インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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始まる祐人VS天災
「こんなまどろっこしい誘い方はないだろ」
俺は少女にそう声をかけた。
「……よくわかりましたね。極力他者にはバレないようにしましたが」
「俺は他者の気には敏感なんだよ。どこかの唐変木と違ってな。んで、お前何者だ?」
「それは付いてきたらわかりますよ」
そう言ってその少女は奥の方に走り出し、突き当たりにあるカードリーダーにカードを通すと、そこからドアが現れた。
(……予想が確証に変わったな)
そう思った時、少女がその中に入る。
「来ないのですか?」
「………」
俺は何も言わずにその場から歩きだした。
「………何も言わないのですね」
「まぁ、な」
そこからエレベーターに乗り、沈黙が続いた。というか、
「まさかと思うが、俺たちが向かっているのは地下、か?」
「はい。そこであなたに会いたがっている人がいますので」
「……そうか」
会いたがっている、ねぇ。どうせそのまま行くとバッドエンド・ルートまっしぐらだろうけど。
「あまり驚かないのですね」
「自慢ではないが、生身限定の個人スペックでは織斑先生程ではないにしろ、それなりにはあると思っているからな」
その言葉にその少女は驚きもしなかった。どうやらある程度のことはわかっているようだな。
「………着きましたよ」
どれくらい経ったのだろうか、気が付けば大きな施設に入っていたらしい。
俺たちはエレベーターを降りると、そこには工場のような施設があった。
「結構、機械が揃っているんだな」
「これにも驚かれないんですね。意外です」
「ここの管轄は日本という一国だからな。他国の技術を奪おうとしても別に驚きはしないさ。まぁ、最近襲撃が多いからって委員会は他国から警備を派遣しようと思っているらしいけどな」
シヴァがたまに委員会に赴いて聞いているらしいけど、聞かされた内容はどれもこれも下らないものばかりだった。
「そうですか。では―――束様、風宮祐人を地下区画にお連れしました」
トランシーバーに形が近い小型端末を鞄から出して少女は相手に俺を今いる場所に連れてきたことを知らせる。
『そっかそっか~。くーちゃんごくろーさん。それで、はじめましてだね、ゴキブリ君♪』
前方に篠ノ之束が投影される。………が、
(眠いなぁ………)
「……………」
『あれ? あまりにも予想外過ぎて驚いているかな? おーい、聞こえてるかい?』
「いえ、あまりにも予想通りすぎて欠伸が出そうになっただけです」
一応、織斑先生と同い年なので敬語を使っておく。
『ふ~ん。予想通りね~』
「それにしてもあなたも暇人ですよね。それとも、そんなに出るはずがない二人目が現れて焦りました? まぁ、アンタにとっては篠ノ之箒と紅椿を高みに導くために行った襲撃が俺の予想外の実力ですぐに倒れたことに焦り、嫌いなVTシステムを使ってまで俺を殺そうとするんですもんね。まぁ、俺はこうして生きてますけど」
そう言うと、画面の向こうにいる篠ノ之束は驚いていた。
『………君、何者?』
「あなたと織斑千冬を足して男にした感じですかね。まぁ、あなたよりも常識はありますけど」
『その言い方だと、まるで私が常識を持っていない言い方だね』
「まさか、自分が常識を持っていると思っているんですか? だったら織斑一夏同様に脳外科に行くことをオススメしますよ」
というか絶対に行くべきだろ。
『そういう君―――いや、全世界の人間が行くべきだろうね。まぁ、程度が低い医者の所に行っても無駄だろうけど』
「まだ普通の医者の方がいいんじゃないんですか? 使ってもらう人間の力量をちゃんと測らずにじゃじゃ馬を贈るような人間に俺は見てもらいたくないので」
『それ、遠回しに私のことを馬鹿にしてない?』
「遠回しにはしていませんよ。直接馬鹿にしています。というよりアンタは人間的には馬鹿だろ。それも一夏同様の」
今度は篠ノ之束は唖然とした。
「まぁ、向かう先は違いますがね。というよりアンタは餓鬼なんだな。男共に否定されて悔しくてミサイルを飛ばすとか頭大丈夫?」
『束さんの恩恵を使っている割には随分と偉そうな口を利くんだね。まぁいいや。どっちにしても君みたいな人間には死んでもらうから。ということでくーちゃん、後はよろしくね』
「わかりまし―――」
「ふ~ん。今回はテメェ直接には来ねえんだな。いや、VTシステムが禁止になる前からそうか」
くー公(少女の名前)の手が止まると同時に、篠ノ之束がこっちを向いた。
『ねぇ、本当に君、何者なの? まさかクローンとかふざけた存在とか?』
「クローンがふざけた存在で、それをすべて消す………か。馬鹿じゃないの? いや、馬鹿―――というより、お前、人を辞めたんだ」
『まぁ、あんなロクデナシと一緒にされたくはないけど、君こそ何様のつもりなの? 束さんの恩恵を使っている分際で―――』
「プッ。大事な人間を見捨てる人間が何偉そうにしちゃってんの? ゴミ」
『もういい。くーちゃん、遠慮なく潰しちゃって!』
「わかりました、束様」
くー公の方から異様な熱を感知して―――俺を襲った。
『アッハハハハハハハ!! この天才束さんの邪魔をするとこうなるんだよ、ゴキブリ君♪』
スピーカーの方から声がする。というかまだいたのか。
「いえ、まだ生きてます」
『まっさかー(笑) そんなわけないじゃん。ISを展開せずに生身で食らったんだよ? それで生きているのは人間じゃないよ~(笑) まぁ、どうせ死んでいるけど(笑)』
「―――まぁ、普通はそうだろうな」
確かに俺は熱線を食らった。だがなぁ、これでエネルギーパック10パック分は作れた。
ちなみにだが、あの騒動の中で俺は自分の戦闘服に着替えた。
「だがなぁ、俺は生憎とお前の考えている一般人とは違うんだよ、天災。インドアonlyのお前とはな」
ISは展開しない。というより、ディアンルグをISとして扱うこと自体が不毛だ。まぁ、ISと同じ設計にしたんだが。だって―――そうでもしないと世界がうるさいだろうし。
『何それ。どうせ今のはマグレでしょ?』
「プッ。かわいそうな馬鹿だよ、お前は。人の愛を拒絶し、孤独に浸ることでしか自分のしたいことを見出せない餓鬼なんだから」
『ハッ? 束さんの恩恵に浸っている風情でよくそんなことを言えるね。なんだったらお前のIS、止めてやるよ』
「くだらない虚勢は張らない方がいいぜ。ディアンルグを止めることなんて、お前には出来ない。例え俺とディアンルグがお前が愛して止まない実験動物を殺しても、所詮お前はただ傍観するしかできないんだよ、無力な天災さん」
『クソがっ!!』
途端に辺りからウジャウジャと機械人形達が出てきた。
「来いよ、天災。俺を殺すっていうテメェの計画、潰してやるよ」
いや、できやしない。天災は天災故の行いしかできない。何せテメェは―――俺の手中にしかいないんだから。
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