万華鏡
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第十話 五月その十三
「馬に乗ったことも弓矢を手にしたこともないから」
「景子ちゃんもなのね」
「うん、どっちもないから」
「出来るのって本当に特別な人なのね」
「今神社で出来るのはその人だけなの」
「他の人は?」
「いないわ」
難しい顔で答えた景子だった。
「その娘さんにお兄さんがいるけれど」
「その人は乗馬とか弓道は」
「やっておられるのは剣道なのよ」
「そっちなの」
「そう、剣道も神事に関わることがあるけれどね」
だが乗馬でも弓道でもない。それではだった。
「それに他の人でも両方してる人がいるけれど」
「それでもなの」
「出来る人はその人だけなの」
技量的な問題でそうだというのだ。
「だからその人に何かあればね」
「流鏑馬が出来なくなるのね」
「うん、そうなの」
景子も難しい顔で話す。
「他にも誰かいてくれたらいいけれど」
「その辺り難しいわよね」
「八条神社でも困ってるのよ」
「一人しかいないと」
「そうなのよね」
景子は腕を組んで難しい顔になっていた。
「困ったことにね」
「誰かいてくれたら」
「弓道だけでも馬術だけでも駄目だから」
この二つが両立してこそだというのだ。
その話をしながら景子は琴乃を見てそして言った。
「あのね。琴乃ちゃん誰か知ってたらね」
「乗馬も弓道も出来る人ね」
「しかもどっちもかなり凄い人よ」
真剣な顔で凄まじい条件を提示する景子だった。
「尚且つ神道にも理解があってね」
「条件厳し過ぎない?」
「それを承知で言ってるから」
「ううん、いるのかしら」
「だから困ってるのよ」
いないからだというのだ。
「もう一人いてくれたら」
「有り難いのね」
「八条神社の方でも募集してるけれどね」
「アルバイト?」
「ううん、正規採用でもいいってことで」
条件としてはそこまでいっているというのだ。
「そうして募集してるから」
「いたらいいわね、誰か」
「どうしたら誰か見つかるかしら」
「その話ちょっと皆でしてみる?」
琴乃も腕を組み考える顔になっている。そのうえでこう景子に対して述べたのである。
「そうしてみる?」
「皆でね」
「うん、どうかしら」
「そうね。そうした方がいいわよね」
「私達だけでお話しても何か堂々巡りになりそうだし」
琴乃はここから言う。
「どうかって思ってね」
「それじゃあ」
「部活の時にお話してみよう」
「それと帰り道に」
「うん、してみよう」
琴乃はまた言った。
「五人集まればっていうし」
「文殊の知恵ね」
「本当は三人らしいけれど」
諺ではそうなる。
「皆で話したらいい知恵も出るから」
「それじゃあ」
「五人でお話してみようね」
「それがいいわね。五人だとね」
「一人だとかわからなくても」
まさにそれでもだった。
「五人だと答えが出るからね」
「うん、プラネッツの皆でね」
景子も微笑んで言う。
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