万華鏡
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第七話 お泊り会その十
「飲むのはね」
「日本酒よね」
「前にも言ったと思うけれどね」
「どうしてもそれになるのね」
「確かに日本酒って美味しいけれど」
だがそれでもだというのだ。
「飲み過ぎるとね」
「そう、糖尿病になるから」
この心配は日本酒には常に付きまとう。それは景子にしても同じだった。
「実はお父さんもね」
「糖尿病?」
「予備軍なの。結構危ないの」
実際にそうだというのだ。
「甘いものも好きだし」
「それは結構まずいわね」
「だから今からね。日本酒からね」
切り替えの話になる。酒の。
「焼酎か白ワインがいいかなって」
この話をしているとだった。急に。
彩夏がこんなことを言った。
「それにしても。最近阪神ねえ」
「急に話題変えたな」
「本当に」
「そうね。けれどね」
「弱いよね」6
「本当に」
このこともまた彼女達の悩みだった。
「本当にまだ横浜があるけれど」
「絶対の指定席占領者がいるけれどね」
「それでも。油断したら」
「暗黒時代に逆戻りだからね」
「スポーツの世界はそうだから」
他の三人も二人の言葉にうんうんと頷く。そして今度は彩夏がエクレアを食べながらこんなことを言った。
「ねえ。エクレアってね」
「エクレア!?」
「エクレアがどうしたの!?」
「うん、下は黄色いじゃない」
シュークリームと同じ生地の色だ。実際にそれを食べながら言うのである。
「それで上は黒だから」
「チョコレートのよね」
「それよね」
「それ市販のを溶かしたの」
作った琴乃の言葉だ。
「それでエクレアの生地。これは何とか自分で作ったけれど」
「えっ、これ琴乃ちゃんが作ったの」
「そうなの。中の生クリームはケーキに使ったのの残りで」
それを使ったというのだ。
「それで作ったけれど」
「凄いわね、それも」
「何度か作ったことがあるから」
見ればそのエクレアの形もぐちゃぐちゃとしている。かろうじて中身の生クリームが見えていないだけだった。
「それでね」
「できたのね」
「そうなの」
「ううん。私エクレアなんてね」
とてもだとだ。彩夏は感心した顔で言う。
「無理だから」
「コツがあるのよ」
「コツ?」
「道具とか使って作ってるの」
琴乃の場合はそうだというのだ。
「で、出来たけれど」
「そうなのね」
「あとサンドイッチはともかくとして」
ケーキやスコーンを見ての言葉だった。
「小麦から作るからね」
「あっ、作る順番ね」
「それを守れば楽にね」
作られるというのだ。ティーセットもまた。
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