八条学園怪異譚
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第二話 嫉妬その五
その彼女がだ。笑顔で愛実に声をかけてきたのだ。
「今からよね」
「そうね。いよいよね」
「高校生活はじまるわね」
「私。何か」
「何かって?」
「高校でやっていけるかどうか」
それがだ。どうかというのだ。
「不安だけれど」
「心配なの?」
「うん、ちょっと」
そうだというのだ。愛実は少し俯いて聖花に言う。
「だって私ぱっとしないから」
「そんなことないわよ」
「いつもそう言ってくれるけれど」
「だって。愛実ちゃんお料理上手だし」
とにかくだ。ここからいつも言う聖花だった。愛実に関しては。
「お裁縫とか。お洗濯とか失敗したことないじゃない」
「だからそんなのは」
「最近そういうこと全部出来る娘いないわよ」
何時の時代でも言われていることだがだ。聖花は実際にそう思っていたので愛実にもこう言ったのである。
「本当にね」
「だからっていうのね」
「それに愛実ちゃんかるただって上手だし」
部活のこともだ。聖花は言う。
「全国大会にだって出たじゃない」
「聖花ちゃんもじゃない、それは」
「私よりずっと成績いいじゃない」
「それはただ」
「かるたも上手だし」
口篭る愛実にだ。聖花はさらに言う。
「高校だってかるた部に入るわよね」
「この学校かるた部は」
「あるわよ」
聖花は愛実に明るい笑顔で話す。
「色々な部活がある学校だけれど」
「そうなの。かるた部もあるの」
「じゃあ入るわよね、かるた部」
「ええ、部活っていったら」
愛実は自分ができることは限られていると思っている人間だ。それでだ。
聖花、一緒に学校に入る彼女にこう答えたのである。
「私、それしかないから」
「そうよね。それじゃあね」
「聖花ちゃんもよね」
「勿論。私もかるた部よ」
聖花は屈託のない明るい笑顔で答えた。
「そこに入るわ」
「そうよね。やっぱり」
「うん。そうするから」
「私は何か」
「何かって?」
「かるたも最近」
どうかとだ。愛実はここでも俯きだしてそのうえで言ったのである、
「私、調子が悪いから」
「えっ、そうなの」
「うん。だから」
「自信ないの?」
「かるた部に入部しても」
それでもだとだ。愛実は言っていく。
「やっていけるかどうか」
「だから。大丈夫よ」
「全国大会にも行けたから?」
「うん。愛実ちゃん本当に凄いから」
だからだとだ。また言う聖花だった。
「かるた部でも何でもね」
「けれど私聖花ちゃんじゃないから」
その聖花に顔を向けての言葉である。
「何でもできる訳じゃないから」
「私?」
「そう。聖花ちゃんお勉強だってでlきるし」
愛実は聞いていた。聖花は入試でトップ合格だったのだ。それに対して愛実はここでも中の上の結果だった。
「それに奇麗で背も高いし」
「背って」
「それに運動だってできるし。私成績もぱっとしないし」
劣等感、その感情を今無意識のうちに出す愛実だった。
「それに背も低いし奇麗じゃないし
劣等感を次々に出す、自分から。
「それに運動だってできないし」
「あの、ちょっと」
「そんな私がやっていける筈ないじゃない。そのできることって」
何かもだ。愛実は繭を曇らせて話した。
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