蒼き夢の果てに
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第4章 聖痕
第31話 夢の世界へ
前書き
第31話を更新します。
……えっと。ここは何処でしょうか?
少しボケた頭を振りながら、周囲を見回してみる俺。
やや弱々しい夕陽に、少し冷たい……そして物悲しい紅に染まった風景……。
記憶の彼方に存在するような、何処かで見た事が有る道。
懐かしい思い出を喚起するような、何処かで見た事が有る街並み。
紅く染め上げられた酷く虚ろな空間の中心に、ぽつんと一人残された俺。
何故だか記憶を刺激する風景なのですが……。
そう、まるで、夢の中で見た事が有るような曖昧な記憶……。
……夢?
そう言えば、誘いの香炉と呼ばれていた魔法のアイテムを見ていた時に、その香炉に残っていた微かな灰のような物が飛び散った瞬間、意識が途絶えて……。
ここは、俺が作り上げた夢の世界と言う事なのでしょうか?
確かに、夢の作り上げた世界と言われたら、そうなのかも知れないのですが……。
しかし、俺の心が作り上げた世界が、何故にここまで物悲しい雰囲気なのでしょうか。
物悲しさを覚える夕闇迫る故郷の景色。何処かから、学校から、友人の家から、仕事先から家に帰る道を思い出させる時間帯とそれに相応しい風景。ただじっとその場に立って、夕闇迫る街を見ているだけで涙があふれて来る。そう言う景色。
確かに、日本人の原風景の中には確実に存在している世界だとは思うのですが……。
但し、この世界に漂う寂寥感を生み出している物の正体は判っています。
それは、この世界の登場人物が俺一人だけですから。
見た事が有る街並み。そして、幼い頃の記憶を刺激する世界の中に登場する、たった一人の登場人物が俺だけですから。
夕映えが西の空に傾き、俺以外、誰一人として存在していない世界を、赤く、紅く、染め上げる。
…………?
そう思った刹那、誰かの奏でるハミングが聞こえて来る。
紅に染まった物悲しい雰囲気の中に聞こえて来る、懐かしい故郷の歌。
当たり前の恋の歌。本当にそうだったら、とても素敵な事だと思う事を歌った恋の曲。
男声?
何かは判らないけど、そのハミングの聞こえた方向に進む。
何かに急かされるように。
何者かに追われるように。
御世辞にも上手いとは言えないそのハミングは、しかし、大きな声では無かったのですが、どんなに離れて居ても聞こえて来る不思議な歌声でした。
……おそらく、夢の世界故に聞こえる歌声だったのでしょう。
ハミングの聞こえて来る方向に少し進む。最初の角を左に曲がり、声の聞こえる方向にゆっくりと進むと、紅い世界の中をゆっくりと何処かに向けて歩む二人組の姿が瞳に映った。
一人は俺と似た背格好の青……少年。右手には明らかに日本刀と思しき優美な反りの剣を持ち、魔術師の証のマントを付けた、……蒼い髪の少年。
もう一人は、タバサに良く似た少女。但し、彼女のトレード・マークと成っている魔術師の杖を持たず、そして、魔術師の証のマントを付けていない。
紅い世界の中、彼らこそが主人公であり、俺はその主人公達の姿を、画面の向こう側から見つめる観客のように思えて来る。
そう。幻想世界の住人の証である髪の毛の色が、俺に対して、そう言う想いを抱かせているのかも知れない。
しかし……。
俺の夢の登場人物にタバサが登場するのは理解出来るのですが、もう一人の登場人物は一体、誰なのでしょうか。
いや、別にタバサの隣に居るのが自分でない事に不満が有る訳ではないのですが。
それに、その少年より頭ひとつ分ほど背の低い少女は、タバサに似てはいますけど、何処かが少し違うような気もするのですが。
それでも、その辺りについては、今はどうでも良い事ですか。もっと彼と彼女に近づけば疑問も無くなるでしょう。
そう思い、明確な目標が出来た事により、更に早足で近付こうとする俺なのですが……。
しかし、ある一定の距離までは近付けるのですが、それ以上は何故か近付く事が出来ない。
どう見ても、男性の方は、少女の歩幅や歩調に合わせているとしか思えないのに……。
矢張り、ここは夢の世界だと言う事なのでしょうね。
更に、何処からか聞こえ続けているハミング。
まるで醒めない夢の中、永遠に鳴り続けるバック・グラウンド・ミュージックのように。
そして、最初は確かに男声だったのに、何時の間にかそれは、女声に変わっていた。
但し、この歌声も俺の知っている声では有りませんでしたが。
そして、それはまるで、先ほどの曲に対しての答えを返すような曲。
当たり前の恋の歌を女声が奏でる。先ほどとは違う、しかし、同じような恋の歌を。
そして、その響きの中から、切ないような想いと、そして、強く傍に居て欲しいと言う想いを感じる。
男性の方は逢いたい。そして、彼女の方は傍に居て欲しい。
出来る事なら、このふたりの想いは叶えて欲しい、そう思わせるに十分な何かを伝えて来る。そんな歌声。
ゆっくりと、何処かに向かって歩んでいたふたりが、突然立ち止まる。
そして、少年の方が何かを少女に語り掛けている。
「彼女の気持ち、わたしには判る」
……そう、まるで独り言を呟くような声で、少女が小さく呟いた。
冷たい紅の世界の中で、彼女の呟きだけが小さく白くけぶる。
何故、これだけの距離が有る中で、更に小さい声だと判っている呟きが聞こえたのか、その理由は判らない。
そうして、その少女の声は、現在聞こえているハミングを奏で続けている女声に似ているような気がするのですが……。
「もしも、叶わない夢ならば……」
少女の声のみが、紅い世界に……。いや、俺の心にのみ響く。
タバサと良く似た話し方。そして、良く似た声で。
「懐かしいあの思い出と共に、夢を見続けて居たいと思う事は……」
ゆっくりと、彼女により相応しい話し方……少し硬質な雰囲気で、抑揚の少ない話し方。しかし、その話し方が、良く現在の彼女の心を表現しているような気がします。
僅かな余韻。そして、紅の世界に忍び寄る夜の気配。
確かに、そう思う事は罪では有りません。まして、逃げる事を自らに禁止しても意味はないでしょう。
逃げずに立ち向かって行って、心が壊れるぐらいなら、逃げた方がマシ。
共に思い出を築き上げた相手だって、きっと許してくれます。
全ての人間が強い訳ではない事は、誰だって知っているから。
まして、そんな相手が傷付く事を、誰も望んでなどいないはずですから。
少年が少女に対して何かを告げる。そして、少女の方が小さく首肯いた。
やがて、再び歩き出す二人。何故か、二人が話している間、いくら前に進んだとしても近付く事が出来ずに距離が詰まる事がなかった。
更に、今のやり取りにどのような意味が有ったのか判らなかったし、何故か少女の方の言葉は聞こえたのですが、少年の方の声は聞こえなかった。
矢張り、これは夢の世界。そして、彼と彼女は夢の中の登場人物と言う事なのでしょうか。
問題は、この夢を何故、俺が登場人物として見ているのか、と言う事。
もっとも、俺が見ている夢なのか、それとも誰かが見ている夢に、俺が巻き込まれているのかが判らないだけに、今、何かを考えたとしてもあまり意味はないのですか。
☆★☆★☆
角を曲がったふたりを、やや足早に追い掛けた俺だったのですが、何故か彼と彼女が曲がった先にはふたりの姿は無く、代わりに少し先の辻に黒いローブに身を包んだ一人の女性の姿が有るだけでした。
そして、その女性の足元には、彼女の飼い犬なのでしょうか。黒い大型犬が、彼女に付き従うかのようにちゃんと伏せをした形で座り込んでいました。
十字路に店を出すロマ系の女性占い師と、彼女の飼い犬らしい黒い大型犬。
……かなり危険な雰囲気なんですけど、彼女の伝承や神性に夢に関する部分が有ったでしょうか。
俺の記憶が確かなら、十字路と言うのは、この世と彼の世の交わる場所と言う伝承が有り、冥府に関係の深い彼女の現れる場所としての伝承も残っています。
まして彼女は、現在はギリシャ神話に語られる女神さまですが、元を辿れば、ある世界を創造したエジプトの大地母神に繋がる女神さまでも有ります。そして、ロマ系の方々と言う中にはエジプト系の方々もかなり存在していたように思いますね。
しかし、俺が知っている範囲内では、夜と言う部分ぐらいでしか、彼女と夢に関係性を見出す事は出来ないのですが……。
少し立ち止まって、その黒いローブを纏った女性と、黒い大型犬を見つめながら、記憶を更に掘り返して見る。
しかし、矢張り、思い当たる伝承や昔話はない。
周囲を見回してみても、彼女に続く一本道が存在するだけで、彼女以外に、この夢の世界から脱出する方法に繋がるような雰囲気を発している物は存在せず。
それならば、仕方がないですか。取り敢えず、彼女の話を聞いて見るべきなのでしょう。
何故ならば、彼女からは、現実に其処に存在しているような雰囲気が発せられて居るように、俺は感じていますから。
そう思い、ある程度の覚悟の完了を果たした俺が、再びその女性に向かって進み始める。
ゆっくりと、しかし確実に。
それまでのペースからは幾分ペースを落としたスピードで、時計の秒針が軽く三周は出来るであろう時間を費やした後に、ようやく俺は、十字路に店を出すその女性占い師の正面に立つ事が出来ました。
出来るだけ、普段通りの装いで。
しかし、不意打ちを受けないように緊張をしながら。
そうして……。
「すみませんが、ここが何処で、どうやったら目が覚めるのか教えて頂けないでしょうか」
……と、ゆっくりと尋ねたのでした。
目の前に置かれた水晶玉らしき丸い物体を見つめていた、その占い師の女性が少し俺の方を見上げた。しかし、目深に被ったベールからは、彼女の神秘的な雰囲気が強く感じられるだけで、口元以外、一切見える事は無かったのですが。
「ここは夢の世界。そして、夢から覚める方法は誰でも知っているのでは有りませんか?」
女性占い師が、彼女に相応しい声と雰囲気で、そう答える。
何処かで聞いた事の有る声で。
しかし……。
普段の夢の世界からの帰還はごく自然な形で行われて居て、意識して目覚めるなどと言う事を行った事がないので……。
流石に難しいですか。
「但し、貴方には帰る前に為して貰いたい仕事が有ります」
そんな俺の考えて居る事を知ってか、知らずか。その女性占い師が、俺に対してそう告げて来る。
口元にだけ、ほんの少しの笑みの形を浮かべて。
……って言うか、彼女が出来ない事を、俺が為せるとも思えないのですが。
とある世界を創り上げた大地母神で有る彼女が為せない事を、龍体に変化する事の出来ない半端な龍種の俺に為せる訳がないでしょう。
普通に考えるのならば。
そうだとすると、この依頼に関しては、所謂、神の試しと言うヤツに成るのでしょうね。
「その、為して貰いたい事と言うのは、どのような事なのでしょうか」
落ち着いた雰囲気で、更に取り乱す事もなく淡々とそう問い返す俺。この場で慌てても仕方がないですし、そもそも、この手の依頼を拒否しても始まりませんから。
神の試しと言うのは、得てして生命の危機に陥るような物が多い物です。但し、この試しを乗り越えない限り、俺はこの悪夢から目覚める事が出来ない、と言う呪を受けているのでしょう。
夢から覚める方法は知っている、と言われても、俺には目覚める方法がさっぱり判りませんからね。
……と言うか、今現在、俺自身に眠っている。夢を見ていると言う自覚がゼロの状態なのに、其処から目覚める方法と言われても……。
目深に被ったベールから彼女の表情を見る事は出来ませんでした。それでも、断られるとは思っていなかったのでしょう。それまでの彼女と、雰囲気も、そして口元だけが見えている表情からも、まったく変わった点はないように思われました。
そう、口元にだけ、ほんの少しの笑みを浮かべた表情はまったく変わる事が無かったと言う事です。
そして、次の瞬間、自らの立っている場所が変わった。
刹那、自由落下を開始する前に、自らの身体を現在の場所に浮遊させる俺。
……って言うか、いきなり空間転移のようなマネを為すのなら、俺の事も空中にホールドして置いて欲しいのですけどね。
もっとも、ここは夢の世界ですから、その夢見る人物が飛べると思えば、誰で有ろうとも飛べるように成るとは思うのですが。
それに、彼女の能力から考えてみると、人間に擬態した俺程度の能力などあっさりと見透かす事など訳がないですか。
そして、空を飛べない青龍など存在しては居ませんしね。
「貴方には、あれをどうにかして貰いたい」
女性占い師が遙か下方を覗き込みながら、落ち着いた、彼女に相応しい声でそう俺に告げて来た。
彼女が上空から見下ろすその先……俺の足元から少し先までを占める黒い何か。
そして、その黒い何か……腐ったような悪臭を撒き散らし、原形質の小さな泡で出来た不定形の塊が、不気味な伸縮を繰り返しながら紅に染まった街を踏み潰し続けていた。
彼の進んで来た後には、何ひとつ残す事もなく……。
刹那、とある作家が書き記した、南極に住むと言う巨大な白い鳥の鳴き声が響く。
……確かに、厄介な相手ですね。ですが、この程度の相手を、魔術の女神と評される彼女がどうこう出来ない訳はないでしょう。
確かに、全長で三十メートルほども有る巨大な個体だけに厄介な存在だとは思いますが、こいつを倒すには確か、液体窒素でも有れば問題なく倒せたと思うのですが。
物語や伝承で語られている、アイツと同じような存在ならば。
おそらく、この目の前の女性が俺の思っている存在とイコールで繋ぐ事が出来るのならば、彼女は闇と冷気を司る女神です。伝承に有る個体よりも遙かに巨大な個体とは言え、液体窒素でどうにか出来る程度の相手では、どう考えても、瞬殺出来るのではないでしょうかね。
そう思い、冥府の女神の指差す先を見つめ直す俺。
確かに、この眼下で蠢く生命体は、あの神話内に存在するアイツだとは思うのですが。
但し、ここが夢の世界で有る以上、厳密に言うと伝承や物語に登場するアイツとは違うようにも思いますが。
例えば、ヤツが通って来た後に何も残す事なく、ただ黒い空間だけがぽっかりと口を開けているかのように見えている点などが……。
そう思い、更にその黒い生命体に対して、能力を総動員して見つめる俺。
……ん。何か、異質な雰囲気を彼の生命体から感じるのですが。
「彼女を救い出して欲しいと言う事です」
冥府の女神ヘカテーが、その微妙な違和感にようやく気付いた俺に対してそう言った。
……と言われても、現状の俺には、何処に、誰が囚われているのかも判らないのですが。
俺が感じたのは、所詮は違和感レベル。具体的に何処がどうおかしいのか、はっきりとした言葉では言い表せられない、もやもやとした感覚と言った方が近いモノ。
「貴方に、彼女を助けられないのなら、あの魔物を放置すれば、やがてこの世界を完全に滅ぼす存在で有る以上、彼女と共にあの魔物を滅ぼさねば成りません」
先ほどまでと変わらぬ雰囲気で、しかし、非情な台詞を口にする冥府の女神。
成るほど。その彼女と言う存在が誰かは判らないけど、魔物と共に滅ぼされたら、現実世界にも問題が出て来る可能性も有ります。
確かにここは夢の世界。但し、俺の感覚では、殆んど現実世界と変わらない世界。
夕日を感じ、冬の寒さを感じ、そして、頬に風を感じる世界。
ここまでの現実感を持っている世界で、もし、魔物と共に精神が死する結果と成った場合、現実世界での、その彼女と言われる存在の心が死んでしまう可能性が有ると言う事。
もっとも、何故に冥府の女神が、そのショゴスらしき存在に囚われている彼女を助けようとしているのか、と言う事が気にならないでもないのですが……。
まぁ、良いですか。助け出したら、その理由が判る可能性も有ります。まして、それでも判らなくて、尚且つ、俺自身が気になったのなら、彼女、冥府の女神ヘカテーに素直に聞いてみたら済むだけですから。
ならば、答えはひとつ。
「判りました。確実にその彼女と呼ばれる存在を助け出せるとは限りませんが、出来る限りやってみましょう」
☆★☆★☆
「……さて。そうしたら、現状確認から。現在の俺は、精神のみの存在」
遙か上空より、その黒き不定形の何かを見つめながら、独り言を呟くかのようにそう口にして見る俺。物悲しい赤に染まった世界と、冷たい冬の大気。そして、古のものに造り出された奴隷生物と、彼に造り出された黒の対比が俺の心を妙に不安定にしている。
そう。赤が、流された生命を司る液体を指し示し、黒は、無を表現しているようで……。
……一応、如意宝珠は俺の精神と共に有るから問題なく起動する。
仙術に関しては、五遁木行以外は、それぞれの式神頼みだったから、かなりキツイ。
呪符は全て現実世界に身体と共に置いて来ている。
龍種としての生来の能力は行使可能。
現状の俺では、ショゴス(仮)の無力化は難しいと言う事ですか。
少しの不安を、首を振る事に因って無理矢理消去。今は、もう少し、情報が必要。
取り敢えず、高度を下げて、そのショゴス(仮)に近付いて、ヤツの何処に、その彼女と言われる存在が囚われているのか確認をしてみるべきでしょうか。見た感じ、怪しいのは先頭部分の妙な突起と成っている個所なのですが……。
そう思い少し高度を下げてみる俺。腐ったような腐臭が鼻を衝くのですが、この程度の事を、一々、気にしている訳にも行きません。
大体、全長で三十メートルぐらいですか。厚さに関しては、上空からの観察では、はっきりとは判らず。確か、現実世界にコイツが現れる可能性は低いですし、それに、地球上にはいないと言われていたと思いますから、現実に冷気が効くかどうかは不明と言う感じですか。
もっとも、この世界は夢の世界で有る以上、本当のショゴスとは別の存在だとは思いますが。
おそらく、精神世界で有る以上、悪意や憎悪などの陰の気の塊だとは思います。そしてその部分を、俺が悪臭として感じているのだと思いますから。
瞬間、高度を下げた俺に対して、触手……と言うべきなのでしょうね、黒い不定形の身体のあちこちがチカチカと明滅を繰り返したかと思った刹那、俺の方に向け、複数の黒い肉塊を伸ばして来た。
その蜘蛛の巣状に張り巡らされた触手が、俺を取り込み、同化しようと襲い来る!
……って言うか、こいつ、そう言えば知性が有ったか。伝承上では、その得た知性によって、造物主を滅ぼした存在でしたか。
最初のひとつを急加速で振り切り、ふたつ目を急降下で回避し、三つ目と四つ目を同時に閃いた銀光が斬り裂く。
刹那、南極に住むと言う白い巨大な鳥の鳴き声に重なる、明らかに女性と思しき悲鳴が俺の精神を揺さぶり、同時に少しひるんだかのように触手を自らの黒きタールの如き身体に引っ込めるショゴス(仮)。
それと同時に、こちらも遙か上空の安全圏に退避する。
そして再び、遙か上空の安全圏と思われる場所から、そのショゴスらしき巨大な生命体を睥睨する俺。
これは、かなりマズイ状態です。
今の悲鳴から類推すると、その女性と、あのショゴス(仮)は、ほぼ一体化しているように感じますね。つまり、アイツを傷付けたら、その助け出そうとしている女性を傷付ける事になると言う事です。
何処まで許容範囲が有るのか判らない以上、ウカツな攻撃は、その助けようとする女性の精神を破壊してしまう可能性も有りますね。
更に、漠然とした不安。あの声……あの悲鳴を上げた女性の声は何処かで……。
ええい、迷って居ても話は始まらないか。
先ずは自らに強化を施し、全ての能力の強化を行った上で、再び低空飛行に移る。
すべては、その女性を助け出せば終わる。
そして、こちらも先ほどと同じように触手を伸ばし、俺を取り込もうとするショゴス(仮)。
高速移動によってふたつの触手を振り切り、前後を挟み込もうとした触手を右にスライドするかのような、物理法則を完全に無視した機動でやり過ごし、更にショゴス(仮)に接近する俺。
そう。目指すは、その怪しい突起物の有る先頭部分。その突起が何かが判れば、対処の方法も出て来ると思いますから。
もし、体内に完全に同化されている存在を助け出せと言うのなら、その相手は、俺と強い縁で結ばれた相手で無ければ無理のはずです。
完全に、魂が完全に同化された存在から、目的の人物の魂だけを切り離すには、俺自身が相手の内部に入り込み、俺と縁の繋がった相手を連れ出す方法しか俺は知りませんから。
これは、自らの記憶と縁……因果の糸を利用して、完全に同化した相手の中から、俺の魂と縁に惹かれて集まって来た魂を無理矢理連れ出す、と言うかなり荒っぽい方法に成ります。
もっとも、そんな危険な方法を試した事など有りませんけどね。
多分……。
そんな事が為せるのは、自らの魂がその悪霊と同化される危険性を冒してでも助け出したい相手が居て、その相手の魂も、俺の魂に惹かれて確実に近寄って来る相手で無ければ無理ですから。
双方の魂に、強い想いが無ければ、これは不可能だったと思います。
最後の急上昇から急降下によって、ようやく先頭を覗く事が出来る位置を占める事が出来た。……のですが。
その突起部分は何かの彫像……いや胸像と言うべきか。完璧な質感を表現した精緻な人形を思わせる美貌をこちらに向けていた。
そう。光を浴びると蒼から銀を思わせる癖の無い髪の毛と、白磁と表現すべき肌。眠っているかのようなその表情からは、矢張り普段の彼女の通り、感情を読み取る事は出来なかった。
……って言うか、
「タバサ」
完全に瞳を閉じたショートカットの少女。その顔を俺が見間違えるはずはない。
半ば予想していた展開とは言え……。
瞬間、更に腐臭がキツク成る。
「タバサ、何で、そんなトコロで……」
しかし、眠ったままの彼女は俺の言葉、そして声にさえも反応する事は無く、ヤケに人形じみた美貌を俺に対して見せるのみ。
刹那、八方から俺を包み込もうとする触手。その姿はまるで、ある種の食虫植物が擬態した囮ごと、獲物となる虫を己の身に取り込もうとするかのような動き。
八本の触手……いや、ある種の花弁を閉じるかのような、その完全にシンクロした動きの中で、僅かな差を掻い潜り、同時に如意宝珠を壁盾の形に起動させ、右上方部に僅かな隙間を作り上げ、辛くも虎口から脱出する俺。
しかし、その事によって、それまで露出していたタバサの胸像部分が、完全に黒い原形質部分に呑みこまれて仕舞った。
再び迫り来る触手の群れを、かなり上空にまで退避する事によって躱す俺。
しかし……。
三度、上空より、黒き不定形生物を睥睨しながら、思考を纏めようとする。
ここは、冷静な判断を要求されている。
問題は、何故にタバサがこんな夢の世界で、あんな陰気の塊の核みたいな役割を演じているのか、と言う事。
仮説としては……。
遙か、下方を睥睨し、黒き不定形生命体の辿って来た道と思われる、無に覆われた世界を見つめる俺。そして、
ここは、ヘカテーやショゴス(仮)が顕われている以上、夢の世界とは言っても、その最深部。全ての人類の夢に繋がっていると言われている集合的無意識と呼ばれている領域に存在する空間だと思います。
ここより更に深い領域……自然とか世界に繋がる場所から、神や悪魔などが顕われるとも言われていますからね。
その世界を破壊する……無に帰するような化け物の核としてタバサの姿が象徴として現れていると言う事は、この夢の世界は、タバサの夢の世界から直接侵入出来る世界と言う事なのでしょうか。
……確かに可能性は有るけど、確実では有りませんか。
それに、今のタバサからは未来を見つめる前向きな気を感じますけど、彼女の言葉の中に、以前は復讐を考えた事が有る、と言う言葉も有りました。
そして、ここが夢の世界……つまり、過去の記憶の世界なら、その当時の、全てを破壊し尽くす狂気に近い衝動を表現した存在として、あのショゴス(仮)が顕在化した可能性は有りますね。
それに、その仮説を補うかのように、タバサは俺の呼び掛けに反応する事は無かった。
あの眠れる胸像化したタバサが、嘗て、復讐を考えた時の彼女なら、彼女の使い魔である俺と言う存在を知っている事はないし、まして、『タバサ』などと言う偽名に反応する訳もない。
更に使い魔として俺が召喚される前の彼女なら、俺との間に霊道は存在してはいない。つまり、直通の【念話】のチャンネルを開く事も難しいと言う事。
但し、因果の糸。つまり、ある程度の縁は結ばれているはず。そうで無ければ、彼女が開いたランダム召喚の召喚ゲートが俺の前に開く事はない。
まして、俺とある程度の縁が結ばれた相手を救う理由で無ければ、俺をわざわざ夢の世界、集合的無意識に呼び寄せても意味はない。
そして、俺とある程度の絆で結ばれた相手は、タバサしか居ない。
ならば……。
未だ健在の、懐かしき思い出を喚起する、夕日に染まった街を見つめる。
そして、意を決して三度、急降下を行いショゴス(仮)に接近を試みる俺。
そして、その俺に対して三度、同じように触手を伸ばして来るショゴス(仮)。その様子は、まるで、彼女自身が、俺を求めているかのような錯覚さえも与える。しかし、それは有り得ない。
彼女が、俺を傷付ける事など望むはずがない。彼女が、俺を取り込む事など望む訳がない。
右手の起動させた如意宝珠製の七星の太刀を無造作に振り抜く俺。
刹那、紅い世界の中に閃いた銀の光が、俺に迫り来る黒き触手を斬り裂いた。
その瞬間に響く少女の悲鳴。
この世界は夢の世界。つまり、現実の世界ではない。例え、腕が跳ぼうが、脚がもげようとも、自らが死亡したと思い込まない限り実際の身体に害が及ぶ事はない。
そう自らに言い聞かせながら宝刀を振るい、一直線に、先ほどタバサの胸像が存在した地点に向かう。
強い腐臭を放ち、しかし、更に、俺を同化しようと近付く触手の群れを振り切り、彼女の姿が有った場所へ。
先ほど、タバサを呑みこんで仕舞った場所には、最早彼女の胸像が存在していた事など感じさせる事もなく、ただ、不気味な黒い何かがしきりに収縮を繰り返しているだけの場所と成っていたのですが。
先ほど滞空した場所から、更に黒い原形質の何かに接近する俺。それと同時に、更に強くなる腐臭。
殺到する黒き触手を右手に捧げし宝刀で薙ぎ払う。
その一瞬の後、ズタズタに斬り裂かれた闇色の何かが飛び散り、絶対に聞きたくない少女の悲鳴と、そして耐えられないレベルの腐臭を撒き散らして、地上へと落下して行く黒き肉塊。
漆黒の巨体は最早目の前。其処まで近付いて、ようやく身体のあちこちでチカチカと明滅を繰り返していた緑色の光が、形成され、そして次の瞬間、また元の黒い小泡となっている不気味な『目』で有る事が判った。
迷いや恐怖を無理矢理呑みこみ右手を一閃。
そう、先ほど夢の世界のタバサが包み込まれたと思しき場所に斬り込みを入れる。
そして、その一瞬の後、その切れ目に左手を押し込む。
ぬるりとした嫌な感触。その感触だけでも、そのまま恐怖から逃げ出して仕舞いたくなる。
但し、こいつが伝承上のショゴスと同じ能力を有していると仮定するのなら、ティンダロスの猟犬ほどではないにしても、かなり高い自己修復能力を有していたはず。故に、こんなトコロで、恐れや躊躇いぐらいで貴重な時間を浪費する訳には行かない。
奥へ。そして、そのまた先へ左手を伸ばす。何かを掴み取るまで。
【シャルロット!】
耐え難い悪臭と、左手の先から腕、そして肩に到るまでに感じる激痛。しかし、俺の身体を同化しようとするショゴス(仮)の干渉を精神力のみで排除し続ける。
伝えるのはイメージ。それは、俺の持つタバサのイメージ。今は、ショゴス(仮)に完全に同化されていたとしても、俺の魂と結びついている部分の方が強ければ、彼女の魂をこの怪物から切り離す事は出来る。
そう現実世界ならば、このような事はとても出来る事ではない。
しかし、ここは夢の世界。この世界ならば、精神力だけで有る程度は無理が効く。
いや、効くはずだし、効かせて見せる!
俺の強い【呼び掛けに】対して、【念話】に成らない念のような物が返される。
【シャルロット、聞こえているならこの手を掴め!】
この世界を護る為に、タバサの精神を殺させる訳には行かない。例え、それが過去に彼女から切り離され、心の奥底に沈められた復讐心だったとしても。
俺の役目は彼女を護る事。その俺は、この夢の世界を壊す事も、そしてタバサの精神を殺す事に対しても、どちらも否と答える。
声を大にして。
最早肩を過ぎる辺りまでショゴス(仮)に左腕を押し込んだ俺の手に、何か小さなモノが触れた。
ショゴス(仮)に完全に取り込まれていた訳では無かったのか、それとも、俺の呼び掛けに因って自我を取り戻し、ショゴス(仮)に取り込まれた曖昧な状態から、自分が再び形成されたのか。
その手をしっかりと握りしめる俺。しかし、
【わたしの事は気にしなくても良い】
そう【接触型の念話】で告げて来るタバサ。……少しの違和感が有るのは、矢張り、彼女の憎悪や復讐心が生み出した存在だからなのか。
そして、そう伝えて来たタバサが、つないだ手を離そうとする。
しかし、俺の方が離さない。そもそも、能力の強化が為されている俺の手を、彼女が振りほどけるはずはない。
そして……。
【悪いが気にするか、気にしないのかを決めるのは、シャルロット。オマエやない】
そもそも、気にしなくて良いと言われて、はいそうですか、と引き下がる訳がない。
まして、その程度の関係の相手なら、完全に相手に取り込まれた魂を掴み取る事が出来はしない。つまり、タバサと俺の縁は、少なくとも、それぐらいには深い絆が有ったと言う事。
そんな相手を見捨てられるほど、俺は強くはない。
【それに俺に命令出来るのはこの世でたった一人。俺だけや】
俺の【念話】に、少し弱まり掛けたタバサの手に少しの力が籠る。
これは、先ほどの台詞が正気に戻った彼女が諦めたと言う訳ではなく、差し出した手の持ち主の事を心配しての台詞だったと言う事。
それに、その手の持ち主が、どう有ってもこの手を離す事が無いと言う事を知ったと言う事でも有る。
掴んだ手を離す事なく、無理矢理にタバサを自らの方に引き寄せようとする。
しかし、矢張り、そう簡単には行く訳は無かった。
刹那、徐々にショゴス(仮)内部へと引き込まれて行く俺。
左腕から、肩。そして、顔の部分が……。
その瞬間、笛を吹くような、甲高い化鳥の鳴き声に似た何かが辺りに木霊する。
それは、喜び。歓喜。俺を取り込む事が出来る。伝説の青龍を取り込む事が出来る、この黒き魔物の喜びの歌。
彼女、タバサが俺を害する訳はない。俺を、こんな深く、暗い牢獄に、自らと共に閉じ込めて、彼女に笑顔が戻る訳はない!
それに、ここは夢の世界。つまり、ここでは息をする必要が無いと言う事。だから、少々頭が引き込まれたぐらいどうと言う事はない。ようは、俺自身が諦めなければ、どんなに追い詰められたとしても、逆転のチャンスは有ると言う事。
そう。つまり現状は、俺自身が俺と言う存在を認識しているから、武神忍と言う形を再現出来ているが、この認識がぼやけたら、俺の魂は武神忍と言う形を維持出来なく成って仕舞うと言う事でも有る。
ショゴス(仮)に頭部を取り込まれた瞬間に閉じて仕舞った瞳をゆっくりと開ける俺。ここは夢の世界の更に異世界。今の俺は、異世界の中の、更に異世界との境界線上に身体を置いていると言う事でも有ります。
現実世界に肉体を。夢の世界に右腕及び左胸から下の部分を。
そして、左腕から肩に掛けてと頭の部分をショゴス(仮)の内部に。
こんな珍しい体験は早々出来る事はないですから。見て置かなければ損でしょう。
……そう思い込む必要も有りますからね。
ショゴス(仮)の内部。そこは何もない。……いや、黒く粘性の強い何かと、俺の左手を両手でしっかりと掴む蒼き少女の姿以外は何もない空間でした。
間違いない。俺の左手を掴んでいたのは、蒼い髪の毛をショート・ボブに切り揃え、彼女に相応しい白い清楚なブラウスと、普段通りの黒のミニスカートに身を包んだ、俺の知っている蒼き姫で間違いなかった。
但し、彼女の右腕には、見た事のない銀製と思しき複雑な意匠を凝らしたブレスレッドが光っていたのですが。
【シャルロット、その手を離すなよ】
俺の【念話】に、少し、しかし強く首肯くシャルロット……いや、タバサ。
……少し違和感は残るけど、見た目も雰囲気も、そして、仕草もタバサそのもの。
ここは夢の世界。誰かが……。いや、おそらくは夢の主格の可能性の高いタバサが俺の事を信じてくれたのなら、このショゴス内部からでも間違いなく帰還出来ます。
それに、彼女に信じて貰うのに、俺自身が自分を信用しないでどうする。
俺は左腕一本でタバサの左手首を。タバサの方は両手で俺の左手首を握る形。この形ならば、早々、離す事は有りません。
そして、徐々に吸い込まれていた身体が、完全に拮抗したのか其処から動かなくなる。
但し、其処まで。ここから先に、タバサを連れ出すには何かが足りない。
俺の方は、自らの生来の能力でこれ以上、ショゴス(仮)が取り込もうとする力を阻止する事は出来ているのですが、このショゴス(仮)の身体自体に、何処にも踏ん張るような個所が無い為に、俺自身の力を使って脱出する方法が今のトコロはない。
精神力勝負か。……と言うか、相手には時間は無限に存在するけど、俺の方は、精神力が切れたら終わり。諦めても終わり。時間が掛かり過ぎても終わり。
どうも、分が悪過ぎる戦いを強いられているな。
しかし、弱気を見せる訳には行かない。俺には、このタバサをショゴス(仮)内部より連れ出すと言う役割を冥府の女神から依頼されているのと、それ以外にもタバサを護ると言う約束を交わしている。
使い魔契約と言う形で。
この俺の左腕を掴んでいる少女の未来の少女と。
タバサ……いや、おそらくは俺と出会う前のシャルロットを見つめる。
ほんの少しの笑みを浮かべて。
彼女の方も俺を見つめ返す。その瞳は宇宙の蒼。そして、このショゴス(仮)の核と成っているとは思えないような、今、俺が知っているタバサと同じ、深い理知的な光を放っていた。
そして、タバサ=シャルロットがゆっくりと首肯いた。
良し、行ける!
身体に掛かるベクトルを後方に。この一瞬に全精神力を使い切っても構わない。
彼女が信じてくれるのなら、不可能を可能にして見せる。そう強く思いながら、最後の悪あがきに等しい行動に移る。
刹那、夢の世界に残ったままの俺の右手に何かが触れた。
いや、触れただけではない。俺の右手はしっかりと繋がれ、ショゴス(仮)から俺を助け出す為に、力が籠められて行く。
何となく覚えのある、小さく、それに柔らかい手の感触。
ショゴス(仮)から、化鳥の如き苦痛に満ちた叫びが上げられた。
先ほどの歓喜の歌とは違う。それは、呻き。自らの身体より大切な何かを奪われるモノの断末魔の悲鳴。
この世に存在するとは思えない、異世界の絶叫。
泥のような。黒い何かを纏わり付かせ、俺の顔と、そして左腕が先ず夢の世界に脱出。
そして、それに続き、悪夢、もしくは無の世界から、蒼き姫が姿を現し……。
そして、呆気ないほど簡単に、その全身を夢の世界の上空へと踊らせていた。
約束通り、俺と繋いだ左手を離す事なく……。
その一瞬の後、聞こえて来たのはふたつの女声。
ひとつは、俺にタバサの救出を命じた冥府の女神。
そして、もうひとつは、この世界に入って来た当初、俺の少し先を歩んでいた少女の声。
ふたつの声が重なり、呪を唱えるは、凍てつく冬の呪文。
しかし、俺の意識はその瞬間に混濁し、その結果を最後まで見届ける事は叶わなかったのですが……。
いや、最後の瞬間に、繋いだ左手の先に、タバサの…………。
後書き
最初に。主人公の立てている仮説が、必ずしも、この世界での真実とは限りません。
彼はそれなりに優秀ですが、全知全能では有りませんから。
それでは、少し先の話の予告を。
以前にも記しましたが、主人公とタバサは、ゼロ魔原作三巻のゼロ戦回収の話に参加する事は有りません。
この夢の話が終了すると、次はカジノ編。
その次は、地下ダンジョンに潜って、
その次は、再び夢の世界への侵入。
その次は、パーティの話から、地下ダンジョンに潜る話です。
それで、カジノ編とは、タバサとギャンブラーの話の、この世界ヴァージョンの話。
地下ダンジョンとは、ミノタウロス話の、この世界ヴァージョン。
夢の話は、……眠れる森の美女。
パーティ関係の話は、地下水関係の話。
但し、何処を探してもミノタウロスは出て来ません。
地下水は出て来ますが、出て来るのはリアルな地下下水道を流れる下水の事で、系統魔法が使えるナイフでは有りません。
それでは、次回タイトルは『使い魔のルーン』です。
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