戦国異伝
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第三十九話 なおざりな軍議その二
その彼のところに原田が来てだ。こう彼に上申してきた。
「殿、鷲津にです」
「ふむ。あの砦にか」
「はい、来ました」
こう信長に告げる原田だった。
「まずは先陣ですが」
「竹千代じゃな」
信長はすぐにだ。彼の名前を出してみせた。
「そして雪斎も共におるな」
「その通りです」
「あの二人しかおらん」
だからだとだ。信長は言うのである。
「さて、それで鷲津はどうなった」
「存分に戦っているとのことです」
原田は鷲津の奮戦も伝えた。
「一週間は充分にです」
「戦えるというのか」
「しかし。やはり数は多いです」
敵の数がだというのである。
「ですから。やがては」
「わかった」
ここまで聞いてだ。信長は頷いた。するとすぐにだ。
原田は話を変えてだ。こう主に告げるのだった。
「して、なのですが」
「軍議じゃな」
「それは。どうされますか」
「開かぬと言えばどうする」
信長は微笑みを浮かべて原田に問うてみせた。
「だとすれば」
「いやいや、それはないでござる」
原田は信長の今の言葉は笑ってないとした。
「幾ら何でもそれは」
「そう思うか」
「今川はもう尾張に入っております」
その現実を指摘しての彼の話である。
「だとすればです。とても」
「そうじゃな。普通で考えればな」
「はい、ありませぬ」
「ははは、しかしわしは普通とは限らんぞ」
信長も笑ってだ。こう言ってみせるのだった。
「さて、どうなるかのう」
「しかし軍議は」
「開くとはまだ言っておらぬぞ」
これがだ。現実だった。
信長は今回はだ。軍議を開くとは一度も言っていない。それどころかいつも通り政を行い馬に乗り泳ぎだ。全く何でもない様子だ。その彼を見てだ。
原田も流石にだ。いぶかしむものを感じてこう言うのであった。
「まさかとは思いますが」
「軍議を開かぬではと思うておるな」
「はい、その通りです」
ありのまま主に答える彼だった。
「それはないでござるな」
「言うのう。そう思うか」
「違いますか」
「開かぬと言えばどうする」
また原田に言ってみせる信長であった。
「そうすればじゃ」
「いや、それは」
原田はそう言われてはだった。返答に窮した。そのうえでだ。
困惑した顔になる。しかしその彼にだった。信長はこう告げた。
「よし、それではじゃ」
「軍議をですか」
「皆を呼べ」
開くとは言わずだ。こう言ったのである。
「よいな。今清洲におる皆を呼べ」
「はっ、それでは」
原田はそれこそが軍議だと思った。そうしてだ。
家臣達が信長の前に集りだ。早速だった。
「やはりここは平手殿の軍と合流しだ」
「うむ、その通りじゃ」
「そしてそのうえで鷲津の救援に向かい」
「今川に決戦を挑む」
「そうするべきじゃな」
柴田や母衣衆あがりといっただ。血の気の多い面々の主張である。
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