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戦国異伝

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第二十七話 刺客への悪戯その十一


「それにどう対するかです」
「ふむ。今川に敗れれば」
「織田は終わりじゃな」
「それで」
 三人衆は今の竹中の言葉に考える顔になった。そしてそのうえでまたそれぞれ言った。
「ではそれをどう凌ぐか」
「そして生き残るか」
「それを見届けてからか」
「そうするのじゃな」
「いえ、まだ先を見ようと思っています」
 不破も含めた四人にだ。竹中はまた話した。
「まだ先をです」
「まだ見るというのか」
「今川との戦の後も」
「さらにか」
「はい、そうします」
 竹中はその言葉に己の意志を入れていた。そのうえでの言葉だった。それをまた話すのだった。
「まだ先をです」
「では織田殿は今川には勝つか」
「そう見ておるのだな」
「おそらくは」
 断定はしない。しかしそうだと答える竹中だった。
「勝たれるでしょう」
「今川は二万五千の兵がおる」
 稲葉はその兵の数を述べた。
「天下でもかなりのものだが」
「そうじゃな。一口に二万五千といってもじゃ」
 安藤もその数について言う。それがかなりの数であることは言うまでもない。
「それだけの数が一度に来るとのう」
「美濃でも危ういぞ」
 氏家もだ。その数を甘く見てはいなかった。そのうえでの言葉だった。
「対する織田は一万五千」
「兵で劣るのは否めまい」
「しかし勝つか」
「そう言うのじゃな」
「確かに数は重要です」
 竹中は四人にまた述べた。
「しかしそこに将の質や装備もあります故」
「鉄砲や槍か」
「それもか」
「そして地の利もあります」
 それについてもだ。竹中は話した。
「少なくとも尾張での戦になればです」
「地の利は織田殿にある」
「そういうことじゃな」
「はい、勝機は充分にあります」
 竹中は冷静に述べる。その口調から彼が決して信長を贔屓していないことがわかる。あくまで客観的に見てそのうえでの話なのだ。
「織田殿にも」
「だからその後も見るのか」
「今川に勝つことはそのうちの一つに過ぎん」
「そういうことじゃな」
「その通りでございます。我等が決める時は」
 何時なのか。竹中はさらに話す。
「それは織田殿が天下を確実に収められる方と見極めた時でございます」
「それではじゃ」
 不破が竹中の今の言葉に応えて述べた。
「その見極めはそなたに任せてよいな」
「そうさせてもらえるのですね」
「御主程の者が見極めればじゃ」
 不破はまた言った。
「わしは異論はない」
「わしもじゃ」
「うむ、わしもだな」
「わしもそうさせてもらおう」
 安藤、稲葉、氏家もそれでいいと答えた。
「是非共な」
「有り難うございます」
 竹中はその三人に対して礼を述べた。それが何故かも話すのだった。
「それがしに任せて頂き」
「それだけの者だからじゃ」
 こう答えたのは不破だった。
「御主がな」
「だからですか」
「そうじゃ。そうでなければじゃ」
「うむ、最初から言いはせぬ」
「決してな」
 それを稲葉と氏家も話した。そして安藤もだった。
「信頼しておるということじゃ」
「それがしをですか」
「その通りじゃ。それにじゃ」
「うむ、織田殿は美濃から見ているだけでな」
「中々面白い御仁じゃ」
「見ていて飽きぬ」
 こうだ。信長に対しても話した。語るその目は確かなものだ。
 こう話す彼等であった。そしてだ。彼等をまとめて安藤が述べた。
「我等の配下も納得してくれるじゃろうな」
「そうじゃな。あの者達にも話しておこう」
「大殿のお言葉を述べてな」
「そうしてじゃな」
 ここで道三の名前も出た。やはり彼の存在は大きかった。
「ついてくる者はよし、残る者はよし」
「そうしていこうぞ」
「左様じゃな」
 こう話してだった。彼等はこれからのことを考えるのであった。美濃でもだ。見ている者は見ていた。そうして考えていたのだった。


第二十七話   完


                  2011・2・10 
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