スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第八十七話 アシカ作戦
第八十七話 アシカ作戦
ティターンズとロンド=ベルの戦いの状況は他の勢力にも伝わっていた。とりわけ対岸の北アフリカでそれを見ていたネオ=ジオンはとりわけ強い影響を受けていた。
ティターンズの影響がなくなりそれまでトルコや中央アジアに向けていた兵力をネオ=ジオンに向けはじめていたのである。それはハマーンにもわかっていた。
「ギガノス地上軍もいなくなったことだしな」
ハマーンはトリポリに設けられた司令部において作戦を練っていた。そのテーブルの前にはメルカトル図法の地図が置かれている。
「安心して我等に兵を向けられるというわけか」
「おそらくは」
それにイリアが応えた。ランス=ギーレンやニー=ギーレン、そしてマシュマー達もそこにいた。
「兵力的には不利は否めないかと」
ランスが言った。
「確かにな」
そしてそれはハマーンも把握していた。
「火星の後継者達の援軍があってもだ。兵力的には劣っている」
「はい」
「そしてもう一つ懸念がある」
「それは」
「宇宙で新たな勢力が出現しようとしている」
「コーディネーターでしょうか」
「そうだ」
彼女はマシュマーの問いに答えた。
「あの者達の存在が明らかになった。これまでわかったことは彼等もまた強力な軍備を持っている」
「まさかあの様な者達がいるとは」
「強化人間なのでしょうか、彼等は」
今度はニーが問うた。
「コーディネートされているということは」
「原理的には同じようだな」
そしてハマーンもそう見ていた。
「ジョージ=グレンか。最初のコーディネーターと言われるのは」
「確か」
こうしたことも次第にわかってきていた。今ネオ=ジオンも他の組織もコーディネーターに対して急激に研究を進めていたのである。
「その者は人類の宇宙進出にはコーディネートする必要があると言ったそうだ」
「つまり強化ですか」
「全員がニュータイプになる。それがそのグレンという男の考えだったらしい」
「そして彼等はそのコロニーにおいて暮らしていたと」
「誰にもその存在を知られることなくな。地球圏への衝撃波も自分達で防いだようだ」
「かなりの科学力ですね」
それを聞いたイリアが顔を顰めさせた。
「我々に匹敵しますね」
「そうだ。その力は侮れるものではない」
「ハマーン様、その者達を放置していては」
マシュマーが声をあげた。
「いずれネオ=ジオンの理想に対して」
「焦ることはない」
だがハマーンはそれを宥めた。
「今彼等は特に行動を起こしているわけではない」
「しかし」
「放っておけ。それよりも他の勢力だ」
彼女は言った。
「今宇宙は更に混沌としてきた」
「はい」
「ティターンズにギガノスだけではない。バルマーやバーム等異星人の勢力もある」
「しかもここでコーディネーターも」
「不穏になってきている。今は地上に構っている時ではないかも知れない」
「それに近頃」
「グレミーのことか」
「はい。アクシズにおいて何やら動いている模様です」
「・・・・・・何かを企んでいるようだな」
「おそらくは」
イリアの目が光っていた。
「どうされますか」
「デラーズ少将はどうしているか」
「今のところは何も」
動いていないと言った。
「そうか。彼がいるうちは心配しなくていい」
「はい」
「まずは宇宙に戻る。そして火星を中心に勢力を蓄えるぞ」
「わかりました」
イリア達はそれを聞いて頷いた。
「ミネバ様にもお伝えしなければな。宇宙へ戻ると」
「それは我々が」
ランスとニーが出て来た。だがハマーンはそれを退けた。
「よい。私が行く」
「宜しいのですか?」
「ミネバ様は。私が側にいると喜ばれるらしい」
「左様ですか」
「私が行くのが一番いいだろう。わかったな」
「わかりました。では」
「うむ。すぐに撤退に取り掛かるぞ」
「はっ」
こうして彼等は散開した。だがイリアは一人そこに残っていた。そしてハマーンに声をかけてきた。
「ハマーン様」
「どうした」
ハマーンも彼女に顔を向けさせた。
「会議は終わった筈だが」
「先程のお話のことですが」
「グレミーのことか」
「はい。どうやら」
「自身の戦力を取り込もうとしているのだな」
「その中には既に多くの強化人間やニュータイプもいるようです」
「ふむ」
「そしてラカン=ダカランやシーマ=ガラハウとも接触している模様です」
「かなり動いているようだな」
「ここに来て。何故動いているのでしょうか」
「血のなせる業だ」
ハマーンはそこまで聞いて言った。
「血の!?」
「グレミーはギレン総帥の血を引いておられる」
「まさか」
イリアは驚きはしなかった。すぐにそれを否定しただけであった。
「ギレン総帥は生涯独身であられました。そして女性に関しても」
「試験管ベビーなのだ」
「試験管で」
「そうだ。総帥の精液からな。産み出されたのだ。それを知っている者は僅かしかいないが」
「そうだったのですか」
「おそらく何らかの経緯でそれを知ったのだろうな」
「そして反乱を企てていると」
「あの者にとっては正統な権利への要求だ」
ハマーンはクールに述べた。
「ジオンの者としてな」
「ですがその座には最早」
「そうだ、ミネバ様がおられる」
ハマーンの声が硬くなった。
「ミネバ様を退けることは何があっても許さぬ」
「はい」
「わかるな。だからこそグレミーの動きは看過出来ぬ」
「しかし今は泳がせるのは」
「デラーズ少将がいるからだ」
ハマーンは言った。
「彼がいる限り。グレミーとて迂闊には動けないからな」
「そして我々はその間に火星で勢力を蓄える」
「その通りだ。あの草壁という男も北辰衆も迂闊に信頼は出来ないがな」
「私もそれは同じです」
イリアはそれに同意した。
「あの者達は。小者です。ですが狡猾です」
「うむ」
「我等が不利になれば寝首をかくでしょう。その様な者達を信頼するのは危険です」
「我等は我等だけで勢力を蓄える」
「それが宜しいかと」
「よし。ではまずは火星に向かうぞ」
「はっ」
「そして勢力を蓄える。然る後に」
「再び地球圏を」
こうしてハマーン達は地球圏から退いた。これにより北アフリカはネオ=ジオンから連邦の手に帰した。そして欧州で戦うロンド=ベルへも地中海を使って多大な補給が送られることとなった。
「これで次の作戦に楽に進むことが出来るな」
その時ロンド=ベルは北フランスにいた。グローバルはマクロスの艦橋でこう呟いた。
「シー=ライオンですね」
それに応えてクローディアが言った。
「そうだ。我々はイギリスに上陸する。かってのナチス=ドイツと同じようにな」
「けれどそのナチスは失敗しちゃってますよお」
マクロスの艦橋にはユリカもいた。彼女は無邪気にこう言った。
「私達はナチスじゃありませんけれど」
「そう、むしろティターンズがナチスだな」
「そうですね」
それにシャニーが頷いた。
「彼等はどうもジオンに近い思想の様です」
「むしろジオンの隠れ蓑の一つか」
「サイド3との関係のことでしょうか」
「それもあるがな」
クローディアの言葉に応える。
「その科学者にもかってジオンにいた者が多い。そしてニュータイプを否定し、アースノイド至上主義を掲げながらもサイド3とは関係が深い。しかも強化人間まで研究していた」
「その主張はあくまで表向きだと」
「本質はジオンなのだろうな、彼等も」
グローバルの見方はこうであった。
「そうした意味でジャミトフ=ハイマンは独裁者なのだ」
「ギレン=ザビと同じく」
「そして彼等にはまた新たな勢力が加わった」
「ブルー=コスモスですね」
「ムルタ=アズラエルだったか。指導者は」
「はい」
「彼等もまた強化人間への研究を進めているそうだな」
「いえ、正確には違うようです」
未沙が言った。
「そうなのか」
「彼等は生体CPUと呼んでいるようです」
「聞き慣れない名前だな」
「何でもパイロットも兵器として認識しているとか」
「非道ね」
クローディアがそれを聞いて言った。
「それこそナチスかソ連だわ」
「それが彼等の正体なのだろうな」
グローバルは達観した様に言った。
「自分達以外の存在は認めない。そして他人は駒だ」
「駒ですか」
「だから兵器として扱える。少なくとも人間とは見てはいない」
「そうした人達が勝つと大変なことになっちゃいますね」
「そうならない為にも我々は戦っているのだよ」
ユリカに顔を向けた。
「そして今度の戦いも発動する」
「はい」
未沙とクローディアが頷いた。
「アシカ作戦を」
「今度はこの作戦を成功させよう」
グローバルは強い声で言った。
「いいな。作戦開始は明朝だ」
「はい」
「それまで各員英気を養っておくようにな」
ロンド=ベルはイギリスに上陸することになった。彼等はまずはドーバー海峡に集結した。さながら第二次世界大戦の時のルフト=パッフェの様に。
「あの時は失敗だったな」
夜になっていた。フォッカーはマクロスの甲板から対岸のイギリスを見てこう言った。
「ドイツ軍の戦闘機の航続距離が短かった」
「そしてレーダーがあったせいですよね」
その隣にはシンジ達がいた。シンジがそれに応えた。
「そうだ、知っていたか」
「有名ですから」
シンジはポツリと言った。
「バトル=オブ=ブリテンですよね」
「ああ」
第二次世界大戦前期にドイツ軍とイギリス軍の間で行われた戦いである。フランスを倒し勢いに乗るドイツ軍はそのまま空軍をドーバー海峡に集結させ、そこからまずはイギリスの制空権を手に入れようとした。戦力的には圧倒的優勢にあると言ってよかったドイツ軍であるが空軍のトップでありドイツのナンバーツーでもあったゲーリングの戦略ミスと航空機の航続距離の短さとイギリス軍の粘り、そしてレーダーにより敗北した。これによりドイツ軍は熟練のパイロットの多くを失っている。
「あの戦いを。僕達がするなんて」
「怖いか?」
「いえ、いつもやってますから」
だがシンジは冷静であった。
「それに。ここで怖いなんて言ったら何にもなりませんから」
「そうだ。よくわかっているな」
フォッカーはそれを聞き満足そうに頷いた。
「坊主も成長したんだな」
「いえ、そうじゃないですけど」
「いや、シンジも変わった」
だがヒイロがそうではないと言った。
「昔の御前ならば。震えていた」
「ヒイロ君」
「けれど今は戦うつもりなんだよな。変わったって言えば変わったぜ」
今度はデュオが言った。
「今度の戦いは海の中でもやるだろうからな。宜しく頼むぞ」
そしてウーヒェイも。
「俺達のガンダムも水中戦は出来るがエヴァも加わってくれると有り難い」
「トロワ君」
「そういうことです。頼りにしてますよ、シンジ君」
「カトル君、有り難う」
シンジは笑顔になっていた。
「嘘みたいだよ、僕が他の人から頼りにされるなんて」
「まだ少しナヨナヨしたところはあっけどな」
「豹馬はまた無神経過ぎるのよ」
「そやそや、御前はちょっとは落ち着かんかい」
「ばってんそれでこそ豹馬でごわす」
「リーダーとして。頼りにしてますよ」
「ちぇっ、俺の場合いつもこうなんだよな」
「健一さんと比べないでね」
ちずるはこう釘を刺した。
「健一さんみたいにしっかりしてから言って欲しいわ」
「へっ、俺は健一じゃねえしな」
「少しはああした風に気付いて欲しいわよ」
「気付く?何に?」
「・・・・・・馬鹿」
ちずるはその言葉を聞いてむくれてしまった。
「もう知らない」
「何だよ、何で急にむくれるんだよ」
「今のは豹馬が悪いわ」
フォウがそんな彼に対して言った。
「フォウ、何でだよ」
「あっきれた。本当にわからないの?」
「私達でもわかっていることですのに」
光竜と闇竜も呆れてしまっていた。
「これはちずるさんも大変ね」
「ここまで鈍いとねえ」
「さっきからわけわかんねえこと言ってやがるな」
だがやはりと言うべきか豹馬はわかっていない。
「どっちにしろ今度の戦いは海を渡らなくちゃいけねえからな。しんどい戦いになるぜ」
「ちずるもね」
ルーも言う。
「あんたの場合はこの戦いが終わってもずっとしんどい戦いになりそうね」
「有り難う、ルー」
「こうした時はお互い様。豹馬、わかってる!?」
「まあ地球に来る奴等全部倒すまでな。頑張ろうぜ」
「・・・・・・わかってないわね」
「健一さんじゃなくて一矢さんを見習った方がいいみたいね」
豹馬の鈍さは変わらなかったが時間は変わった。朝になり出撃の時間となった。
「ではまずは空を飛べるマシンを出そう」
グローバルはそう命じた。
「そして水中でも戦えるマシンをな」
「わかりました。それでは」
クローディアは頷いてその指示を伝えた。
「まずは空中、水中でも戦闘可能なマシンを発進させて下さい」
「了解」
「わかりました」
各艦の艦長達がそれに応える。
「そして海峡を押さえます。それから対岸で陸戦部隊を出します」
「やっぱそう来たな」
「用意は出来てるな」
ウーヒェイがデュオに対して問う。
「勿論。濡れてもいいように今日は古いトランクスにしておいたぜ」
「そうか。だがトランクスなのか?」
「何だ?おめえだってトランクスじゃねえか」
「違う。水着じゃないのか」
「・・・・・・それギャグか?」
「そちらこそな。何の冗談かと思ったぞ」
「どっちにしろ濡れないのに越したことはねえがな」
「じゃあ墜とされるな。それでいいな」
「わかったぜ。じゃあ行くか」
「うむ」
ウィングの面々もその中にいた。上空にはマジンガーやバルキリー、オーラバトラー達が展開している。
「ミノフスキークラフトがもう少しあればな」
アムロは少し残念な顔をしてラー=カイラムの格納庫にいた。
「俺達も早いうちから出撃出来たんだが」
「仕方ありませんよ、中佐」
だがそんな彼をケーラが慰めた。
「あれは結構希少ですから」
「そうか。ハロだったら幾らでも作れるんだけれどな」
「それはまた凄いですよ」
「そういえばあれはカミーユもウッソも作れますよね」
「ああ。おかげで皆持ってるな」
アムロもかなり作っている。
「結構構造は簡単なんだ、あれは」
「そうなんですか?」
「俺がまだ軍人になる前に作ったからな、最初のやつは」
「へえ」
「あの時からアムロさん凄かったじゃないですか」
「おいおい、昔の話は止めてくれよ」
アムロはカツの話に苦笑いをしてみせた。
「もう勘弁してくれ」
「だが出撃しないというのはいささか調子が狂うな」
「シャア」
クワトロもそこにいた。既にパイロットスーツに着替えている。
「目の前に敵がいるというのにな」
「それじゃあ大尉は水中モビルスーツで出撃されてはどうですか?」
ロザミアが彼に無邪気に言った。
「赤いモビルスーツで」
「ズゴックでか?」
「あっ、すいません」
「また懐かしいな。あれがあれば確かに出撃していたな」
「していたか」
「水の中での戦いも悪くないものさ」
彼は言った。
「あれはあれでいいものだ」
「俺は今一つそうしたモビルスーツに乗ったことはないがな」
「そういえば中佐は一年戦争の時にも水中ではガンダムでしたよね」
「前の戦いでもな」
ケーラに応える。
「だから。どうも本物の水中戦は知らないんだ」
「ニューガンダムの機動力ならいけるんじゃないんですか?」
ギュネイがそう尋ねた。
「あれの機動力だと」
「どうかな。俺はよくても他の者が」
「そうですか」
「特にゲーマルクは辛いだろうな。無理にこしたことはない」
「何かあたしが足引っ張ってるの?」
「いや、ロザミィにはすぐに活躍してもらう」
クワトロはこう言って彼女を宥めた。
「ゲーマルクの用意をしておくんだ。すぐにカミーユ君の力になれる」
「わかりました。それじゃあカミーユさんの為に」
そう言いながらゲーマルクに向かって行く。アムロはそんな彼女の後ろ姿を見送りながら呟いた。
「ロザミィも大分よくなってきたな」
「そうだな。やはりカミーユの側にいるのがいいみたいだ」
クワトロもそれに頷いた。
「それが例え戦いの中であってもな」
「そんなものか」
「とりあえずはな。彼女にとってもいい」
「ではこのままでいいか」
「カミーユが何とかしてくれるだろう」
「あいつにも何かと負担をかけるな」
「かっての彼だったならそれは危険だった。だが今は違う」
「安心して任せられるか」
「そうだ。彼も成長した」
クワトロの言葉に感慨が入った。
「じきに。私も越えるだろう。そして」
「隠居するというのは止めろよ」
「ふふふ、わかっていたか」
「御前は何かというとそうしたがるな」
「私が出ると何かと騒ぎになるからな」
「それは御前がギレン=ザビにならない限りは大丈夫だ」
「ギレン=ザビか」
「だがクワトロ=バジーナならばいい」
「そしてキャスバル=ズム=ダイクンでもなく」
「そういうことだ。俺も御前も昔みたいに前に出る必要はないがな」
「いい時代に進んでいるということかな」
「何言ってるんですか、中佐」
だがそんな彼等をチェーンが窘めた。
「チェーン」
「中佐にも大尉にももっと活躍してもらわないと。只でさえうちは激戦地にばかりいるのに」
「おいおい、これでも頑張っているんだぞ」
「もっとですよ。さもないと戦いが終わりませんよ」
「つまり楽にはならないか」
「難儀なことだな」
「そうです。だから御二人にはもっと頑張ってもらいますよ」
「了解」
アムロは苦笑いと共に応えた。
「それがわかったら出撃準備です。中佐、すぐに着替えて下さい」
「ああ、わかった」
アムロはそれに頷いた。
「大尉はサザビーに入って下さい。出撃命令が出たらすぐに出て下さいね」
「了解。チェーンはしっかりしているな」
「そうでなくてはメカニックは務まりませんので」
にこりと笑って言う。
「宜しく御願いしますね」
「わかった。ではすぐに乗るしよう」
「はい。クェスは何処ですか?」
「あいつならもうヤクトドーガに乗ってるぜ」
ギュネイが応える。
「じゃあいいわ。けれどあの娘時々パイロットスーツを着ずに乗っちゃうから心配なのよ」
「チェーンさんは心配し過ぎなんだよ。まるで早瀬中尉みたいに」
「ギュネイもあの人は苦手なのね」
「俺じゃなくてもあの人には勝てないと思うぞ」
「バサラ君は平気みたいだけれど」
「あいつはまた特別だ。また出てるんだろ?」
「ええ」
「それで戦場で音楽を鳴らしてか。よくやるぜ」
「だがあれはあれで見上げたものだ」
クワトロはそんな彼を認めていた。
「歌で戦いを終わらせようという気概はな。そしてそれを実行している」
「歌で戦いを。そんなことが出来るんですかね」
「やってみる価値はあるさ」
ギュネイにもこう返した。
「それもまた進歩の形だ」
「まあ俺もあいつの曲は好きですけれどね」
「どっちかと言うとミレーヌちゃんの曲が」
「・・・・・・それも認めるさ」
ケーラのいささか意地悪な言葉にも応じた。
「ノリがいいしな。才能あるのは確かだぜ」
「ミレーヌちゃんの才能も凄いわよね」
「ああ、聴いてるだけで元気が出て来るぜ」
ギュネイも乗ってきた。
「またそれを聴く為にもな」
「頑張るとしましょう」
「おう」
(ギュネイにとってもここに来たのはよかったみたいだな)
クワトロは明るい顔のギュネイを見て心の中でこう呟いた。
「では私も行くか」
サザビーに向かう。そして彼も出撃に備えるのであった。
外での戦いはまずは海峡の上での戦いであった。それぞれ空において激しくぶつかっていた。
「おらおらあ!ここは行かせねえぞ!」
進撃して来るロンド=ベルに対してティターンズはドレイク軍のオーラバトラーだけでなく自軍の変形可能なモビルスーツやバイアランといった空中での移動が可能なモビルスーツを出して迎撃にあたっていた。その中にはハンブラビもあり、その先頭にはヤザンがいた。
「カミーユ!いたら返事をしやがれ!」
「ヤザン!やはりいたか!」
「おうよ!ハンブラビの機動力見せてやるぜ!」
青いエイの編隊が向かって来た。
「覚悟しな!」
「何のっ!」
海蛇をかわした。ゼータⅡもまたモビルアーマー形態になっていた。
「ほう、やはりかわしたか」
「この程度で!あたるわけにはいかない!」
カミーユもまた叫んでいた。
「やらせない!」
「ヘッ、そうこなくっちゃ面白くとも何ともねえぜ!」
ヤザンも波に乗ってきた。
「手加減はしねえぜ!覚悟しな!」
「来い!叩き落としてやる!」
そしてその横ではショウとトッドが赤い三騎士と対峙していた。
「クの国の者達が出ているのか」
「どうやら今回はドレイクの旦那はお休みみたいだぜ」
「どういうことだ?それは」
「ウィーンでの戦いのダメージを回復させてるみたいだな。それでローテーションでビショットの旦那が出て来たんだろうさ」
「そうなのか」
「それに来てるのはビショットの旦那だけじゃねえぜ」
「まさか」
ショウはトッドの言葉に反応した。
「そのまさかさ。ショットの旦那も来てるぜ」
「くっ」
「ここは俺とマーベル、あとガラリアに任せな」
トッドはショウに対して言った。
「御前さんはミュージィを頼む。あの先生様とショットの旦那の相手は御前しかできねえからな」
「済まない、トッド」
「何、いいってことさ。それよりもそっちは頼むぜ」
「わかった」
ショウはビルバインを駆った。そしてスプリガンを探した。
「トッドもいいところあるんだね」
そしてその途中でチャムが言った。
「そうか?」
「うん。敵だと嫌な奴だったけれど」
「誰だって味方になれば変わるさ」
ショウはこう返した。
「お互い命がかかってるからな」
「命が」
「そうさ。それは敵だってな。同じことだ」
「そうなんだ」
「そうなんだって今まで何度も戦ってきたじゃないか」
「そうだけれど何か実感ないなあ」
「どうしてなんだよ」
「だってショウいつも生き残ってるから」
「俺だってそうそう上手くやってるわけじゃないさ」
ショウはクールであった。
「何時ヘマをして死ぬかわからない」
「まさか」
「まさかじゃない。それが戦争ってやつだ」
ここで前にドラムロが二機来た。しかしそれはオーラソードで何なく退ける。
「そう言いながらやるじゃない」
「これ位はな」
だがお喋りはここで中断することになった。目の前にスプリガンが姿を現わしたのであった。
「来たな」
「ショットがいるんだよね」
「ああ、間違いなくな」
ショウはまたチャムに返した。彼等は今対峙しようとしていた。
それは対するショットも同じである。彼も彼でショウのビルバインに気付いていた。
「ショウ=ザマ、来たか」
「ショット様、既にミュージィ様は出撃されています」
「わかっている」
部下の言葉に返す。
「では早速ビルバインに向かうように伝えてくれ」
「わかりました。では」
すぐに連絡を伝える。そしてショットはそれを横目で見て一人呟いていた。
「ドレイクめ、今度は自分が休む番だというのか」
彼もまた権力を欲している。そうした意味では彼もドレイクと同じである。
「まあよいか。ここは頑張ってやろう」
「ショット様」
ミュージィがモニターに姿を現わした。
「ミュージィ、わかっているな」
「はい」
「容赦はするな。ここで倒しておけ」
「そして次は」
「例の計画も進めていくぞ」
「わかりました」
「いいな。後で共に飲もう」
「はい」
二人は恋仲の目で互いを見ていた。そして頷き合う。モニターが消えた後でショットはまた呟いた。
「ミュージィがいるからこそだな」
彼はミュージィを利用しながらも愛していた。複雑な関係であった。だがそれを不自然とは思ってはいなかった。当然であると思っていたのであった。
「ショウ、来たよ」
「わかってる」
ショウはチャムの言葉に頷いた。
「ブブリィ、ミュージィ=ポーか」
「ショウ=ザマ、来たのか」
「悪しきオーラを断つ為にだ」
ミュージィに言う。
「ショットを倒す、ここで」
「そうはさせない!」
ミュージィの声が大きくなった。
「ショット様を脅かすならば!この手で!」
「来るか!」
「けれどショウ、また違うよ」
「違う!?」
ショウは最初チャムのその言葉の意味がわからなかった。思わず首を傾げさせた。
「うん。ミュージィのオーラはまた違うよ」
「どういうことなんだ、それは」
「感じてみて。あのジェリルやバーンのオーラと比べて」
「ジェリルやバーンと」
ショウもそれを言われてハッとした。
「確かに強いけれど。あそこまで歪んではいないよ」
「言われてみると」
確かにそうであった。ミュージィのオーラにもまた怒りや憎しみはあったがバーンのそれの様にそればかりが増大しているわけではなかった。
「ショット様を御護りする!」
ミュージィにはまずそれがあった。
「その為にはショウ=ザマ!御前を倒す!」
「基本的には正しいというのか」
「少なくとも歪んでも暴走してもいないよ」
「わかった。それじゃあ戦い方がある」
ショウは言った。
「来い、ミュージィ!」
「言われずとも!」
攻撃が浴びせられてきた。ビルバインは分身でそれをかわした。
「ここで倒す!覚悟するのだ!」
「確かに。邪なものじゃない」
「どうするの、ショウ」
「むしろ邪悪なオーラはショットのものだ」
ショットのスプリガンを見て言う。
「あれを先に倒すか。それとも」
「今だ!」
「チッ!」
また攻撃が浴びせられたがそれもかわす。
「考えている暇はない!チャム!」
「うん!」
「まずはミュージィの相手をする!いいな!」
「わかったよ!ショウに任せる!」
二人は頷き合った。そしてミュージィとの戦いに入るのであった。
「あれはどうなっている?」
そんな戦いの中ブランはスードリの艦橋でベンに問うていた。
「龍でしょうか」
「そうだ、龍だ。用意はいいか?」
「はい、万端です」
ベンはそれに答えた。
「そろそろタイミングだとも思いますが」
「確かにな。では仕掛けるか」
「はい」
「水中モビルスーツ部隊に伝えよ」
ブランは指示を下した。
「今から攻撃に入れと。いいな」
「了解」
「ただロンド=ベルも水中に強いマシンを持っている。それが通用するかどうかだが」
「ですがあれが一番いいと思いますが」
「水の中ではか」
「はい。既に指示は伝わりました」
「後は彼等に期待だな。では俺も行くか」
「今回もですか」
「今は我が軍が宇宙に行けるかどうかの正念場だ。少しでも数が必要だろう」
「わかりました。では後はまた私が」
「頼むぞ。上陸されてはまずいからな」
「はい」
ブランも出撃した。そしてそれと同時に海が大きく動いた。
海の中ではエヴァやデュオ達のガンダムがいた。他にはマリンスペイザーや真ゲッター3もいた。
「何よ、海の中でもやっぱり敵がいるじゃない」
「当然と言えば当然だと思うがな」
アスカにデュオが突っ込みを入れる。
「敵だって必死なんだからよ」
「それはそうだけど」
今アスカ達の前にはズゴックやアクアジムの編隊が展開していた。
「何でジオンのマシンまであるのよ」
「どうやら接収したものみたいね」
テュッティが言った。水の魔装機もまたこの中にいた。
「元々連邦軍って水中用モビルスーツの開発は遅れていたのよね」
「確かその筈です」
デメクサがそれに答える。
「一年戦争の時はそれで苦戦したそうですね」
「ジャブローがそうだったよね」
シモーヌがそれを聞いて言う。
「あれからジムを使ってアクアジムを作ったらしいけれどね」
「何だ、それじゃあ付け焼刃じゃない」
「けどズゴックがおるで」
「うっ」
アスカはトウジにも突っ込まれて詰まった。
「あれは結構手強いからの。注意が必要や」
「一年戦争の頃のマシンなのに」
「水の中ではそんなことは大して関係ないさ」
弁慶が言った。
「水中では水中の戦い方があるからな」
「そうだ。戦場が違えば戦い方も変わる」
ウーヒェイがそれに頷いた。
「来ますよ、また」
「HAHAHA!誰が来ても同じことデーーーーーーーーース!」
「ジャックさんもいるんですね」
「テキサスマックは何処でも戦えるのよ」
シンジにメリーが答えた。
「そうなんですか」
「汎用性が高いから。宇宙でも戦えるし」
「へえ」
「何か無駄に役に立つわね」
「アスカ!ミーを誉めても何も出ないデーーーーーーーース!」
「いや、誉めてるわけじゃないけど」
「アスカさん、そろそろお喋りは止めた方がいいですよ」
「!?」
ブンタの言葉に反応する。
「かなり大きいのが来ましたから」
「大きいの!?」
「ええ、来たわ」
レイも言った。
「龍が」
「龍」
そして彼等の前に巨大な龍が姿を現わしたのであった。
「海峡で異常発生!」
「何かあったの?」
ユリカはメグミの言葉に顔をキョトンとさせた。
「戦闘は行われているのはわかってるけど」
「巨大なマシンが姿を現わしました!」
「巨大な」
「ドッゴーラだ!」
その時隼人が叫んだ。
「ドッゴーラ!?」
「何か強そうな名前ですね」
「おい、強そうなんかとか言ってる問題じゃないんだ」
「本当に厄介な奴なんだよ」
隼人と弁慶はいささか悠長なことを言っているシモーヌとデメクサに言った。
「そんなにですか?」
「ってあの馬鹿でかい身体見ろよ」
見れば青い巨大なマシンであった。その身体は龍そのものであった。
「あれだけでわかるだろ」
「しかも三機もいるぞ」
「リョウ、ここは弁慶に任せるか」
「そうだな」
竜馬は隼人の言葉に頷いた。
「弁慶、それでいいか」
「おうよ」
「まずはウィングチームで一機頼む」
「わかった」
「そしてもう一機は水の魔装機で頼む」
「はい」
トロワ、そしてテュッティがそれぞれ応える。
「残り一機は俺達で行く」
「ではフォローは僕が」
「あたしもいるわよ~~ん」
「ミーもデーーーーース!」
「ボスとジャックもか」
「あっ、何だよリョウその言葉」
「ミーに任せなサーーーーーーーーーイ!」
「そんな口調じゃ説得力ないわよね」
「こら」
ボソッと呟いたアスカをミサトが叱る。
「そんなこと言わない」
「だって」
「ヘイアスカ、ドンウォーーーーーリーーーネ!」
「やっぱり不安かしら」
「ミサトもそこで納得しない」
そのミサトもリツコに突っ込まれてしまった。
「まあいい。それじゃあ後ろを頼むぞ」
「おう!」
「ラジャーーーーーーー!」
「テキサスマックは海でも普通に動けるから心配しないで、リョウさん」
「そう言ってくれると有り難いよ」
「ボス、マリンスペイザーには慣れたか」
「おうと、任せとけだわさ」
ボスは隼人の問いに答えた。
「もうボロットと変わらないわよ~~ん」
「そうか、それは何よりだ」
「けれど少しコクピットは狭いけれどね」
「まあ元々一人乗りだから仕方ないか」
勿論ヌケやムチャも一緒だった。
「マリンスペイザーも御機嫌でいくだわさ」
「よし、それじゃあ仕掛けるか」
「おいリョウ、俺も忘れるな」
「武蔵」
武蔵のブラックゲッターもやって来た。
「俺もやらせてもらうからな」
「そうか、御前が来てくれると有り難い」
「HAHAHA!わざわざ分かれて乗ったかいがありました!」
「これはジャックの計算だったのか」
「ええ。兄さんきっと海での戦いが激しくなるからって。今回はテキサスマックに乗ったのよ」
「へえ、そうだったんですか」
シンジもこれには正直驚いていた。
「人は見かけによりませんね」
「シンジ君、それはちょっと失礼よ」
「すいません」
またミサトが嗜めた。
「そりゃ確かに。意外だけれどね」
「ジャックもそれなりに考えているってことね」
「あいつはあれでも結構いいアイディア出しますよ」
「サコン君」
「君が認めるなら本当なのね」
「能ある鷹は爪隠すじゃないですか」
「けどちょっち意外ね」
「私は意外じゃなかったけれど」
「こっちも色々と頼りにしてるんですよ」
「それじゃ今回も頼りにさせてもらおうかしら」
「ミス=ミサト、ベリーグッドな発言ネ!」
「あの口調じゃなかったらねえ」
「まあそれも個性かしら」
「そういうことです」
エヴァは周りの水中もビルスーツに向かい他のマシンで敵にあたることになった。海中での戦いも本格的なものになろうとしていた。
その上では既に熾烈な戦いとなっていた。七隻の戦艦はティターンズ及びドレイク軍の激しい応戦を受けながらも少しずつ前に出ていた。
「対岸まであとどれ位だ」
「もう少しです」
トーレスがブライトの言葉に応えた。
「もう少しで。辿り着きます」
「よし、いよいよだな」
ブライトはその言葉を聞いて頷いた。
「モビルスーツ部隊降下用意」
「モビルスーツ部隊降下用意」
命令が復唱される。
「一気に全機出すぞ、いいな」
「はい」
「空中にいる部隊は可能な限り降下の援護に回れ、いいな」
「了解、それではすぐに」
「今行くぜ!」
ガルドとイサムがそれに応えた。早速バルキリー隊が援護にやって来た。
カタパルトに次々とモビルスーツが出て来る。そして出撃する。
「よっし!やっと出番だぜ!」
バニングの量産型F90がまず出て来た。
「アシカ作戦成功ってとこだな!」
「おいおい、降り立っただけで成功とはおめでたいな」
そこにベイトのディジェがやって来た。
「まだまだ敵は山程いるぜ」
「ヘッ、ドイツ軍のあれは一兵も上陸できなかったじゃねえか」
「まあそうだけれどな」
「それに比べて俺達は上陸、いや降下することが出来たんだぜ。成功って言っていいじゃねえかよ」
「何を言っている、戦いはこれからだ」
「少佐」
そこにバニングがやって来た。
「もう敵が陣を整えているぞ。そんなことを言っていていいのか」
「ちぇっ」
「早く行け。敵は待ってはくれないぞ」
「了解。じゃあ行くかベイト」
「ああ。後ろは任せるんだな」
「それじゃあ行きますか」
アデルのリ=ガズィもやって来た。いつもの面々がようやく出揃った。
上陸してからが本当の戦いであった。陸と空、海で両軍の死闘はクライマックスに達しようとしていた。
「ここは通すわけにはいかないんだよ!」
ライラはバウンドドッグをモビルスーツ形態に変形させた。
「こっちも後がないからね!悪く思わないようにね!」
そして拡散ビーム砲を放つ。ジュドーはそれを盾で受け止めた。
「チッ!やっぱり手強いぜ!」
ライラと戦ったことも一度や二度ではない。ジュドーはその攻撃を受けてそれを再認識せざるを得なかった。
「こりゃちょっとやそっとでは行けそうもねえな」
「何言ってるのよ、ジュドー」
だがそんな彼にルーがクレームをつける。
「そんなこと言ってたら今まで全然勝っていないわよ」
「そうだよジュドー、ここは一人じゃないんだし」
「あたし達もいるってこと、忘れるなよ」
「プル、プルツー」
二機のキュベレイが前に出て来た。
「いくよ、プルツー」
「ああ」
二人は互いに頷き合った。
「いっけえええーーーーーーーー!」
「ファンネル!」
そして同時にファンネルを放った。それでライラのバウンドドッグを襲う。
「これならっ!」
「かわせはしない!」
「チイッ!」
だがライラはそれでもかわそうとする。その卓越した技量で無数のファンネルの襲撃をかわそうとする。だがここではバウンドドッグの巨体が災いした。かわしきれなかった。
何発かの攻撃があたった。そして動きを止める。機体にとっては致命傷であった。
「ライラ!」
ジェリドがそれを見て声をかける。しかし返事はあった。
「大丈夫さ、安心しな」
「そうか」
それを聞いてまずは安心した。
「けどよ、それ以上の戦闘は無理だろ」
「わかるかい、やっぱり」
ヤザンの言葉に応える。
「ああ。ここは退きな」
「わかった。そうさせてもらうよ」
機体を捨てて脱出する。バウンドドッグはその場に崩れ落ち爆発した。
「バウンドドッグがやられるとはな」
カクリコンはそれを見て呟いた。
「機体のかえは幾らでもあるけどな」
ジェリドがそれに応える。
「しかしライラを撃墜するとは。やってくれる」
「相手が相手だ。無理もないか」
「あの小娘二人、許せないな」
「ジェリド、一人で行くのか」
「ああ、このジ=オならいける」
「やめておけ。今はそれどころじゃない」
「何!?」
「御前の方にF91が来ている。ここは俺達とマウアーに任せろ」
「チッ、相変わらず動きの早い奴等だ」
「敵も必死ということだ。これもお互い様だがな」
「それじゃあそっちは任せるぜ」
「うむ」
「戦死だけはするんじゃねえぞ」
「わかってるさ。そっちもな」
「ああ」
ライラの乗るバウンドドッグの撃墜を合図とするかの様にティターンズは劣勢になろうとしていた。それが証拠それぞれのエースパイロット達が持ち場から動けなくなってきていた。そしてロンド=ベルの攻撃はさらに激しくなってきたのであった。
「いいけえええーーーーーー!ハイメガキャノン!」
「ウオッ!」
カクリコンの部隊をダブルゼータのハイメガキャノンが襲う。カクリコンはそれをかろうじてかわしたがダメージは免れ
なかった。
他の機体に至っては全滅であった。ダブルゼータの恐るべき攻撃であった。
「クッ、ここの戦線の維持も最早不可能か」
「カクリコン、一時撤退しろ」
そこにクロノクルの通信が入った」
「撤退か」
「私の部隊も下がる。そこで合流しろ」
「だがここで退けば」
「既にジャマイカン少佐はシャトルに向かおうとしている。ここで踏ん張っても意味はない」
「もう撤退を進めているのか」
「少佐はな」
「・・・・・・そうか、わかった」
口の中の苦いものを隠してそれに頷いた。
「そちらに合流する。それでいいな」
「うむ」
「マウアーの部隊もそちらに向かうことになるだろう。そこで踏み止まるとしよう」
「そうだな。今はな」
「しかし」
「どうした?」
「・・・・・・いや、何でもない」
言おうとしたが止めた。
「俺たちは戦うだけだからな」
「ああ」
クロノクルもそれ以上聞こうとはしなかった。こうしてカクリコンとマウアーの部隊は下がりクロノクルの部隊と合流し、そこで戦線を築くのであった。
ライラ、そして彼等の部隊の壊滅はティターンズにとってはかなり大きいものであった。そして指揮を執る筈のジャマイカンは既に戦場からは去っていた。
「それぞれの部隊に伝えよ!」
彼はダブリンに置かれているシャトルに乗り込みながら喚いていた。
「各自きりのいいところで撤収しろとな!よいな!」
最後にこう言ってシャトルに乗り込んだ。そして逃走したのであった。
「チッ、やっぱり最初に逃げ出しやがったな」
ヤザンはそれを聞いて舌打ちした。
「あいつらしいと言えばらしいがな」
「ヤザン大尉、どうされますか」
ラムサスとダンケルが尋ねてきた。
「我々も。そろそろ」
「わかってる。頃合いを見てな」
彼は言った。
「撤退するぞ。そしてダブリンから宇宙に出る」
「はい」
指揮官が戦場から離脱してこれ以上戦うつもりはなかった。
「いいな、それで」
「わかりました」
「見たところティターンズは次々と逃げ出しているな」
「はい」
「残っているのはジェリドとカテジナだけか。ジェリドはともかくカテジナの奴を説得するのは骨が折れそうだな」
そうは言いながらも友軍を放っておくわけにもいかなかった。ヤザンはすぐに海峡から離れカテジナのもとへと向かうのであった。
「ティターンズが退いていきますな」
ビショットは戦場を見て呟いた。
「戦局の不利を悟りましたかな」
「いえ、どうやら指揮官が逃げ出したせいのようです」
ルーザが彼にそう言った。
「指揮官、ああ彼ですか」
「あの小心そうな御仁が退いて。それで撤退をはじめたのでしょう」
「成程」
「恐らくティターンズはこのまま宇宙へ下がるでしょう。ですが我々は」
「そういうわけにはいかない」
「そうです。そしてドレイクとも」
「訣別する時が近付いてきていると」
「そろそろ決断の時ですね」
「そして我々がこの地上の支配者となる」
「はい」
「では今はそれに備えて兵を置いておくとしましょう」
ビショットは言った。
「全軍撤退です。それで宜しいですね」
「ビショット様の思われるままに」
「では」
ビショットは軍を引き揚げさせた。それと共にショットも兵を退かせた。戦場に立つのはロンド=ベルだけでありそうした意味で勝利を収めたこととなった。
「とりあえずは作戦成功といったところか」
「はい」
未沙はグローバルの言葉に頷いた。
「アシカ作戦、今回は上手くいったな」
「ですが戦いはまだ終わったわけではありません」
だが未沙はここで手綱を締めてきた。
「ティターンズは宇宙へ撤退するものと思われますがドレイク軍は残るつもりのようです」
「彼等は地上で雌雄を決するつもりか」
「既に北アイルランドに向かっているようです。どうされますか」
「それでは我々もアイルランドへ向かおう」
考える余地はなかった。グローバルはそう命じた。
「ここで敵を一つでも減らしておきたい。いいな」
「わかりました。それでは」
「うむ」
こうして戦いは終わりロンド=ベルは無事イギリスに上陸した。そしてロンドン近辺で補給を受けた後アイルランドに向かうこととなったのであった。
「アイルランドか」
「どうしたい、急にしんみりとしやがって」
トッドがマサキに声をかけてきた。
「いや、マードック爺さんのことを思い出してな」
「前話してたディアブロの前のパイロットかい」
「ああ。あの爺さんアイルランド出身だったんだよ」
「そうだったらしいな」
「それを思い出してな。何か感慨あるなってな」
「アイルランドか」
トッドも少し感慨に耽った。
「そういやアメリカもあそこからの移民が多かったな」
「御前は違うのか」
「俺もそうかもな」
彼はそれに応えて言った。
「ボストンは古い街だからな。アイルランド系は昔からいたし」
「そうか」
「スコットランド系かも知れんが。どっちにしろ俺にもアイリッシュの血はあるかもな」
「爺さんはもう死んじまったがな」
「相当な人だったらしいな」
「酒好きの女好きでな。困った人だったな」
「へえ」
「プレセアとは全然違ったタイプだったぜ。頼りにはなったが」
「今ここにいたら頼りになったってことか」
「多分な。まあ魔装機はねえがな」
「惜しい人をなくしたんだな」
「戦争だからな。仕方ねえが」
「どっちにしろまた戦争だしな」
「連中とも決着か」
「遂にな。ラ=ギアス、いや前の戦いからの腐れ縁も終わりさ」
「長い話だな。ったくよお」
「まあそう言うな。これも戦いだ」
「そう納得しとくか。それじゃあな」
マサキは立ち上がった。
「何処に行くんだ?」
「ちょっとな。外に出て来るぜ」
「やめとけ、道に迷うぞ」
「おい、御前までそんなこと言うのかよ」
「いつものことだろ。ここは大人しくしてろ」
「ちぇっ」
こうしてマサキは自室に閉じこもることになった。そして彼がこもっている間にロンド=ベルは補給を整えアイルランドに向かった。また戦乱が彼等を呼ぶのであった。
第八十七話完
2006・4・18
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