戦国異伝
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第百六話 二条城の普請その二
「織田家は頑固者にも困っておらぬな」
「しかしその頑固もです」
「織田家にとってはじゃな」
「固い石垣となりましょう」
「石垣だけで満足してもらっては困るな」
ここでこうも言う信長だった。
「さらにじゃ」
「それにでございますか」
「うむ、堀にも壁にもなってもらう」
これが信長の言葉だった。今の。
「そして櫓にもじゃ」
「全てにですか」
「武田信玄じゃったな。人は城であり石垣じゃ」
「その通りですな」
「わしも同じ考えじゃ。例えどれだけ堅固な城でも人がおらねば陥ちる」
実際に岐阜城も稲葉山城と呼ばれていた頃龍興の暗愚さから人は離れ城は信長のものになっている。そこから言うのだった。
「人はまさに城そのもの、即ちじゃ」
「城は国とも言いますぞ」
「そうじゃ。爺等頑固者達にも国になってもらう」
こう言うのだった。
「よいな。してじゃ」
「城ですぞ」
「二条城じゃ。それの普請じゃがな」
「公方様は前から思っていましたが」
平手から見た義昭はどうなのか。彼はそれを言うのだった。
「せっかちな方ですな」
「そう思うか」
「はい、殿はどう思われるでしょうか」
「確かにせわしない方じゃ」
「ああした公方様はといいますと」
平手は岐阜で義昭に会っている。それで言うのだった。
しかし賢明な彼はすぐに思いなおしそのうえで信長にあらためて述べた。表情も引き締まり油断のないものになっている。
「何でもありませぬ」
「言わぬがよいな」
「そうですな」
「とにかく二条城を築きじゃ」
信長はあらためて話す。
「公方様はその城に入ってもらう」
「これでかなり安心していいですな」
「そう思う。ただな」
「ただとは?」
「勘十郎が戦ったあの僧兵共のことはまだよくわかっておらん」
彼等のことは今も尚不明だった。あれから結構経っているがだ。
「また急に来やもな」
「確かに。それは」
「有り得るであろう」
「そう思います。今都を脅かすといえば」
既に周辺の国は全て押さえている。摂津、大和、丹波、近江の南は全て織田家の領地となっている。その政を今進めているところだ。
都の周りは全て織田家の領地だ。それでは都を脅かすとなると。
「淀川も押さえていますし。最早」
「瀬戸内の東もな」
「海や川から都に攻め上がることはもうありませぬ」
「そうなればかなり限れる」
「僧兵達だけですな」
平手はその彼等の名前を出した。
「まだまだ僧兵達が多いですから」
「そうじゃな。特にな」
「延暦寺ですな」
「あの寺が一番厄介じゃな」
「はい」
その通りだと話す平手だった。
「古来より都の護りを司ってきましたが」
「霊的なものだけならいいがのう」
「しかしそれだけではなく」
「僧兵達もおる」
だからだった。
「あの寺は古来から何かあると攻めて来たわ」
「都の風物詩みたいなものになっています」
あまりよい意味でなくそうなっていた。平安の頃より僧兵達は何かあると強訴等に来た。タイラの虚森や鎌倉幕府とも争ってきた。
僧兵達は強く数も多い。それ故にだった。
「今のところは大人しいですし二条城に強訴に来ても」
「攻めることはですな」
「それはない」
信長は言う。
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