八条学園怪異譚
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第十五話 足元にはその五
「部活が終わって少し学校で時間潰して」
「それで暗くなってから行けばいいね」
「そうね。そうしよう」
こうして二人で一緒にその暗くなった時に見ようということになった。そのことを決めてその日にだった。
部活が終わって暫く二人で時間を潰すことも兼ねてクラスで勉強をした。そして窓の外が完全に暗くなってからだった。
二人で教室を出た、そしてだった。
二人で校庭に出た、だがそこで彼に会った。
「何をしている」
「あっ、日下部さん」
二人同時に声をあげた。見れば日下部が校庭を歩いていた。
「どうしたんですか、商業科に来られて」
「水産科におられるんじゃ」
「散歩をしているところだ」
それでここにいるというのだ。
「それでいるがな」
「そうだったんですか。それでなんですか」
「ここにおられるんですか」
「そうだ。それでだが」
日下部の方から二人に言う。
「君達は何か探している様だな」
「はい、この時間下校していると足元に何かまとわりついてくるって聞いて」
「それでそれが何か探してます」
「すねこすりだな」
日下部はすぐに言った。
「彼等か」
「すねこすりですか」
「それがその妖怪の名前ですか」
「そうだ」
二人に対して教えることになった。
「こうした暗くなった時間に足元に出て来てまとわりつく。そうした妖怪だ」
「それだけですか?」
「足元にまとわりつくだけですか」
「そうだ、それだけだ」
日下部の説明は簡潔でかつ淡々としていた。愛実も聖花もそのあっさりとした説明にいささか拍子抜けしてこう言った。
「何ていうかあっさりわかりましたけど」
「それだけの妖怪って」
「確かに日本の妖怪ってそうした妖怪多いですけれど」
「いるだけとか悪戯するだけとか」
「そうした妖怪が」
「すねこすりもまた然りだ」
そうした手の妖怪達と同じだというのだ。
「ただまとわり付くだけだ。毛のある身体で擦り寄ってくるだけだ」
「猫みたいな感じですか?」
愛実は首を左に捻って日下部に返した。
「ひょっとして」
「猫か」
「いえ、うちのお家食堂なんですけれど」
「それはもう知っているが」
「うちのチロ。あっ、柴犬なんですけれど」
可愛がっている家の犬の話もする。愛実にとってチロは掛け替えのない家族であり自慢の種の一つなのだ。
「大人しくて優しい性格でして」
「それでか」
「はい、猫ちゃん達が来ても吠えたりしないんで」
それでだというのだ。
「お家の周りに猫ちゃん達来るんですよ」
「野良猫か」
「皆商店街の人達が飼っている猫ちゃん達です」
つまり飼い猫だというのだ。
「お魚の残りとか余りとかいつもやってますけれど」
「他には鶏肉だな」
「勿論猫まんまもあげますよ」
白い御飯の上に鰹節をかけてそして醤油もかける。そこに味噌をかける場合もあり簡単だが人間が食べても美味しい。それもやるというのだ。
「定番ですけれど」
「昭和の様な話だな」
「お魚くわえたドラ猫はいないですけれどね」
流石にそこまで昭和ではなかった。
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