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万華鏡

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第十一話 流鏑馬その四


「今一つね」
「そうなの」
「もっといいのないの?ムードメーカーとかサブリーダーは売れたけれど」
「売れたの」
「そう、それでなくなったから」
 他のものはないかというのだ。
「ないかしら」
「そうはいってもね」
 急に言われても景子も思い浮かぶものがない。彩夏をお色気担当だと言ったのはそのものずばりだという感じだったのだ。だが。
 その他のはというのだ。景子は困った顔で首を捻る。
 それでこう彩夏に言ったのだった。
「やっぱりね」
「お色気しかないの?」
「胸大きいしお尻の形もいいし」
「お尻もなの」
「脚だって奇麗じゃない」
 今度は脚線美だった。
「もう男の子が放っておかないって感じの」
「だからなの」
「女の子から見ても彩夏ちゃん凄いから」
 それでだというのだ。
「それじゃあ駄目?」
「ううん、スタイルばかり言われるのはね」
「顔だって可愛いじゃない」
「そうかしら」
 彩夏も自覚していない感じだった。
「そんなこと言われたことないけれど」
「ないの?」
「ないわ」
 こう景子に返す。
「そうしたことは本当に一度も」
「皆気付かなかったのよ」 
 景子はその彩夏にこう返した。
「彩夏ちゃんのことにね」
「気付かなかったの」
「そうよ。彩夏ちゃん凄く可愛いわよ」
「だと嬉しいけれど」
「しかも胸もあるしウエストも締まっていてお尻の形もいいし」
 景子はにこにことして彩夏のそうしたところを話していく。
「脚だっていいし」
「何から何までって感じだけれど」
「実際にそうだから」
 これが景子の言葉だった。
「グラビアアイドルできるんじゃ」
「そんなの無理よ」
「できるわよ、その胸だとね」 
 景子は実際に彩夏の他のメンバーよりも大きな胸を見ている。そうしながら羊羹を食べつつこんなことも言った。
「何を食べたらそうなるの?」
「大きくなるかっていうの?」
「牛乳?」
 景子が最初に出したのはこれだった。
「牛乳好き?」
「うん、好きだけれど」
「じゃあやっぱり牛乳飲んだら胸大きくなるのね」
「それは背じゃないの?」
 彩夏は首を少し捻って景子に返した、
「牛乳飲んだら背が大きくなるっていうじゃない」
「それは私も知ってるけれど」
「胸もだっていうのね」
「そうじゃないの?」
「だったら私もっと背が高くなってるけれど」
 彩夏が見るのは美優だった。ちらりと彼女を見て話す。
「あと五センチは欲しいけれど」
「五センチって」
 里香は彩夏の今の言葉には少し引いてこう返した。
「高校一年の女の子で五センチ伸びるのはね」
「無理?」
「成長期の関係で」
 女の子の成長期は男の子より早く来て早く終わる。小学校五年辺りからはじまり高校生の頃には大体終わるのだ。 
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