戦国異伝
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第四十二話 雨の中の戦その十一
それを話してだ。その中央にいる者は話すのだった。
「あの程度では駄目だった」
「では今度は余計にですか」
「込んだ策を仕掛ける」
「そうされるのですね」
「仕掛ける時はだ」
その時がだ。来たらというのだ。
「そうする」
「そしてあわよくばあの男を始末する」
「そういうことですね」
「その通りだ」
中央の声が言った。
「まさにだ」
「左様ですか」
「その都度仕掛けてそのうえで」
「あの男を常に害していく」
「そうされるのですね」
「あの男、織田信長はだ」
彼はどうかというのだ。彼等は闇の中から彼を見ていた。その青の者をだ。
「必ずや我等の害となる」
「闇をも滅ぼしますか」
「そうしますね、確かに」
「あの男は」
「あの男の青は木の青だけではない」
青といっても様々だというのだ。五行の木だけではないというのだ。
「あれは蒼天でもあるのだ」
「蒼天の青ですか」
「あの青はそれでもあるのですか」
「まさにそれですか」
「天の青ですか」
「蒼天、即ちだ」
その天が何かも話されていく。
「大輪だ」
「日ですか」
「即ち光ですか」
「どの家も天下を手中に収めれば我等の害となる」
それはだ。絶対だというのだ。
「それは武田であっても上杉であったも同じだ」
「色を司る家はですね」
「それぞれ我等の害となります」
「闇と色は相容れないもの」
お互いにだ。闇と色、即ち光はというのだ。
闇と光は対立するものだ。そしてその中でもだというのだ。
「あの男は日輪だ」
「闇を消し去る日輪ですね」
「まさにそれですね」
「あの男は」
「だからこそだ」
日輪であるならばだった。闇の中で話されることは。
「あの男はとりわけ何とかしなければならない」
「我等闇の為に」
「我等が栄えこの国を動かす為に」
「そしてこの戦乱を続けさせる為に」
「その為にですね」
「左様、あの男は邪魔だ」
信長は彼等にとってはだ。まさにそれなのだった。
「機会があれば消す」
「その然るべき策の前にも」
「その前にもですね」
「そうだ。あの男は消す」
信長はだというのだ。
「何としてもだ」
「畏まりました。それではです」
「我々もまた」
「そうさせて頂きます」
「話は決まりだな」
ここで、であった。
「では。今はだ」
「隙を見つつ様子を見てですね」
「闇に潜む」
「暫しの間」
こんな話をしてだった。彼等はその闇の中に潜むのだった。
桶狭間の勝利は信長に多くのものをもたらすものだった。だがその全てが何かをだ。信長は知ることはできなかった。彼といえどもだ。
第四十二話 完
2011・5・18
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