戦国異伝
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第二十話 信行謀叛その二
「よいな」
「畏まりました」
「わしも行くしな」
見ればだ。信長も既に具足を身に着けている。無論織田の青い鎧だ。
「そしてそのうえでだ」
「信行様をあえて動き出させる」
「そうされますね」
「その為にも」
「しかし」
今言ったのはだ。生駒であった。
彼は怪訝な顔になってだ。こう信長に対して話すのであった。
「清洲の守りは帰蝶様だけですか」
「そうじゃ。あれに全て任せる」
信長の返答は素っ気無いまでにあっさりとしたものであった。
「ここはな」
「帰蝶様だけで大丈夫でしょうか」
「そうだな」
丹羽も不安な顔で生駒の言葉に同調してきた。
「我等のうち誰かが残るべきでは」
「そう思いますが」
「それでは動かぬぞ」
信長は鋭い声で短く指摘をした。
「信行はな。あれも操られているとはいえ馬鹿ではない」
「だからですか」
「名のある者はあらかた連れて行き」
「兵もほぼ全て出し」
「そうしてなのですね」
「しかもだ」
信長はだ。それで終わりではないというのである。それはだ。
「普通では間に合わぬ場所まで出てだ」
「そうして動かさせる」
「そうされると」
「そこまでせねば動かぬ」
あくまで冷静にだ。考えてそうして行っているのだった。それを今家臣達に話す。
「信行はな。しかし動けばだ」
「全てが決まる」
「左様ですな」
「その通りじゃ。ではよいな」
己の前に集まる家臣達を見回してだった。一歩前に出た。
「出陣じゃ」
「では」
「いよいよ」
こうしてだった。彼等は出陣するのだった。それを聞いてだった。
古渡城においてだ。津々木が信行に対して述べた。
「動かれましたぞ」
「そうだな。兄上がな」
信行も彼のその言葉に頷く。
「動かれたな」
「はい、それでは」
「こちらも動く」
それを言う信行だった。
「わかったな」
「では。その六千の兵で」
「そうだ、清洲を襲う」
そうするというのだった。
「わかったな」
「それでなのですが」
「権六達か」
「あの方々についてはどうされますか」
「後詰でよい」
素っ気無くだ。信行は述べた。
「あまり深く関わらせるな」
「左様ですな。それでは兵は」
「私とそなただ」
津々木に対しての言葉だった。
「二人で率いるぞ」
「わかりました。それでは」
「権六達は所詮兄上の家臣だ」
「だからですな」
「いらぬ。兵さえ手に入ればよい」
信行は言っていく。だが語るその目は何かがおかしかった。
得体の知れないだ。異様な光を放ってそしてあらぬ方を見てだ。そのうえで語る、そうしたおかしな目をしているのであった。
その目を見てだ。津々木は特に何も言わない。その目については。
そしてであった。彼はさらに言うのであった。
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