ったのかご存じありませんか?」
美女2人から彼氏を取り返すべく、一生懸命ウルフの腕を引っ張り引き寄せようとするマリーが、事態を進める為にフィリに対し質問を投げかける。
「いえ…今どこに居るのかは………でも以前この町に来た時に、魔の島へ渡る方法を探しているって言ってたの!その時は収穫無しだったけど…私がその後で情報を集めたのよ!この町の南端に住んでいるジイさんが知っているらしいの!オルテガ様にその事を伝えたいのよね…何処に居るのかしら?」

「やはりオルテガさんは『魔の島』へ渡る正しい方法を入手して居らず、強引な方法で『魔の島』への上陸を決行する様ね…つまり、己の肉体への負担を顧みず、泳いで魔の島へ行くつもりよ!」
マリーは自分が導いた推論を披露する。
「…すげーなアルルパパは!」
マリーの推論を聞いたリュカは、肩を竦めながら呟いた…
「き、危険よ!止めないと!!」
「そうよ…早く止めないとオルテガが!!」
アルルとアメリアは顔を青くしてオルテガの身を案ずる。

「いや…止めようにも、今現在何処にいるのか分からない事には…それに既に手遅れかもしれないし………今僕等に出来る事は、少しでも早く魔の島へ行く方法を入手する事だよ!」
取り乱す一同を余所に、冷静に状況判断を下し対策を提示するリュカ。
「な、何言ってるんですか!?このアレフガルドの海を見た事ないんですか!?太陽がないから真っ暗で、方向感覚も無くなり、水温は極寒と言っていいレベル…尚かつ、魔の島近海では常に波が荒れており、泳いで渡る事など不可能なんです!」
リュカの冷静な判断に、発狂しながら事態を説明するフィリ。
そんな彼女の所為で、余計に血の気が引くアルルとアメリア…

「いや…魔の島に渡るだけなら、不可能ではない!問題なのは上陸した後なんだ!」
「じょ、上陸した後って…どういう事ですか?」
父の身に対する不安で声も出ない彼女の為に、ティミーが代わりにリュカへと問いかける。
「うん。僕もラダトームに居た時に魔の島方面の海域を見たよ………暗くて方向感覚が無くなるって事だけど、目的地のゾーマの城に多少の明かりが見えるからね…方向感覚はなくならないだろう…」
そうなのだ…ラダトーム城の最も高い場所へ登れば、魔の島のゾーマ城を微かに目視する事が出来るのだ。

「し、しかし…水温はどうします?とても泳ぎ切れないと思いますが!?」
「オルテガはメラを使えるんじゃね?」
リュカはティミーの疑問には答えずに、妻のアメリアに質問を投げかける。
「え、えぇ…確か使えましたけど…」
「じゃぁ大丈夫だよ!メラを体中に纏わせれば、ギリギリ泳ぎ切る事が出来るはず…」

「メ、メラを纏わすって…どういう?」
「エジンベアでビアンカが見せたろ。両手にメラの炎を纏わして、生意気な門兵を脅かしたじゃん!…アレを体全体で行えばいいんだよ!」
つまり…海水で炎は消えてしまうが、メラを出し続ければ自分の周囲だけは、ある程度の温度で保てると言うのだ。
「で、でも…上手くいくでしょうか?」
「そんなの分からないよ!でもオルテガは、その方法で渡る事を決意したんだと思うよ」

「なるほど………では、父さんの意見ではオルテガさんは既に魔の島へと渡っていると?」
「いや…それは分からない。泳ぐにしたって可能な限り最短距離にしたいはずだから、場所の選定中だと思うね…ただ、泳ぎ出す前に僕等がオルテガを見つける事は時間的にムリだと思う!それよりも彼が泳ぎ切る事を信じて、僕等は正しい魔の島への渡り方を探しだそう!」
リュカの言葉に、顔面蒼白のアルルとアメリアも取り乱す事だけは回避した。
今は何をすれば良いのかを理解したから…
ティミーはそんな彼女を見て、父との差を思い知るのだ…

多数の情報を纏め上げ、現在の状況と参照し、1つの答えを導き出す。
父の言う『思考を柔らかく』とは、こう言う事なのだろう。
それが分かっていても近付く事が…追い抜く事が出来ないティミー。
「では父さん…『問題なのは上陸後』と言ってましたが、それはどういう事なのでしょうか?」
だが落ち込んでもいられない彼は、父が言っていた『上陸後』の事を尋ねてみる。
「うん。今言った方法で魔の島へ渡ると、体力・魔法力共に著しく低下した状態で、敵本拠地の強烈な敵達と戦わなきゃならないんだ…勿論、敵に見つからない様に何処かで体力回復を図るとは思うけども、完全回復は出来ないだろうから…これはとっても危険だよ!」

リュカの言葉に皆が沈黙する…
するとフィリが部屋の奥から何かを持ち出してきた。
「あの…可能な限り急いで魔の島へ急行して下さい!そしてオルテガ様を助けて下さい!!…これは以前、私の部屋に泊まった時に忘れていったオルテガ様の盾です!その時は忘れ物だと思い、次に来た時に持ち帰るのだと思ってましたが…そちらの方の仰る事が正しければ、(これ)はワザと置いていったのだと思います。泳いで渡るのに、この盾は邪魔ですから………だ、だから貴女達にお渡しします!この盾は『勇者の盾』と言うそうです…オルテガ様がラダトームの北にある洞窟で見つけたそうです」
フィリは瞳に涙を浮かべながら、盾を娘のアルルへと手渡した。

アルルは受け取った盾を装着する…まるで彼女の持ち物だったかの様に、腕にフィットしキレイに収まった。
「あ、ありがとう…必ず父(オルテガ)を無事に連れ帰ります!」
アルルは新たな決意を胸に、父が残した盾を見つめ力強く頷いた。

そして一行は、先程フィリが言っていた『魔の島』へ渡る方法を知っている老人の所に赴くのだ。
少しでも早く、魔の島へ…(オルテガ)の下へ辿り着く為に!



 
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