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八条学園怪異譚

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第十四話 茶道部の部室でその七


「それ位の付き合いじゃな」
「うむ。博士がまだ髭も生えていない頃じゃからな」
「思えば長いのう」
「明治の頃からじゃからな」
「ねえ、博士って」
「そうよね」
 愛実も聖花も博士とぬらりひょんのやり取りから怖い考えになった。それで困惑と怪訝が入り混じった感じの顔になってこう話をした。
「江戸時代生まれとか」
「そんなのじゃないかしら」
「本当に仙人なのかな」
「その可能性あるわよね」
「ほっほっほ、まあそうしたことはいいとしてじゃ」
 ここで否定せずに笑って誤魔化し話を変えるところがさらに怪しかった。
 だが博士はここでは強引にこう言うのだった。
「茶道部の話もこれでわかったのう」
「はい、この人だったんですね」
「ぬらりひょんさんだったんですね」
「そうじゃ。気付いても誰も不思議に思わんがのう」
「わしはそうした妖怪じゃ」
 ぬらりひょんも飄々とした笑いで言ってくる。
「まあ大したことではないのう」
「学校の中で普通に妖怪が歩いてること自体が不思議だけれど」
「有り得ないことだけれど」
「いや、普通じゃろ」
 ぬらりひょんはこう言うのだった。
「それ位は」
「だから全然普通じゃないから」
「しかも誰も気付かないのって」
「皆気付いておらんだけじゃよ」
 ここでこう言うぬらりひょんだった。
「妖怪も幽霊もいつも人間と一緒におるぞ」
「例えばじゃ」
 博士がまた二人に話す。
「トイレじゃがな」
「おトイレっていうとあれですか?」
「花子さんですか?」
「それもおるがな」
 有名な都市伝説の妖怪だった。だがそれだけではなかった。
「頑張り入道とかもおるぞ」
「頑張り入道?」
「うむ、トイレにおっていつも見守っているというかそうした妖怪でな」
「覗きですか?」
 愛実は今日一番の怪訝な顔で博士に尋ねた。
「それってまさか」
「いや、覗きではない」
「覗きに思えるんですが」
「しかし覗きではない」
 博士はこのことはしっかりと言う。
「トイレを守護する神様か何かがルーツかも知れんがのう」
「呼んだ?」
 ここで大柄な僧侶が出て来た。初老の男の姿であり妙に臭い感じがするのは気のせいであろうか、その僧侶が出て来たのだ。
「わしのことを」
「これが頑張り入道じゃ」
 博士は出て来たその妖怪を見ながら二人に話す。
「学校のトイレにもおるぞ」
「本当に妖怪ってあちこちにいるのね」
「そうなのね」
 二人はこのことをまた認識することになった。
「というか私達がトイレするのっていつも誰かに見られてるのね」
「それって凄く嫌だけれど」
 今度は眉を顰めさせて言うのだった。
「盗撮されてるみたいで」
「勘弁して欲しいわよね」
「いや、トイレをしているその現場は見ないぞ」
 頑張り入道の方からっこのことは保障する。
「間違ってもな」
「本当に?」
「見てないの?」
「じゃああんた達は絶世の美少年がトイレをするところを見たいのかい?」
 頑張り入道は実にダイレクトに問うた。
「リバー=フェニックスの様な美少年が」
「また古い人出すわね」
「リバー=フェニックスって」
 二人は頑張り入道が出してきた名前にまず突っ込みを入れた。
「確かに凄い美形だったけれど、写真観たら」
「それでも私達ダイレクトには知らないから」
「お薬で死んだって聞いたけれど」
「それ本当みたいよ」
 二人でリバー=フェニックスの話をする。二人にとっては過去の人物であり直接知っている訳ではない。 
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