万華鏡
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第六話 ゴールデンウィークその六
「物凄く性格の悪い」
「あんな嫌な奴他にいなかったから」
「八条高校にはいないのよね」
「他の高校よ。けれどね」
「けれどって?」
「その高校でも早速物凄く嫌われてるみたい」
そうなっているというのだ。性格が悪ければどの場所においても嫌われる。これは絶対のことの一つである。
「早速クラスの誰からも総スカンみたいなの」
「話を聞く限り確かに性格悪いわよね」
「でしょ?だからね」
「同じ高校でなくてよかったっていうのね」
「二度と会いたくないわ」
こう忌々しげに言うのが琴乃だけでないことからその彼がどういった人間であるかが伺える。相当な性格の悪さの人間だと。
「本当にね」
「気持ちはわかるわ。まあそれはそれでね」
「それでって?」
「そう。過去は過去よ」
どれだけ嫌な人間に会ってもだというのだ。
「大切なことはこれからじゃない」
「だからなのね」
「今の部活はいい環境なのね」
「先輩達も皆もいい人達ばかりで」
それに加えてだった。
「顧問の先生も優しい人達よ」
「それは何よりね」
「評判の悪い人いないから」
琴乃は微笑んで母に話す。
「凄くいい部活よ」
「そうでしょ。じゃあ楽しく過ごしてね」
「そうするね。お泊り会でもね」
「楽しく過ごしなさいね」
母にも笑顔で言われてだった。琴乃は早速そのお泊り会の準備をはじめた。その中で彼女は自分のクラスで一緒にいる友人達にこんな話をした。
「ティーセットってお酒に合うかしら」
「琴乃ちゃんが好きなティーセットが?」
「それがお酒に合うかどうか?」
「それなの」
「ええ。どうかしら」
琴乃は自分の席から友人達に尋ねる。そこには里香はおらず別に友達になった面々に対して話しているのだ。
「お酒は」
「ううん、どうかしら」
「難しいんじゃないかしら」
友人達は難しい顔でそれぞれ琴乃に言う。制服はそれぞれ違うが表情は同じものになっている。
「それはね」
「ちょっとね」
「ティーセットってあれじゃない」
友人の一人がこう言った。
「スコーン、サンドイッチ、それにフルーツとケーキよね」
「大体そんな感じよ」
「イギリスよね」
「ええ。作るのは私だけれど」
「イギリス人が作らなかったらいいのよ」
本場の人間でもこう言われるのがイギリスだった。
「その辺りはね。けれどね」
「けれどなの」
「そう。スコーンとかケーキで日本酒って」
その友人が言う酒はそれだった。どうやらこの娘は日本酒派らしい。
「絶対に合わないわよ」
「というか日本酒にケーキ?」
「糖尿病一直線の組み合わせだし」
「しかも絶対に合わないのは間違いないわよ」
「日本酒には塩辛いものよ」
日本酒はそうなる。だから日本では酒を飲む人間は辛党になるのだ。
「それでケーキと一緒って」
「もう想像するだけで吐き気が」
「最悪の組み合わせじゃない」
こうしてまずは日本酒は却下された。そして次もだった。
先程の友人と別の友人がこの酒を出してきたのだった。
「焼酎もねえ」
「ああ、それも無理」
「焼酎はやっぱりカツとかでしょ」
「焼き鳥とかね」
焼酎はそちらだった。日本酒とも一緒に食べられるものだが焼酎となるとやはりそれだろうというのだ。尚八条町は飲酒は子供でも可能だ。特例である。
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