八条学園怪異譚
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第十四話 茶道部の部室でその四
「それで終わりなのか」
「終わり?」
「終わりっていいますと」
「泉はそのままにするのか何かするのか」
博士は二人にさらに問う。
「それはどうするのじゃ?」
「ええと、それは」
「そういえば」
二人は博士に言われてさらにきょとんとした顔になった。そのうえで目をしばたかせながら博士に対して言った。
「考えてなかったです」
「何も」
「封印するのか?」
博士は二人をさらに見て言う。
「泉を」
「泉を封印したら妖怪さん達も幽霊さん達も学園に出入りできなくなりますよね」
聖花が博士にこう尋ねた。
「そうですよね」
「そうなるのう」
「じゃあ今ここにいる妖怪さん達はずっとこの学園にいるままですか」
「それでもいいよ」
すぐにその妖怪達が言ってきた。
「僕達もうずっとここに暮らしてるからね」
「そうそう、ここが家で遊び場だからね」
「ここにずっといられるならそれでいいよ」
「外に出ようと思えば出られるし」
「それで遊べるから」
だからいいというのだ。
「泉が封印されても何でもないし」
「そこからおかしなのが出入りする訳でもないから」
これもなかった。何しろ内外の結界でそうした妖怪は学園の中に入っては来られないからだ、だからいいというのだ。
「別にね」
「どうでもいいよ」
「けれど泉がないとニューフェイスの人が来れないわよね」
愛実がこのことを言った。
「そうなるわよね」
「ああ、そうだね」
「そういえばね」
妖怪達は愛実の今の言葉でこのことに気付いた。
「それも寂しいよね」
「何かね」
「私達特に妖怪さん達に悪意とかないから」
「むしろ好きよ」
愛実だけでなく聖花も言う。
「泉を見つけても封印するとかはね」
「考えられないわ」
「では見つけるだけじゃな」
「はい、多分そうなります」
「探究心だけだと思います」
愛実も聖花も少し考える肝心顔で博士に答える。二人は泉を見つけたいと思っていたがそこまでしか考えていなかったのだ。
それでこうも言うのだった。
「泉は見つけます」
「けれどそれだけです」
「というか封印するとかいうスキル私達にはないですから」
「そもそも出来ないです」
「わかった、そういうことじゃな」
博士は二人の言葉を聞いて納得した顔で頷いた、そしてそのうえでこう二人に対して言った。
「では見つけることじゃな」
「はい、そうさせてもらいます」
「それだけで」
「探究心は大事じゃ」
博士はまた言った。
「何かを見つけ知ろうという心はな」
「それが学問の第一歩だからですね」
聖花は博士の今の言葉をこう認識して答えた。
「だからですね」
「そうじゃ。何かを知りたい」
博士も確かな声で聖花に答え返す。
「そう思う気持ちがあってはじめて学問が成り立つのじゃ」
「お勉強もですよね」
今度言ったのは愛実だった。
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