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戦国異伝

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第十八話 道三の最期その八


「何としてもじゃ」
「そうされますか」
「急ぐよ。よいな」
「はっ、それでは」
「皆の者、よいな」
 立ち上がった。そのうえでの言葉だった。
「我等は今よりこれまで以上にじゃ」
「急がれますか」
「鷺山に」
「義父殿、何としても救う」
 本気だった。その目には燃えるものすらあった。
 その目で鷺山城の方を見ながらだ。信長は話した。
「行くぞ」
「わかりました。それでは」
 可児もだ。言うのだった。
「今よりそれがしも」
「才蔵、参るぞ」
「畏まりました」
 信長の下にまた一人優れた者が加わったのだった。そしてそのうえでだった。織田の軍勢はあらためて鷺山に急ぐ。これまで以上の速さでだ。
 そしてその時だった。その鷺山城は。
 義龍の軍に完全に囲まれだった。激しい攻撃を受けていた。
「攻めよ!」
「敵の兵、僅かぞ!」
「負ける筈はない!」
「城を陥とせ!」
 こう言ってだった。城壁に群がり矢や鉄砲を放つ。そうして守ろうとする道三の兵達を退け壁をよじ登ろうとする。それに対してだ。
 道三は自ら槍を手にしてだ。敵に向かうのだった。
「大殿覚悟!」
「御首頂戴!」
 その彼には足軽達がとりわけ集まる。勇んで彼を討ち首を取ろうとする。しかしだった。
 前から来た足軽の一人に槍を繰り出してだった。
 突きでだ。その足軽を倒したのだった。
「うっ・・・・・・」
「隙だらけぞ」
 横から叩いてそれで倒したのだ。そうしてその足軽を退けた。しかし今度は後ろからだった。もう一人の足軽が襲い掛かって来たのだった。
「貰った!」
「むん!」
 しかしその足軽にもだった。槍を横薙ぎにし吹き飛ばす。刃には当たっていないので殺すことはできなかった。だが退けることはできた。
 すぐに二人の足軽を倒してみせる。しかしだった。
「大殿はここぞ!」
「倒せ!」
「その首取れば恩賞は思いのままぞ!」
「ではそれがしが!」
 次から次に来る。まさに雲霞の如しだ。だが道三はその彼等を次から次に薙ぎ倒していく。その槍を縦横に振るう。
 前に突き出し横に振る。そうして義龍の兵達を次々に倒していく。しかしだった。
 何処からかだ。矢が来てだった。道三の右肩を射抜いたのだった。
「ぐっ・・・・・・」
「よし、矢が当たったぞ!」
「今だ!」
「一斉にかかれ!」
「そしてその首を!」
「甘い!」
 傷を負ってもだった。道三はそれでも気力を振り絞り槍を振り回した。それで兵達を寄せ付けないのだった。
 そうした戦を続けてだった。何十人もの敵兵を倒した。しかしだった。
 気付けば矢を受け刀や槍も受けだった。傷を増やしていた。だがそれでも彼は立っていた。
 既に城壁は超えられ城内に敵兵が雪崩れ込んできている。最早その勢いはどうしようもなかった。
 そしてだった。その傷を負っている道三もだった。遂に。
 銃声が響いた。その直後にだ。
 左足の腿を射抜かれた。それで動きを止めてしまった。
「くっ、抜かったわ・・・・・・」
「遂にだ!」
「動きが止まったぞ!」
「首を取るぞ!」
「いいな!」
 敵兵達はまた一気に襲い掛かろうとする。道三の運命が遂に終わろうとしていた。
 だが彼はまだ死ぬ運命になかった。そこにだった。
 生き残った道三の兵達が来てだ。主に襲い掛かる兵達に一斉に攻撃を浴びせ退けたのであった。
「何っ、まだこれだけの兵がいたのか!」
「くっ、あらかた討った筈だが」
「まだいたのか」
 これでだった。義龍方の兵達は道三を討ちそこねてしまった。 
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