side なのは
今、私の机の上には傷ついたレイジングハートがいる。
ユーノ君の話だと明日には元に戻るらしいけど、それでも傷つけたのは変わらない。
それに気になるのがもう一つ
「士郎君、大丈夫かな」
ベットの横にたてかけている槍を眺め、そう呟いていた。
士郎君はあの時いきなり膝をついて、苦しそうにしていて、咄嗟に駆けよろうとしたけど
「だまれっ!!!!」
初めてみた士郎君の顔。
とても怖い顔。
虚空を睨むその表情と声に固まってしまった。
そして、私達に向けられる何かに怯えたような瞳。
いつもの落ち着いた感じじゃない。
不安定で何かの拍子に崩れてしまいそうで、傍にいたくて足が自然と前に出た。
だけど
「来るな!」
士郎君の明確な拒絶な言葉。
その言葉に足を止めてしまっていた。
「なのは?」
「え? なに、ユーノ君」
ユーノ君の言葉に現実に戻ってくる。
「士郎のこと考えてたの?」
ユーノ君の言葉に静かに頷く。
「うん。士郎君あんな怪我をしてたし、士郎君の事全然私知らないんだよね」
「……なのは」
「もっと知りたいな。士郎君の事」
私達に向けられた士郎君の怯えたような眼が頭から離れない。
なんであんな眼をしていたのか
それがとても気になった。
side フェイト
「士郎、大丈夫かな」
「そうだね」
なんだかんだでもアルフも士郎の事が心配なんだね。
助けてもらったお礼も言えてない。
怪我も気になるし。
でも一番気になるのは立ち去る時の士郎の眼。
何かに怯えているような、恐れているような眼。
視線は私やなのはを向いていたけど、私達に対するモノじゃない。
なら何に対してのモノなのだろう。
「士郎が心配かい?」
「うん」
アルフの言葉にうなずく。
大切な人だもの心配しないわけない。
「バルディッシュのリカバリーが終わったら、行ってみたらどうだい?」
「だ、だけど」
「迷っててもどうにもなんないよ」
そうだよね。
うん。
アルフの言うとおり迷っててもはじまらないよね。
バルディッシュの修復は一日あればなんとかできるし、行ってみよう。
side なのは
次の日、学校に行って一番最初にアリサちゃんとすずかちゃんに謝った。
心配掛けたこと、迷っていたこと。
そして、ちゃんと覚悟が出来たこと。
魔法の事は話せないけど話せる事は全部話した。
でもその中に大切な人が足りない。
なぜなら士郎君が学校を休んだから。
怪我が酷くて来れないのかな?
それともアーチャーという事がばれたから?
正体がばれて何も言わず姿をくらませる士郎君がイメージ出来て、頭を振ってそのイメージを振り払う。
「あいつが休むなんてどうしたのかしら?」
「うん。何の連絡もないしね。ノエルも家に行けなかったみたいだし」
「……家にいけないってどういうことよ?」
アリサちゃんとすずかちゃんも心配そう。
朝に先生が士郎君からなんの連絡がないって言ってたから、休み時間にすずかちゃんがノエルさんに連絡して、ノエルさんが士郎君の家に向かったらしい。
だけど一体どういう仕組みなのか士郎君の家に辿りつけなかった。
士郎君の家はすずかちゃんに教わって大まかにはわかったけど、私はどうすればいいのかな。
迷ったまま学校が終わってバスから降りるとユーノ君が待っていてくれた。
そしてユーノ君の首にはレイジングハートがあった。
「レイジングハート、直ったんだね? よかったぁ……」
「Condition green.」
「……また、一緒にがんばってくれる?」
「All right, my master」
うん。一緒に頑張ろう。
大切なレイジングハート。
直ってうれしいのにどこか足りない感じがする。
士郎君の事がやっぱり気になってるんだ。
士郎君に会いたい。
でも士郎君のあの眼が忘れられない。
「Master」
「……レイジングハート」
ただしっかりと名前を呼んでくれる。
そうだよね。
立ち止まってもはじまらないよね。
突き進んでいいって士郎君も教えてくれた。
そして、レイジングハートが背中を押してくれた。
「レイジングハート、ユーノ君、行こう」
「All right」
「うん」
私は士郎君の家に向かって走り出した。
side ユーノ
なのはの肩に乗り、一緒に士郎のところに向かう。
なのはには言っていないが、本音を言えばあまりかかわりたいとは思わない。
花のような盾、ジュエルシードを取り出した歪な短剣、魔力を掻き消す槍。
そして、極めつけはジュエルシードを破壊した槍。
士郎が所有する規格外の武器の存在が一番の要因。
あの武器の事は詳しくはわからないけど、ジュエルシードを破壊した槍などはロストロギアクラスだろう。
でも僕もなのはも助けてもらったのも事実。
だけど正直な話、僕は彼を恐れている。
彼が本気になれば僕だけじゃなくて、なのはでも簡単に殺されてしまうだろうから。
それが一番彼に関わりたくない理由
「どうしたの? ユーノ君」
「え? ううん。なんでもない」
なのはの言葉に慌てて首を振る。
今はとりあえず会って話をしてみないと始まらない。
僕は彼の事を何も知らないのだから。
どういうわけか今までは追えなかった士郎の魔力を今は追えるらしくレイジングハートの道案内のもと士郎の家に向かう。
なのは自身、士郎の家は大まかな位置しか知らなかったみたいだから、魔力が追えるのは幸いだった。
そして、角を曲がろうとした時
「「え?」」
道の角で鉢合わせになったのはフェイトとその使い魔のアルフ。
フェイトの手にはバルディッシュが待機状態で握られている。
まずい。
こんなところで戦いになると……と思ったら
「フェイトちゃんのバルディッシュもちゃんと直ったんだね」
「う、うん。あなたのレイジングハートも大丈夫だった?」
「うん。ちゃんと直ったよ。あと、あなたじゃなくてなのは」
「え……と」
「なのは」
「……」
「な・の・は」
「……なのは」
「うん」
お互いの相棒の無事に一安心している。
それにしてもなのはって結構押しが強いところがあるよね。
「フェイトちゃんももしかして士郎君のところに行こうとしたの?」
「うん。
もっていう事はあなたじゃなくて、なのはも」
「うん。その……一緒に行こう」
「……うん」
二人並んで歩き始める。
アルフと顔を見合わせる。
まあ、戦いにならなかったことはいいことだと思う事にしよう。
なのはもフェイトも特に会話はないけどピリピリした雰囲気もない。
で士郎の家に向かって歩き続けたんだけどどういうわけか
「道が見つからない」
「この辺の曲がり角を曲がれば一直線のはずなんだけど」
レイジングハートとバルディッシュの案内、さらになのはの携帯の地図を使って探しているんだけどどういうわけか道が見つからない。
なのはの携帯の地図では確かにこの辺りに曲がり道があってそこに入れば一直線のはず。
地図で見る限り、そんなに小さい道というわけじゃないはずなんだけど
そんな時
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
レイジングハートとバルディッシュが浮かび上がりゆっくりと飛んでいく。
それを慌てて追う僕達。
そして、レイジングハートとバルディッシュがあるところで止まる。
なのはとフェイトは自分の愛機を掴むために、アルフと僕もなのは達にわずかに遅れてその場所に辿りついた瞬間。
「ふえ?」
「え?」
なのはとフェイトが固まった。僕とアルフも声を上げずに固まっていた。
なぜなら、そこに道はあったのだ。
僕達が気がつかなかっただけで。
「これって……偽装、いや認識を阻害してる?」
道の曲がり角には見たことのない魔法陣が刻まれている。
一度気がつけば問題はないけど、普通に行こうとしても道が認識できないから辿りつけないわけだ。
僕達はレイジングハート達を追って知らないうちに道に踏み込んだからこうして認識できたけど、レイジングハート達がなければずっと気がつかなかった。
なのはとフェイトはお互いに頷きあって再び歩き出す。
ようやく辿りついたのは、どこかの物語に出てきそうな大きな洋館。
その洋館よりも気になるのが
「ねえ、アルフ」
「うん。結界があるね。
ユーノ、あんたこの結界どんなものかわかるかい?」
「術式が違い過ぎる。それにどこからか魔力供給しているみたいだし」
常にどこからか魔力供給されている謎の結界が屋敷を覆っている。
そもそも常に魔力を供給するなんてどうやって維持しているのかもわからない。
これは下手に入るのはまずそう。
どうすればいいか迷っているとなのはが恐る恐るといった感じで一歩前に踏み出した。
「なのは!?」
「……あれ?」
最悪な結果を予測した僕だったけど、なのは何ともないように平然と結界内に入っている。
僕達も恐る恐る一歩踏み出してみるけど何も起きない。
一体どうなってるんだこの結界。
とりあえず内心ビクビクしながら屋敷の扉に辿りついた。
そして、なのはとフェイトが一緒に扉に手を伸ばして
扉は軋む音を上げながらあっさりと開いた。
「結界は素通りだし、扉にも鍵はかかってない」
「不用心だね~」
アルフの言葉にすごく同感だ。
それにしてもこの玄関ホール。
夕方という時間帯で薄暗くなんか出てきそうな雰囲気だ。
「アルフ、士郎の場所わかる?」
「う~ん。下みたいだね。そこが一番匂いが強い」
下?
地下室か何かだろうか。
といっても地下の入り口がわからないと思ったら
「ねえ、これって」
なのはの言葉で初めて気がついた。
薄暗くて気付かなかったけど玄関から点々と赤い跡が続いている。
血の跡だ。
それは階段裏の扉に続いていた。
その扉をゆっくりと開ける。
そこには暗い階段が続いていた。
明かりもなく奥が見えない階段。
「Master」
「Sir」
その階段を照らすように光を放つレイジングハートとバルディッシュ
そして、なのはとフェイトを先頭に階段を降りはじめた。
意外と階段は長くなくて、すぐに底まで辿りつく。
そして、そこにはまた扉。
その扉は半分ほど開いていた。
空きかけの扉を完全にあけ放つ。
そこにあったのは複雑な模様を描く魔法陣と横たわる士郎。
だけどこの狭い中だというのに士郎の寝息一つ聞こえない。
そして、なにより士郎の周りに真っ赤な
「士郎君!!」
「士郎!!」
なのはとフェイトが駆け寄る。
二人の声に僕とアルフも意識を取り戻す。
「アルフ、二人を」
「あいよ!」
士郎の体をゆする二人をアルフに任せて、士郎の身体に乗って呼吸や心音を確かめる。
呼吸が浅い。
脈もギリギリのレベルだ。
だけど左腕をはじめとする身体の傷は一切ない。
どういうことだろう?
アレだけの傷がたった一日で完治するものだろうか。
とりあえずなのはとフェイトを安心させないと
「二人とも落ち着いて、傷も塞がってるし多分大丈夫。
だけどかなり深く眠ってるみたい」
僕の言葉に二人とも大きく息を吐いて安堵してる。
そんなとき
「……う」
先ほどまであれほど深い眠りにいた士郎が大きく息を吐き、ゆっくりと瞼を開いた。
side 士郎
聞き覚えのある声がする。
俺が守ろうと思った、守ろうとした二人の少女の声。
だけどその声は今にも泣きそうで
―――起きないと
泣きそうな女の子を放っておけない。
全身に重しをつけたみたいに重い。
それがなんだ。
起きないと本当に泣いてしまう。
「……う」
大きく息を吐き、周りに視線を向けると耳のある女性に抱きかかえられた二人の少女がいた。
重い身体を起こし、二人の少女に手を伸ばそうとする。
その瞬間、二人の少女に抱きつかれる。
受け止めようとするが想像以上に身体がいう事をきかない。
支えきれず少女に押し倒される。
「士郎君、よかった」
「士郎、士郎」
軋む身体には二人の少女の重みは堪えるが、涙交じりの声に泣かせてしまったという後悔だけがあった。
泣きやんでほしくて二人の頭を静かに撫でる。
胸で受け止める少女の顔は見えず、俺の視線の先には家の地下室の天井があるのみ。
なんで二人がここにいるかはわからない。
でも俺なんかのために泣いてくれているのはわかる。
だから今は静かに頭を撫ぜ続けた。
どれくらいそうしていたか落ち着いた二人がゆっくりと離れる。
と二人の背後に見覚えのある一人と一匹がいた。
「アルフにユーノ、なんでここに」
俺の言葉にアルフがあきれながら経緯を話してくれた。
つまりジュエルシードを破壊した夜の次の日か。
眠っていたのはおよそ二十時間少々といったところだろう。
しかし、これは予想外だ。
ジュエルシードとぶつかり合って循環が乱れた魔力。
損傷の酷い左腕。
数日は眠り続けると思ったが霊地が優秀なのか、子供故の回復力なのか予想以上に回復は早い。
しかし損傷のひどかった左腕は外見だけだ。
中身はまだ不完全。
戦闘に使うのはまだ無理だろう。
魔力は安定しているが十全とはいえない。
念のため、高ランク宝具の使用はしばらくやめておいた方がいいだろう。
それにしても今までに感じた事のない吸血衝動はなんだったのだろうか。
真祖は最も優れた時期に活動するために幼年期は眠って過ごすというが、それだけではないとしたら……
これは考えても答えは出ないか。
自身の状況を把握していると
「士郎君はもう大丈夫なの?」
「ああ、十全とはいかないけど、大丈夫だ」
「でも昨日みたいに急に倒れたりしたら」
「昨日のアレはジュエルシードの魔力とぶつかり合ったせいで身体を巡っている魔力が少し乱れただけだから」
「それって大丈夫なの?」
「まだ無理は出来ないが、落ち着いてる」
と酷く心配されたが、俺の言葉に安堵のため息を吐く。
その時、フェイトが何か思いついたように
「士郎が早く良くなるように出来ることってない?」
と俺を見つめる。
フェイトの言葉になのはも
「そうだよ。私たちなんでも協力するよ」
顔を近づけ、俺を見つめる。
フェイトとなのはの言葉に半ば無意識に考えを巡らせる。
一番手っ取り早い回復とすれば何らかの形で魔力を得ることだろう。
前回の戦闘の時にアイアスにゲイ・ボルクとかなりの魔力を消費している。
特にアイアスは投影後に無理やり魔力を流し込むという無茶をしている。
現状、魔力も完全には回復できていない。
俺が魔力を得るにはいくつか方法がある。
まず第一案は吸血行為。
しかしこれはあまり気が進まない。
勿論血を飲んだことがないわけじゃないが、可能な限り避けるべきだ。
アルトに何度も注意されたことだが血を飲めば飲むほど血に溺れ、最終的には堕ちてしまう。
特に昨晩の今までと違う吸血衝動の事もある。
それにしても死徒と真祖の混血であるアルトが死徒としての俺の親という事もあってか、他の死徒と違うところが多い。
まず普通の死徒のように遺伝情報の崩壊はほとんど起きることはない。
さらに吸血衝動は『
全て遠き理想郷』によって抑えられるのでアルトに比べればはるかに抑えやすい。
「死徒っていうより、真祖もどきみたいね」
とは死神と共にいた白い真祖の姫君に言われたことだ。
聖堂教会からも希少物扱いだった。
……なんかまったく関係ないことだな。
ともかく吸血はなしだ。
第二案は魔力をこもった宝石を飲む。
これは現状の問題がある。
宝石が今までの結界や銃弾、生活費などなどでかなり減っている。
特に魔力が込められた宝石は現在俺が握りしめている赤と黒の宝石を除けば、あとわずかなので念のためとっておきたい。
「宝石魔術はお金がかかる」
と遠坂がいつも言っていたがその通りだ。
それに宝石を補充して魔力を込めないと悪いから今すぐは難しい。
第三案、なのは達とパスをつなぐことによる魔力供給。
九歳だから出来……………………………………………………………考えるな!!!
この案は論外。
「……なのは達の言葉はうれしいけど無理だ。」
「うそだよね」
「うそだね」
俺の言葉に即答のなのはとフェイト。
「士郎君、手がないんじゃ、すぐ否定するはずだもん」
「そうだね。考えてたからなにか手段があるけど黙ってる」
なのはもフェイトも鋭い。
「そうそう、いいから対策案をいいな」
アルフにも睨まれた。
「はあ~」
仕方がないか。大まかに説明するとしよう。
もっとも吸血鬼という事を説明する必要があるので、吸血行為の事も話さない。
話したのは魔力を込めた宝石を飲む方法とパスを繋ぐことで魔力供給ができるが、パスは繋げないという二点。
とわざわざ簡単にオブラートに包んで説明したのだが
「そのパスってなんで繋げないんだい?」
そんな事を一瞬で無駄にしてくれた。
この駄フェレットめ。
君はなぜ俺が説明しないで済むように簡単にしたというのにそんな質問をしてくれるのかな?
「それは……その……あれだ。互いに気を高めあうというか……」
ああ、なのはとフェイトの視線が痛い。
「士郎君」
「士郎」
「「もっと簡潔に」」
これ以上はごまかせないようだ。
「簡潔に言うと………性行為」
俺の言葉に一人を除き固まった。
そして次の瞬間、真っ赤になった。
無理もない。
「……そ、そんなの……にゃにゃ……で、でも」
混乱するなのはと固まるアルフと駄フェレット。
そんな状況で
「えっと……よくわからないけど、士郎のためならいいよ」
固まっていなかった一人であるフェイトがさらなる爆弾を投下してくれた。
「フェイト駄目だよ!」
「あ、アルフ?」
「いい? フェイトはもっと自分を大事にしないと」
「だけど士郎のためだし」
「いいの!
これは士郎の事よりもフェイトの方が大切なんだから」
「でも」
フェイトが俺を見つめるがアルフに賛成だ。
というかアルフに賛成しなかったら俺の身が危ないだろうが。
「あくまでこういう方法あるという説明だからする気はないから」
俺とアルフでフェイトの説得し、なのはが混乱から戻って来るまでしばらくかかった。
結局、このまま霊地からの魔力供給で治癒させることで話はまとまった。
外傷もとりあえずは塞がっているので地下室ではなく二階の自室で休むことになった。
そのあと、なのはとフェイトと三人で料理をしてお腹を満たした後にまた問題が起きた。
俺の事が心配というなのはとフェイトが泊まると言いだしたのだ。
さらに驚く事になのはの方はあっさりと桃子さんから許しが出た。
出来るならば出さないでほしかったが。
そして、フェイトも問題がない。
問題はなにかというと
「私がベットだよ」
「だめ、ここは私に譲って」
なのはとフェイトがベットを取り合っていた。
もっとも家に規模の割に俺しかいないのでベットはここに一つしかない。
布団はベットにあるのと予備が一枚。
そして、無論のことだが俺の部屋にあるベットはシングルだ。
ちなみにアルフも狼形態になってもらえば、ユーノと同じく床でも問題はないとのことなので床で我慢してもらう。
根本的にこの家の家具自体、元々置かれていた家具と忍さんが部屋にあいそうと持ち込んでくれた物である。
さらに普段の生活では自室以外では地下室、工房の小屋、リビング、キッチンぐらいしか使っていないので客間はあるが、家具なども置いていない完全に空き部屋になっている。
そのうち他の部屋にも家具をそろえる事も考えないといけないかもしれない。
誰かが泊まる当日に考えても遅いのだけど
さて話を戻そう。
俺のベットはシングル。
女の子を間違ってもリビングのソファーで眠らせるわけにはいかないので俺がリビングに行こうと思ったら
「同じ部屋じゃないとだめ」
「うん。意味がないよ」
フェイトとなのはから却下された。
なので俺が床で寝ようと提案したのだがこれも
「まだ調子が悪いんだからダメ」
「そうだよ」
再びなのはとフェイトに却下された。
ちなみに俺と一緒に寝るということ関してはユーノとアルフが黙っているはずがないのだが
「ユーノ君は黙ってて」
「アルフは黙ってて」
ふたりのお言葉でアルフとユーノは真っ白くなっている。
このままではお互いに譲らず朝になりかねない。
「ああもう、わかった! こうしよう!」
「ふぇ!」
「きゃ!」
右腕になのはを、左腕にフェイトを抱きしめ、ベットにダイブした。
シングルのベットに子供とはいえ三人では狭いし、密着した状態になるので避けたかったが仕方がない。
「少し狭いけどこれでいいだろう?」
「う、うん」
「えへへ」
「アルフ悪いけど電気消してくれ」
「うう、あいよ~」
ということで落ちつき(?)就寝となった。
両腕の二人は顔を赤くしながらうれしそうに腕に抱きついてた。
眠れないかなと思ったがまだ本調子ではないようだ。
すぐに睡魔が襲ってきた。
「おやすみ、士郎君」
「おやすみなさい、士郎」
「ああ、おやすみ」
二人のぬくもりを感じながら意識を手放す。
この世界で誰か抱かれ眠る。
一人ではないという安心感。
二人に支えられていることを実感しながら深く、深く、眠りにつく。
side out
士郎が寝息をたてはじめたとき、士郎の腕に抱きつている二人は
「眠ったね」
「うん。眠った」
とてもうれしそうに笑った。
怯えでも恐れでもなく、安心した表情。
この表情を自分たちがさせていると実感し喜んでいるのだ。
「おやすみ。フェイトちゃん」
「おやすみ。なのは」
二人も眠りにつく。
腕に大切な人のぬくもりを感じながら。
少しでも彼の支えになろうと覚悟を新たにしながら。