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戦国異伝

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第九話 浮野の戦いその五


「うつけではないかも知れぬな」
「あの戦ぶり、尋常なものではありません」
「戦上手かと」
「それで清洲は奪われたのう」 
 信賢も鋭い目になっている。
「そうじゃな」
「はい、そう思います」
「だからこそです」
「鉄砲に槍じゃな」
 また言う信賢だった。
「そうじゃな」
「はい、それです」
「ですからここはです」
「慎重に進むとしよう」
 こう決めたのであった。
「それでよいな」
「では我が軍全軍で」
「出陣しましょう」
「我が軍は六千」
 信賢は己の軍の数を述べた。
「対する弾正めは八千じゃ」
「数はあちらが有利」
「しかしです」
 山内と堀尾はここでまた言うのであった。
「地の利は我等にあります」
「ですからここは」
「そうじゃな。それを考えれば互角じゃ」
 数だけでなく地の利も考慮しての言葉である。
「では。後は戦い方次第じゃ」
「はい、それでは」
「今より」
 こうして信賢も出陣した。彼の家老である山内と堀尾も共に出陣する。しかしここで、であった。
「何っ、それはまことか」
「はい」
「美濃が動きました」
 家臣達がこうその出陣する信賢に話すのだった。
「道三自ら軍を率いてです」
「稲葉山を出たそうです」
「尾張に来るというのか」
 信賢はすぐにこう考えた。
「だとするとまずいな」
「殿、すぐに備えをです」
「備えをしておきましょう」
 山内と堀尾が主に上奏する。
「兵を置きです」
「そのうえで」
「そうじゃな。それで斉藤の兵は」
「二千です」
 報告に来ていた家臣の一人がその数をここで述べる。
「二千で、です。織田信清のいる犬山に向かっております」
「犬山か」
「あの織田信清も動きが定かではありませんし」
「斉藤と誼があるとも言われています」
 ここでまた言う山内と堀尾だった。皆既に鎧を着ている。陣羽織もだ。
「ですからここはやはり」
「備えを」
「そうじゃな。それではじゃ」
 信賢は暫し考えてだ。二人を見て言った。
「辰之助、そして小太郎」
「はっ」
「犬山にですね」
「兵は千」
 兵の数も言う。
「それだけ率いて備えとせよ」
「わかりました、それでは」
「我等が」
「弾正も気になるが信清も気になる」
 彼にとってはまさにどちらも敵であった。 
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