戦国異伝
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第十三話 家臣達その十二
「では猿よ」
「は、はい」
木下はその主に幾分戸惑いながらも応えた。
「ではそれがしに」
「仕事をやろう」
早速言う信長だった。
「それでよいな」
「仕事をですか」
「まずは清洲の兵糧の帳簿を付けよ」
信長が最初に命じたのはこれであった。
「そしてそれが終わり次第だ」
「次は」
「また清洲じゃ」
こう言ってからであった。
「清洲の城壁を修復せよ。よいな」
「その二つをでござるか」
「確か御主には弟がいたな」
「秀長のことでございますか」
「その者だ。その者も使ってよい」
弟を助けにせよというのだった。
「そうせよ、よいな」
「はい、それでは」
「いえ、殿。ここはです」
木下が信長の方を向き畏まって一礼したところでだ。蜂須賀も言ってきたのであった。
「猿一人、弟がいたとしても二つの仕事はすぐにはできませぬ」
「小六、ではどうだというのじゃ?」
「わしも手伝ってよいでしょうか」
笑いながらこう名乗り出たのだった。
「それは駄目でしょうか」
「御主もか」
「左様です」
こう申し出るのだった。
「猿の手伝いをです」
「そういえば御主は」
「今は手の者達である川並の者達と治水にあたっています」
それがだった。彼が今信長に与えられた役目だった。信長は元々川とつながりのある彼を見てだ。そのうえで治水をさせているのである。
「ですがそれが一段落しますので」
「もう終わるのか」
「検分を御願いします」
「そしてそれでよしとなればか」
「はい、その時はです」
また信長に告げるのだった。
「御願いします」
「そこまで猿の手伝いをしたいのか」
「この猿、確かに小そうございます」
まずは彼のその小柄さを指し示す。これはもう誰が見ても明らかなことである。
「それに力もなくおまけに顔も不細工でございます」
「全く褒めておらんではないか」
「しかしそれがです」
「それがか」
「どうしてか。憎めませぬ」
その木下を見ながらだ。蜂須賀は話していく。
「だからこそです。ここはどうかわしも」
「ふむ。確かにな」
信長もだ。彼の申し出を受けてだ。少し考える顔になってそれからまた述べるのだった。
「一人では限度があるな」
「左様でございます」
「例え弟がいたとしてもじゃ」
「ですからわしもです」
「よし、わかった」
信長はここまで聞いて納得した顔で頷いた。そうしてだった。
「小六、そなたの仕事が一段落しそれがよしとなればだ」
「その時は」
「この猿を助けるがいい」
そうせよというのだった。
「よいな、それで」
「有り難き御言葉、それでは」
「しかし。また思わぬ話じゃな」
信長はいぶかしむ顔も見せてまた語った。
「猿と小六か」
「全くですな」
村井も主と同じ顔になって述べた。
「まさかそうくるとは思いませんでした」
「吉兵衛、御主もか」
「ええ、この二人とは」
村井は主にも述べた。
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