戦国異伝
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第十三話 家臣達その八
「これ程の者達が拙者に集ってくれたのだからな」
「幸村様だからこそ」
「だからなのですが」
「それではいけませんか」
「だからだ。拙者は幸せ者だ」
感涙せんばかりだった。十勇士達の言葉にだ。
「では拙者も同じ誓いをしよう」
「はい、では我等」
「死す場所は同じです」
「主従として永遠に」
「何があろうともお仕えします」
「この命にかけて」
「うむ!」
幸村は大きな声で頷いたのだった。そうしてだった。
彼等は今誓い合った。それは主従の誓いであったがそれ以上のものがあった。漢と漢のだ、真の信義がそこにあったのである。
真田幸村は漢だった。そして信長はだ。また家臣達を集めていた。そのうえで、であった。
「またわしの下に人が来ておるのだな」
「はい」
「その通りでございます」
林兄弟がその主の言葉に答えた。
「この度もです」
「殿のことを聞いてです」
「よいことじゃ。わしの下には人が集うか」
「当然でありましょう」
柴田が豪快な笑みと共に言った。
「優れた者ならば誰であろうと用いられるならばです。人が集まるのはです」
「しかしじゃ。権六よ」
信長はその柴田に顔を向けて言った。
「わしの目は厳しいぞ」
「確かな者でなければですか」
「絶対に用いぬ」
これは断言であった。
「決してじゃ。しかも」
「しかもでござるか」
「己の為すべきことに励まぬと上にはあげぬぞ」
このことも言い加えたのだった。
「しかとな。励むがよい」
「厳しい殿でござるな」
「これでも爺よりは優しいぞ」
信長はここでは冗談を言ってみせた。
「爺なぞじゃ。わしなぞ比べものにならん程じゃろうが」
「いやはや、全くでござる」
ここで信長の言葉に大きく頷いたのは慶次であった。
「おかげでわしは頭はたんこぶだらけでござる」
「慶次、御主今度は何をやったのじゃ」
佐々が呆れた顔で慶次に問うた。
「また氷風呂を馳走したのか?」
「いや、今度は食事をな」
「それを馳走したのか」
「南蛮から来た唐辛子をこれでもかと入れたらのう」
そうしたと聞いてだ。周りは呆れてそれぞれ言った。
「いや、それはだ」
「そなたが悪いぞ」
「全くだ」
「あの様な辛いものをふんだんに入れて食わすとな」
「流石に誰でも怒るぞ」
「いや、平手殿まずは口から火を噴いたみたいになってのう」
まずはそれだというのであった。
「そしてそれからじゃ」
「それからか」
「怒ったのじゃな」
「そっちも火の様じゃった」
そうだったというのである。
「怒って怒ってのう。わしの頭をこれでもかとじゃ」
「そんなことをすれば殴られて当然じゃ」
前田は甥にこう言い捨てた。
「よくもまあ手打ちにならなかったものだ」
「ううむ、刀は抜かなかったのう」
「そういえば平手殿は決して刀は抜かれぬのう」
「確かに」
「それはないな」
「一度もな」
「遊んでおるのではないですかな」
島田はそれではないかと述べた。
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