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戦国異伝

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第十三話 家臣達その六


「私はより強くなります」
「謙信様もまた」
「天には果てがありません」
 何処までもあるというのである。上がだ。
「ですから。私は何処までも昇りましょう」
「そして天下に」
「義を」
 これが謙信の願いだった。ここまで話して直江を下がらせだった。一人になると酒と梅を出しだ。この二つで楽しむのであった。
 信濃でも越後でも今は政に専念していた。幸村もその中にいた。
 彼は今は鍬で畑を耕している。服も百姓のものだ。その彼のところにだ。十人の男達が来たのだった。
「幸村様」
「ここにおられましたか」
「うむ、いい汗をかいている」
 実際に額に汗を流してだ。そのうえで彼等に言葉を返した。今空は青く雲一つない。日輪が照り実に素晴しい景色となっている。
 幸村はその中で畑を耕してだ。その彼等と話すのだった。
「御主等もか」
「はい、そうさせてもらっています」
「今は」
「うむ、よいぞ」
 幸村は彼等の言葉を聞いて笑顔になった。実に爽やかな笑顔である。
「ただ戦をしているだけでいいわけではないからな」
「畑仕事もですか」
「それもなのですか」
「いやいや、政だ」
 幸村は笑ってこう訂正させた。
「これは政なのだ」
「いや、これは畑仕事では」
「そうとしか思えませんが」
「確かに」
「拙者はまだ政についてよくは知らない」
 幸村はここでこうも話したのだった。
「だからこうして畑を耕しているのだ」
「そうだったのですか」
「それでなのですか」
「そうだ。そういうことだ」
 こう話すのであった。そうしてであった。
「そしてだ。御主達もやってくれているな」
「まあ我等はです」
「幸村様にお仕えしていますし」
「ですから」
 彼等にしてはだ。そうだというのであった。そしてその彼等にだ。幸村は言うのだった。
「拙者に仕えてくれるか」
「我等の主は幸村様です」
「そして信玄様ですね」
「ですから」
「有り難い。そう言ってくれるか」
 幸村はここであらためて彼等を見た。そうしてだった。
 まずはだ。緑の忍装束に茶色の総髪を髷にした男に言った。精悍な顔立ちでしかもその背中には大きなマントと銃があった。
「穴山小助」
「はい」
 次はだ。ざんばら髪に灰色の忍装束の男であった。鋭い目をしている。その腰には鎖鎌がある。それを持つことはないが鋭い輝きを放っている。
「由利鎌之助」
「はい」
 三番目はだ。大柄で岩の様な顔をした男だった。両腕の筋肉が凄まじい。まるで全てを破壊できるかのようである。服は黒い忍装束である。
「望月六郎」
「はい」
 四番目は鉢巻をして大きな目を持つ髪を立たせた男だった。手が長い以外は普通の外見だ。そして彼は藍色の忍装束だった。
「海野六郎」
「はい」
 五番目はだ。覆面をした白い忍装束の男であった。雰囲気はかなり静かだがだ。そこには恐ろしいまでの気迫も感じられるものがあった。
「根津甚八」
「はい」
 六番目はだ。茶の忍装束である。髪は薄く細長い顔をしている。目は何かを悟ったようなものである。その両手に複雑な紋章が描かれている。
「筧十蔵」
「はい」
 七番目は僧侶だった。大柄であり思慮深そうな顔をしている。目も穏やかである。その彼は手に杖を持っていた。鋼の杖であった。
「三好伊三入道」
「はい」
 八番目も僧侶だった。豪快な黒い髭を生やし先の僧侶よりもまだ大柄である。その彼の手にあるものはだ。まさしく鬼が持つ金棒だった。
「三好清海入道」
「はい」
 九番目は青い忍装束の涼しげな顔立ちの青年だった。長い髪を後ろで束ねている。そしてその背にはだ。長い刀があった。
「霧隠才蔵」
「はい」
 最後はだ。赤い忍装束の子供だった。黒い髪にまだ幼い顔をしている。小柄だがそれでもだ。身のこなしが尋常なものではない。細かい動き一つ一つがそうだった。
「猿飛佐助」
「はい」
「そなた等真田十勇士」
 幸村は彼等を一つにしても言ってみせた。 
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