戦国異伝
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第百九話 尾張者達その五
「そして福島正則」
「市松ですな」
ここからそれぞれの名前と幼名が言われる。信長と平手が交互に言い合う。
「加藤嘉明」
「孫六」
「脇坂安治」
「甚内」
「平野長泰」
「権平」
「糟屋武則」
「正之助」
「片桐且元」
「助作」
武に秀でた者達だったが信長は彼等を見てこうも言う。
「武じゃが政にも励んで貰うからな」
「織田家はむしろ政」
「だからこそですか」
「それは御主達も同じじゃ」
ここで他の面々も見る信長だった。無論彼等の名前も呼ぶ。
「浅野幸長」
「長満」
「池田輝政」
「古新」
「小寺長政」
「吉兵衛」
「細川忠興」
「熊千代」
「蜂須賀家政」
「彦右衛門」
こうした面々だった。彼等の名を平手と共に挙げてから信長は池田、小寺、そして蜂須賀を見て言った。
「御主達も意外と大きな子がおるのう」
「殿、古新ですが」
池田が自分の末弟のことを信長に話す。
「あえて申し上げますが」
「まあまだ若いのじゃがな
「はい、それでもですか」
だがそれでも信長はあえて家臣にしたのだ。
「それでもですか」
「それだけの資質があるからのう」
「だからですか」
「そうじゃ。だから用いる」
それ故にだというのだ。
「それに細川殿の子もな」
「家臣になされますか」
「細川殿にも織田家から禄を出しておる」
このことから細川は幕臣だが織田家の家臣とも考えられる。
だからこそその子忠興もだというのだ。
「若いがのう」
「それでもですか」
「そうじゃ。家臣として用いる」
彼も然りだというのだ。
「そうするからのう」
「わかりました」
「そしてじゃ」
残る面々の名前と幼名も言われる。
「前田玄以」
「孫十郎」
「増田長盛」
「仁右衛門」
「長束正家」
「新三郎」
「藤堂高虎」
「与右衛門」
「小西行長」
「弥九郎」
以上だった。信長は平手と共に彼等の名前と幼名を全て言いそのうえでさらにこんなことまで言ったのである。
「これで終わりではなくじゃ」
「さらにですか」
「家臣を集められますか」
「そうする」
言うのはこのことだった。
「何しろ天下を目指すからのう」
「そうですか」
池田が信長の言葉に頷く。
「それでは」
「うむ。今も二十国を一つにして治めねばならん」
「それにはですか」
「人は幾らおっても足りんわ」
「ではこの者達も」
「だから政でも頑張ってもらうわ」
やはりそうするというのだ。
「しかし慶次と才蔵はこれまで通りじゃ」
「政には用いられませんか」
「そうするわ」
「いや、それがし達も政は興味がありませんので」
「戦の時にお呼び下され」
その二人も笑って言って来る。
「何しろ天下の不便者」
「そういう者達ですから」
これがその慶次と可児の返事だった。
「文ならできますが」
「政はどうしても」
「御主達に政をせよとは言わぬ」
信長も笑って言う。
「御主達は御主達の出来ることをせよ」
「では不便者を目指します」
「これまで通り」
「全く。殿はこの二人、特に慶次に甘いですぞ」
信長は笑っているがそれでも平手は苦い顔で袖の中で腕を組みこう言うのだった。
「こ奴は暇があれば悪戯をしますが」
「いやいや、頭を働かせております」
啓次は己の左手を頭の後ろにやってひょうきんな笑顔になっている。
「頭も常に動かさなければ鈍くなります故」
「では和歌なり書なりあるであろう」
「風流もいいですが身を立てる学問はしませぬ」
慶次の学問は楽しむものだ。だからなのだ。
「そうしたことは嫌いで」
「気の赴くままに学ぶというか」
「左様です」
「学問はせよ」
平手は平手らしく注意する。
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