八条学園怪異譚
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第四話 ターニングポイントその一
第四話 ターニングポイント
愛実は聖花と共にいた。だが。
その心は次第に曇っていった。それは聖花を見ているからだ。
テストをすればだ。中間テストでは。
「うわ、トップじゃない」
「林田さんダントツよ」
学校の壁に張り出された成績の上位結果者のトップにだ。聖花の名前があった。その総合得点も載せられているがそれもだった。
「殆ど満点で」
「何か凄いわね」
「入試でもトップだったっていうけれどね」
「今も健在ね」
「ううん、何ていうかね」
クラスメイト達に言われてだ。聖花は困った笑みと共に答えた。
「まあ。勉強はしたけれど」
「それでも?」
「それでもなの」
「あまり褒められてもね」
そういうことは苦手だというのだ。その困った笑みと共の言葉だった。
だがそれでもだ。クラスメイト達は聖花にまだ言った。
「トップって凄いわよ」
「そうそうできるものじゃないから」
「期末試験も凄くなるんじゃない?」
「先生も楽しみにしてるわよ」
クラスメイト達は羨望と共に聖花を見ていた。そしてだった。
体育の授業でもだ。聖花はバレーボールのレシーブを見事に決める。半ズボンの体操服姿の彼女が華麗に動く。
それを見てだ。今度は体育館の隣でバスケットボールをしていた男子生徒達が言っていた。
「おい、林田ってスポーツもいいのかよ」
「えらい跳んだな」
「背も高いしスタイルもいいしな」
「勉強もできてスポーツもできる」
「ちょっとないよな」
「有り得ないよな」
こう言うのだった。彼等もだ。
聖花を羨望の目で見る。そして言ったのだった。
「やっぱり凄いよな」
「顔も奇麗でな」
「まさに才色兼備」
「凄い娘だよ」
こう言ってだ。彼等も聖花をそうした目で見るのだった。だがだった。
その彼女を見て愛実はじくじくたる思いになっていた。常に聖花の傍にいる。しかし彼女にはだったのだ。
誰も声をかけず誰も気付かない。そうしてだった。
皆聖花ばかり見る。その横にいるだけだった。
部活でもだ。先輩達も同級生もだった。
聖花ばかり見てだ。笑顔で言っていた。
「いや、凄い娘が入ったわね」
「そうね。本当にね」
「頭もよくて顔も奇麗で」
「しかもかるたも強い」
「部の看板になりそうね」
「将来は。そうね」
部長も言う。すらりとしたスタイルに知的な顔の美人だ。
その彼女がだ。笑顔で言うのだった。
「部長ね」
「そうね。三年になったらね」
「絶対になれるわね」
部長と同じ三年の先輩達も笑顔で応える。
「結構抜けたところもあるみたいだけれどね」
「それはご愛嬌ってことでね」
「あの娘なら部長できるわね」
「かるたも強いしね」
「問題ないわ」
部活でもだった。聖花ばかりが注目されていた。
家に帰ってもだ。両親は食事中も笑顔で聖花の話をするのだった。
「おい聖花ちゃんのこと聞いたか」
「ええ、聞いたわ」
笑顔でだ。母が父の言葉に応える。朝食の時に二人で御飯に納豆をかけながらそのうえで笑顔で話をしていた。
「中間テストトップだったのよね」
「体育も凄くてな」
「しかもあれよね。部活でも凄くて」
「奇麗になったしな、あれじゃあ女優でもいけるぞ」
「そうね。将来が楽しみね」
こう愛実の目の前で話すのだった。
愛実はその話を俯いて聞いていた。だが、だった。
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