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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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第82話 文化祭(フェイト)

「………一体どうしたんだフェイトは?」

「確かに変ね、ずっとぼーっとしてるし………」

コーヒーの入ったコップを持ち、ソファに座ってぼーっとしてるフェイト。
誰がどう見ても様子がおかしい。

そんなフェイトを見て、エイミィとクロノは首を傾げていたのだった。

「フェイト?」

「うん?お母さん?」

そんな様子に心配したリンディが声をかけた。

「今日学校で何かあったの?」

「う、ううん!!な、何も無いよ!!」

慌てて否定するフェイトにその場に居た3人は何かあったのだと確信したのだった………











「ねえアルフ」

「何だ?」

エリオとゲームで遊んでいたチビッ子アルフはゲームをしながらもフェイトの話を聞いていた。

「男の子って頬にキスされたりしたらやっぱり好きになるのかな………?」
「いきなり何を言ってるんだ?」

そんなフェイトの呟きに、エリオも反応する。

「フェイトさんはレイ兄にキスしたの?」
「ししし、してないよ!!何を言ってるのエリオ!!」

そんなエリオに大声で否定するフェイト。

「フェイト、勝負に出たなぁ………」
「フェイトさんが結婚したらレイ兄は本当のお兄さん?」
「むしろお父さんじゃないか?」
「なるほど!」

「だから違うって!!」

顔を真っ赤にして叫ぶフェイト。
そんなフェイトの様子を見て、アルフとエリオが笑った。

「分かってるって、そんなにムキになるなよ〜」
「ごめんねフェイトさん」

「全く………まさかエリオまでからかうなんて思わなかったよ」

「そうだな、真面目なエリオにしては珍しい」

「友達にお手本になる人がいるから」

「ふ〜ん、今度会ってみたいな………」

そんな会話をしていたフェイトはその時だけ、悩んでいた事を忘れたのだった。












「ふう………」

風呂上がり、パジャマ姿で髪をタオルで拭きながら冷蔵庫を開けるフェイト。

「コーヒー牛乳〜」

風呂上がりにコーヒー牛乳を飲むことが今のフェイトのマイブームであった。
なのだが………

「コーヒー牛乳が無い!?」

コーヒー牛乳は子供にも飲みやすいので人気である。
要するに、エリオからリンディまで皆が飲んでいた為無くなっていたのであった。

「そんな………」

ショックを受けながらソファに座り込むフェイト。
そんなフェイトの隣にリンディが座り込んだ。

「悩み事は解決したの?」
「悩み事………?」

何か悩んでたっけ?と首をかしげるフェイト。そんなフェイトにリンディは苦笑いした。

「全く、文化祭から帰ってきてぼーっとしてたじゃない………」
「文化祭………?」

文化祭と聞き、頭の中にあの屋上での出来事が再び浮かび上がった。

「そうだった………」
「あれ?本当に忘れてたの?」

またもぼーっとし始めたフェイトにやってしまったと後悔するリンディ。
軽く魂が抜けているんじゃないかと思うくらい、ぼーっとしている。

「取り敢えず私に話してみない?少しは悩みも晴れるかもよ?」

そんな問いかけに反応が無く、駄目だと思ったとき………

「………なら聞いてくれる?」

フェイトがいきなりそう言ったのであった。










「なるほどね………」

フェイトの話を一通り聞いていたリンディは中々面白いことになってるなと内心ワクワクしていた。
フェイトの母親になってから容姿は可愛いのに浮いた話が一つも無いことに残念だと思っていただけに、どうなるかとても楽しみだった。

「フェイトはそれを見てどう思ったの?」
「どうって………」

フェイトは暗い顔をして、胸に手をあてる。
そんな様子を見て、リンディは確信したのだが、本人の口から聞かなければハッキリしないのでもう少し揺さぶってみる事にした。

「フェイトはアリサちゃんの事を心から応援したいと思った?」
「わ、私は………」

そう言って黙ってしまうフェイト。
だけどリンディは何も声を掛けなかった。

「アリサは友達だし、応援したいと思うんだけど、2人が恋人として歩いている所を想像したら胸が苦しくなるんだ………」

フェイトは悲しそうな顔で弱々しく呟いた。

(自分が零治君の事を好きになってきているって事とアリサを友達と応援したいという気持ちが交差してるのね………)

そう思ったリンディは考え直し、真剣に彼女の悩みを聞くことにした。

「フェイトはどうするべきだと思う?」

「………私?」

「そう、フェイトの気持ち。アリサちゃんがどうかとは取り敢えず置いておいて」

「私は………」

そう言って考え込むフェイト。
リンディはフェイトが口を開くのをずっと待っていた。

「私は………私は、優しくて気が利いて、困ったときには文句を呟きながらも助けてくれる零治が好きだよ。だけどこれがどんな好きなのか分からないの………」

「そう………」

「でもね、さっきも言ったけど2人が恋人として歩いている所を想像したら胸が苦しくなるんだ………ねえ母さん、これってどんな好きなのかな?」
「………それは私からは言えないわ。自分で答えを出しなさい。悩みを解決出来るような答えをじゃ無くてごめんね。けれど今回思った気持ちを大事にしなさい。女はそんな経験をして更に綺麗になるのよ」

そう言ってリンディはフェイトに笑いかけた。

「うん、分かったよ母さん………」
「それとアリサちゃんに遠慮する必要は無いわよ。遠慮した方が相手を傷つけるのだから。私も若い時は………」

この後、2人は夜遅くまで話していたのだった………









次の日学校に来たフェイトは零治の姿を見かけて少し違和感を感じた。

(何か悩んでる………?)

いつもの元気な姿だけど何か悩んでいる様に感じた。


それは星達も気がついてるみたいだけどあえて触れていないような感じがした。
何故だか分からないけど、私は理由を知っているのでとても気になった。




零治は女装を終えると、そそくさと教室を出ていく。
そんな零治にアリサがついていった。
私も後をつけようとしたら誰かに肩を掴まれた。

「星?」

「駄目ですよフェイト、これは2人の問題です。」

「そうだよフェイト、覗いたら駄目だよ」

「我等が関与することではない」

フェイトを止めたのはマテリアルの3人だ。
彼女達も零治の動向を気にしていたのだった。

「3人も気づいていたの?」

「何に悩んでいたかは聞いてないので分かりませんでしたけど」

「だけどアリサと関係があったんだね………」

「………気にならないの?」

「我等は零治が言うまで問い詰めるつもりはないよ。待ってくれれば話してくれると信じているからな」

(心の底から信頼し合ってるんだな………)

そんな夜美の言葉にフェイトは羨ましく思ったのだった。









その後帰ってきた2人はいつもの2人だった。
話して、アリサが突っ込んで零治が避ける、いつも通りの光景だった。

だけどアリサの表情がいつもより柔らかい様な………

「レイ、話があります」

「えっ!?いや、俺これから会長に呼び出しを………」

「大丈夫だ、直ぐに終わる」

「レイがちゃんと話してくれればね」

そう言って夜美が零治の腕を掴み、その後ろを星とライがついていった。
そして夜美は零治を引きずっていく。

「フェ、フェイト………」

「あはは………」

スピーディな3人の対応に私は苦笑いでしか返せなかった………











「お客さん来ないね………」

「そうだね………」

文化祭が始まり、暫くしてからフェイトとなのはの順番になったのだが、2ーA組には客が全く来ていない。
受付をしているなのはとフェイトはぼーっとしながら呟いていた。

「ねえなのは………」

「何………?」

「なのはって好きな人いる?」

「す、好きな人!?わ、私はそんな人いないよ。フェイトちゃんはいるの………?」

「………分かんない」

そんななのはの問いにフェイトは分からないと答えた。
今日だけでも星達の考えや、零治とアリサの関係も見たはずなのだが未だに答えが出ないでいた。

「分からない?」

「うん、友達と好きなのは確かだけど、それが友達としてなのか、1人の男の子として好きなのか分からないんだ」

「友達か1人の男の子として………か」

「うん」

そこで暫く二人は無言となる。

「………私は男の子で好きな人は沢山いるよ。ユーノ君にクロノ君に桐谷君に零治君」

零治君と言った時にフェイトはビクっと反応してしまった。

「あれ?もしかしてフェイトちゃん………」
「交代だよ2人共」

そんな時にちょうどすずかが受付にやって来た。

「あっ、すずか!!ごめん、それじゃあ後よろしく!!」
「あっ、フェイトちゃん!!」

なのはを無視して、フェイトはさっさと何処かへ行ってしまった………

「喧嘩?」
「ううん、そんなんじゃないの………」

残された2人は何とも言えない雰囲気になってしまった………








「はぁはぁ………」

走り去ったフェイトはその足で外に出ていた。
暫く走り回っていたのだが、疲れてきたので近くに人の座ってないベンチを見つけ、そこに座って息を整える事にした。

「何で逃げちゃったんだろうな………」

あの時、逃げずに否定してればいいはずだった。
なのにフェイトはそれをせず、追求から逃げるようにその場を後にした。

これじゃあまるで………

(私は零治の事を1人の男の子として好きなのかな………?)

ベンチにもたれ掛かって空を見ながらフェイトは思った。
しかしそんな実感は自分には無く、余計に混乱してしまう。

「はぁ………何だか辛いな………」

そう言って溜息をつく。

「何だか疲れてるな?」

そんなフェイトに声をかけたのは真っ赤なドレスを着た零治だった。

「有栖川レイカ、ただいま見参よ!!」

一回転してサムズアップした零治。
一旦空気が固まるが………

「ぷっ、何よ有栖川レイカって………」

フェイトに笑みが溢れた。

「良かった、笑ったな」

「あっ………」









「学校を見回りしてたらフェイトが暗い顔してベンチでぼーっとしてたからな、気になって来てみたんだが………何があったのか?」

「ううん!!何も無いよ!!」

大きく手を振り、大げさに否定するフェイト。
そんなフェイトに零治は苦笑いした。

「分かったから少し落ち着け。それとほれ………」

フェイトに向かってオレンジジュースの缶を渡す。

「あ、ありがと」

「隣座るぞ」

「あっ」

答えを聞かずフェイトの隣に座る零治。
座ったと同時に大きく息を吐いた。

「何だか疲れてる?」
「ああ、さっきなのはと共に迷子の相手をしてたからな………ったく、やんちゃなガキンチョだったから結構大変だったよ………」

笑いながらそんな愚痴を言う零治。しかしフェイトから見てとても楽しそうに見えた。

「………けれど楽しかったんでしょ?なのはと一緒にいて」

「?何でそんなに口を尖らせてんだ?」

「別に尖らせてなんか………」

「そうか?」

そう言って零治は自分の買ってきたコーヒーに口を付ける。
そんな零治を見て、

(やっぱり朝よりスッキリしてる、アリサと何があったんだろう………)

更に気になってしまったのだった。

「ねえ朝なんでアリサと出ていったの?」
「ん?朝?」
「何だか零治思いつめた様な顔してたじゃない………」
「俺してたか?」
「うん」

そう言うと零治は両手でコーヒーの缶を持ち、両肘を太ももに乗せ、前かがみになった。

「まあ色々とな………」
「色々………」

そんな曖昧な答えにフェイトの顔が険しくなる。

「き、昨日の事と関係あるの………?」

「昨日?」

「零治、文化祭が終わってアリサを探しに行ったじゃない?」

「行ったけど………フェイトあの場にいたっけ?」

(あっ!?そう言えば私トイレ行ってた!!)

「か、帰ってきてすずかに聞いたの!!」

少し焦った様子で力強く言うフェイト。

「そうか………」

「だ、だから別に後をつけた訳じゃ………あっ」

「後を付けた………?」

焦った拍子に更に口を滑らせてしまうフェイト。

「さて、詳しく教えてもらおうか………?」

もはや逃げられなかった………









「あ、あのね、私がトイレから出ていった時に、ちょうど慌てて走る零治を見かけて………何かあったのかと思って後を追ってみたんだけど………零治怖いよ………」

睨みながらフェイトの弁解を聞く零治。
そんな零治にビクビクしながら答えたのだった。

「………」
「えっと………嘘は言ってないよ………」

しかし零治は以前黙ったまま何も言わない。
そして静かに手をフェイトの所へもっていき、

「いひゃいいひゃい………」

鼻を思いっきり摘んだのだった。

「全く………管理局の執務官は覗きも仕事なのか?」

「ち、違うけど………」

「まあ俺を心配してくれたんだからこれくらいで許してやるよ」

「えっ!?」

「元々そこまで気にする事じゃ無いしな。あれはアリサのお礼だってよ」

「えっ!?」

「よくあるじゃん、海外の人だとお礼や挨拶で手や頬にキスしたりするだろう?」

「えっ!?いや、でもあれは………」

「まあそう言う事だから深く詮索する必要無いぞ」

「そうなの………?」

「そうなんだ、だからこの話は終わりな」

零治がそう言ってので否応無しに頷くしか無かったフェイトなのであった………











「おっと、そろそろ行かなきゃな………」

校庭にある時計を見て、零治が立ち上がる。

「あっ、零治!!」

「ん?何だ?」

「あのさ、零治って好きな人いるの?」

「はい!?」

いきなりの質問で零治が変な声を上げた。

「い、い、いやだってアリサにあんな事されたのに………」
「ああ………」

そう言って腕を組んで考え込む零治。

「だけど俺は………」

そう言って言い淀む零治。

「零治………?」

「………秘密だ」

「えっ!?」

「だから秘密だ」

「ええっ!?ここまで引っ張っておいて!?」

「悪いな、いざ考えてみると恥ずかしくなってな」

フェイトの言葉に苦笑いで言う零治。

「それに、俺が言うのならフェイトも言うんだったら考えるけど………?」

「ふぇ!?だ、だったらいい!!」

「おっ、その反応だとフェイトにも思い人が………!?」

「零治!!」

「おっと、怒りに触れる前にさっさと行くな」

そう言って零治はさっさと行ってしまった。

「全く………」

そんな後ろ姿を見送ったフェイトに自然と笑みが溢れた。

「あらあらお楽しみの時間は終わりみたいね」
「えっ………母さん!?」

少し離れた茂みの中からリンディがゆったりと現れた。

「何で!?今日は皆仕事って………」

「ちょっと気になったから休憩の合間に見に来たのよ」

「もしかしてさっきの会話を………」

「ええ、全部聞いていたわ。前にも話した事があるけど気が利いて本当に良い子じゃない」

「えっ!?それはそうだけど………」

「でもちょっと天然女たらしみたいな気がするわね………気を付けないと誰かに取られるわよ?」

「べ、別に私は………」

「そう?一緒に居たフェイトはとっても楽しそうに見えたけど………?」

「わ、私は………」

「ほら見てみなさい」

リンディの指の先には腕を組んで歩いてる零治とはやてが………

「………何で?」
「さあ?」

そう言うリンディの顔は笑顔だ。

「あれを見ても何も思わないの?」

「そう言われても………」

「あら?今度はなのはちゃん?」

リンディの言うとおり、視線の先の零治にはなのはが泣きついている。

「今度は何?」

「さあ?だけど零治君の周りには自然と集まるわね」
「星………?」

今度は星と夜美が慌てた様子でやって来た。

「いいから離れろー!!!」

慌ただしくなり、直ぐに注目の的となった。

「あらあら………だけどフェイト、正直になっておかないと他の子に負けちゃうわよ?」
「私は………」
「私のお節介もこれでおしまいにするわ。後は自分で決めなさい。人を好きになるって素晴らしい事よ」

そう言い残してリンディは行ってしまった。

「………」

フェイトはその後もゴタゴタとしているじぃっと零治達を見ていた。












文化祭も終わり、現在後夜祭の準備に取りかかっている。

「………」

そんな中フェイトはベンチに座りながら作業の様子を見ていた。

「どうしたのよ………?」
「アリサ」

そんな様子を見かねたアリサがフェイトの隣に座った。

「何だか考え込んでたけど………」

「ねえアリサ、アリサは零治の事が好きなの?」

「えっ!?」

「だからアリサは零治の事が好きなの?」

「い、いきなり何を………」

「私ね、アリサが零治の右頬にキスした所見ちゃったの………」

「あ、あれはお礼みたいなもので………」

「本当に………?」

真剣に聞いてくるフェイトにアリサは大きく息を吐き、フェイトの目を見て、

「………私は零治が好きよ」

真剣に答えたのだった。

「そう………」

それに対してフェイトは一言だけ言って黙ってしまった。
暫く2人で黙って座っていたが、先に話したのはアリサだった。

「それでフェイトはどうなのよ?」
「私?」
「そう。私に聞いてきたんだから私に言いたい事があるんでしょ?」

アリサがそう言うとフェイトは再び黙ってしまう。

「どうなの?」

しかしアリサはそれを良しとせず、再びフェイトに聞き直した。

「私は………零治が誰かと2人で楽しく話したりしてると胸が苦しくなるの。それがどう思ってか私は分からなかったけど、やっぱり私は………」

そこまで言ってフェイトは立ち上がった。
目の前を見てオレンジ色に染まった空を見上げた。

「私は零治が好き。優しくて、気が利いて、お節介な零治が1人の男の子として大好き」

そうアリサに言ったのだった。

「そう………」

言われたアリサは暗くなるわけでも無く、むしろ嬉しそうに言った。

「なら私達は恋のライバルね。ライバルは多いわよ………加奈もそうだし、星、ライ、夜美も。多分他にも居るわよ」

「そうだね………でもこれは本当の気持ちだから………」

スッキリとした顔で言い切ったフェイトに対してアリサは大きく溜息を吐いて立ち上がった。

「全く………フェイトも苦労する相手に恋をしたわね………」
「お互い様だね」

そう言ってお互い見合って………

「「アハハハハ!!」」

お互い笑い合った。
その後も2人はキャンプファイヤーが始まるまで零治の事を話題にして話していたのだった……… 
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