真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第87話 電波少女と眼鏡委員長 後編
私は程立に烏桓族を討伐する目的を話しました。
「ふむ、ふむ、烏桓族と交易ですか~。劉将軍、烏桓族との交易で得られる物なんてあるんでしょうか?」
程立はアメを舐めながら言いました。
「私も同感です。恐れながら申し上げます。劉将軍、烏桓族と交易をしても大した物は得られないと思います」
郭嘉も合点がいかない表情をしています。
「烏桓族と交易をすれば馬、羊毛が手に入るだろう。それに交易が主目的ではない。彼らと経済的な関係を築くことで争いを緩和するのが主目的だ」
本当の私の目的は烏桓族、鮮卑族を使って、幽州より北の場所から硫黄を精製するための黄鉄鉱を運ばせるのが目的です。
長沙郡の当たりにでも黄鉄鉱が採れると思いますが、あそこはいずれ孫堅が大守になります。
それに長沙郡から黄鉄鉱を運ぶのは骨が折れますし、孫堅に目を付けられても困ります。
「伏儀図」、「神農本草経」の模写が終わり次第、真桜に渡すので、材料さえ揃えれば硝石と硫黄を精製でき、火薬の大量生産が可能になります。
烏桓族を武力で威圧して私と同盟を結ぶのを手始めに、鮮卑族とも同盟を結ぶつもりでいます。
程立と郭嘉はまだ私の家臣ではないのでこのことは伏せる必要があります。
「ふむ、ふむ、そうなんですか~」
程立は私を凝視してアメを舐めながら言いました。
「兄ちゃん、それマジな話なのか? 嘘臭くて、プンプン臭うぜ」
程立の頭に乗っている宝慧が言いました。
「そうですね~。宝慧の話も最もなのです」
「風、劉将軍に無礼じゃないですか」
郭嘉が程立に注意をしました。
「稟ちゃん~、違うのですよ~。先ほどの発言は宝慧が言ったのです」
程立はアメを舐めるのを止め、自分の頭の上の人形を指差しながら、私を凝視していました。
「何故、私が嘘を言わなければいけない」
私は表情を変えずに淡々と言いました。
「劉将軍、風は少し変わり者でして、無礼の段、お許しください」
郭嘉は私に頭を下げ、謝りました。
「戯志才、気にすることはない」
「劉将軍、ありがとうございます」
郭嘉はホッとした表情で言いました。
「まあ、良いのですよ~。最終的に烏桓族と交易を行うということが分かればいいです」
程立は郭嘉を見ながら言いました。
「劉将軍、烏桓族を討伐するには、元中山郡大守の張純を殺すのが最良です~」
「張純が死ねば、青,徐,幽,冀の四州での烏桓族による略奪行為は当面押さえることができるということか?」
「そうなのです~」
「進出機没の烏桓族をどうやって捕捉する」
「捕捉する必要はないのです。烏桓族に張純を殺させるのですよ~。張純の首に恩賞を掛ければ喜んでやると思います」
「そんなに上手くいくものなのか?」
同じことを劉虞がやっていましたね。
「足下を見られるかもしれないですね~」
「私は烏桓族に対し下手にでるつもりはない」
私は程立にきっぱりと言いました。
程立の案ではどの位の金が必要か見当がつきません。
劉虞はどの位の金を使ったのでしょう。
「確か、烏桓族には大人が4人いる。規模が大きいのは上谷郡の難楼率いる9000、遼西郡の丘力居率いる5000。後は、規模は小さい遼東郡の蘇僕延率いる1000、北平郡の烏延率いる800。私の討伐目標は上谷郡の難楼であり、上谷郡の烏桓族を徹底的に叩き潰す。漁陽郡,広陽郡,代郡,雁門郡にも烏桓族が居住しているが、彼らは漢に対して友好的なので、無視して構わない」
私は烏桓族への見せしめとして、最大勢力を誇る上谷郡の烏桓族を討伐することに決めました。
「劉将軍、烏桓族は黄巾賊とは全然違いますよ~」
程立はアメを舐めるのを止め、溜息を付きました。
「そんなこと言われずとも分かっている。烏桓族に無策で挑むほど馬鹿ではない」
私は程立の瞳を見ながら言いました。
「烏桓族について、随分とお詳しいので変に思っていましたけど・・・・・・。そういう訳ですか。劉将軍の中では滅ぼすための方策は既に出来上がっているのではありませんか?」
程立は真剣な表情で私の瞳を凝視しました。
「私は勝利を確かな物にしたいだけ。だから、お前達の意見を聞きたいのだ。程立、お前が張純を烏桓族に殺させるように献策したのは、私に烏桓族を滅ぼすだけの力がないという前提だろう。確かに、私が与えた情報の中で導き出したお前の献策は最良なものだと思う。程立、約束通り、お前を従事中郎に任ずる。烏桓族討伐で参謀として従軍してくれないか?」
「劉将軍、即断されてよろしいのですか~?」
程立はアメを舐めながら言いました。
「お前の才は見て決めたのだから、即断だろうと後日であろうと関係ない」
「そうですか。でもですね~、官職をお引き受けして、従軍した場合、劉将軍は私を無事に解放して下さるのですか?」
程立はアメを舐めるのを止め、口元に笑みをうかべ言いました。
「程立、お前の想像している通りだ。従軍は強制ではない。嫌なら鉅鹿郡で文官仕事をしているといい」
私は程立の同じく口元に笑みをうかべ言いました。
「劉将軍は意地悪な方なのですね~。ふふ、良いのですよ~。従事中郎の官職を謹んでお引き受けいたします。私の真名は風なのですよ~」
程立は私の顔を興味深そうに見ると、拱手をして言いました。
「そんなに即断しても良いのか~。烏桓族討伐まで、まだ間がある。ゆっくり考えても良いのだぞ」
「劉将軍と同じ理由です。あなた様が烏桓族を如何に討伐するのか興味があるのです~」
風はアメを舐めながら言いました。
「私の真名は正宗だ」
「正宗様、謹んで真名を預からせていただきます~」
「さて、戯志才。次はお前の番だ。私は烏桓族討伐までに、彼らの機動力と互角に争えるだけの騎兵を用意できるという前提で策を献策してくれないか? 先ほど私がお前達に言った烏桓族の情報も加味にしてくれて構わない」
私は風から目を放して、郭嘉の方に向き直り言いました。
「はあ、風に一番美味しいところを持っていかれたような気分です」
郭嘉は深い溜息をしました。
「劉将軍、上谷郡の烏桓族を討伐するとなると、北平郡・遼西郡の各烏桓族から援軍が来る恐れがあります。特に、北平郡は目と鼻の先なので後背を突かれる恐れが有ります。郡大守の騎兵は精強と呼び声が高いので、烏桓族の援軍に備え、防備を備えていただくのが良いかと思います。それと、漁陽郡,広陽郡,代郡,雁門郡の烏桓族にも上谷郡の烏桓族討伐の助力を頼むべきかと。助力と引き換えに交易の話を持ちかけては如何でしょう。助力を得ることが出来た烏桓族には張純討伐をご命じになれば良いかと思います」
郭嘉は自信に満ちた表情で私に言いました。
「戯志才、見事な策だ。お前の策を採用しよう。約束通り、お前を従事中郎に任ずる」
私は郭嘉に官職を与える旨を伝えるとひと呼吸置きました。
「戯志才、お前は烏桓族討伐で参謀として従軍してくれるか? 私と風の会話で分かると思うが、私の烏桓族討伐の秘策はあまり人の目に晒すつもりはない。だから、従軍を無理強いするつもりはない」
「劉将軍、お詫びせねば成らぬことがございます」
私が言い終わると郭嘉は表情を暗くして私の顔を見て言いました。
彼女は従軍を拒否するつもりでしょうか?
でも、郭嘉はそんな素振りを見せませんでしたが・・・・・・。
・・・・・・。
分かりました!
「戯志才、私に偽名を騙っていたことか?」
「・・・・・・分かっておられましたか」
「偽名を騙るなど、大したことではない。私もお前を試したのだ。お互い様だろう」
私は郭嘉に微笑みました。
「お許しいただけるのですか。私の本当の名は郭嘉、真名は稟と申します。従事中郎の官職と従軍の件は謹んでお引き受けいたします」
郭嘉は私の言葉を聞いて笑顔になり、拱手をして応えました。
「稟、私の真名は正宗だ。これからよろしく頼む」
「はっ!」
「風、頑張るのですよ~。それと正宗様、烏桓族討伐の秘策を教えてくださいね~」
風は私の顔を見てニヤリと笑いました。
上手く烏桓族を取り込むことに成功したら、彼らを使って幽州遼東郡を私の影響化に置くつもりです。
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