戦国異伝
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第十五話 異装その四
「その鉄砲を使われてです」
「鉄砲を五百とは。また金がかかったろうに」
「それでも織田殿は持たれています」
「そしてその五百の鉄砲をか」
「戦の場で使われてです」
「尾張を一つにしたか」
槍と鉄砲、不破はこの二つを心に刻んだのだった。
そのうえでだ。再度竹中に対して問うた。
「しかし尾張の兵はだ」
「弱いと言われるのですね」
「そうだ、尾張の兵は弱い」
兵の話もするのだった。
「今川も弱いというがだ。おそらく尾張の兵はだ」
「三好や北条、そして不破殿が仰ったその今川の兵とです」
「同じだけ弱いな」
「はい、弱いです」
竹中はこのこともよくわかっていたのだった。
「少なくとも美濃の兵よりは遥かにです」
「それはどうなのだ」
「これもです」
ここでまた言う竹中だった。
「織田殿はかなり鍛えておられるそうです」
「鍛えておるのか」
「しかも」
「しかも?」
「ただ鍛えているのではなく」
それだけではないというのだ。
「我々は百姓を足軽にしていますね」
「うむ、その通りだ」
これはどの国でも同じである。百姓の次男や三男を戦の時に駆り出しそのうえで槍を持たせているのである。それが足軽なのだ。
しかしだ。竹中はここでこう言うのだった。
「それがです」
「違うのか、尾張では」
「足軽はそのまま足軽です」
「百姓ではないのか」
「それとは分けられ。ただ戦をする為だけにいるのです」
「というとだ」
不破もその話を聞いてわかったのだった。
「あれか。刈り入れだからといってそれで帰るということはないのだな」
「そうです。その時も戦ができるのです。しかも」
「しかもか」
「常に鍛えられるのでそれなりに強くもあります」
「あの尾張の兵でもか」
「はい。ですから兵もです」
「それなりに強い」
不破もこれでわかった。
「そういうことか」
「はい、その通りです」
「まずいな、それは」
ここまで聞いてだった。不破の顔が曇った。
「では尾張は尋常ではない強さではないか」
「しかも兵は一万五千います」
「数も多いな」
「ですから。尋常な相手ではありませぬ」
「敵に回すと厄介だな」
「間違いなく先代よりも」
信秀のことである。彼にしても美濃にとっては厄介な相手であった。信長はその彼以上だというのだ。それが竹中の見たところである。
「殿もそれを御承知です」
「それで会談に赴くか」
「この会談」
また言う竹中だった。
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